グラスコックピット グラスコックピットの概要

グラスコックピット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/28 20:11 UTC 版)

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ボーイング787のグラスコックピット

航空機でのグラスコックピット化

特徴

従来の機械式計器では、一つの情報を表すのに最低一つの表示面を必要とした。表示は、アナログ時計のように回転する指針と、ボビン型の回転盤に記された数字で表す古典的な機械式デジタル表示である。そのため操縦席は多数のアナログ計器が並び、乗員の負担に繋がっていた。また多発機では操縦席正面だけでは表示しきれず、エンジン関連計器は後方に航空機関士席が設けられ、そこに表示されていた。

グラスコックピット化することでモニターに情報を集約できるようになり、従来は別々の計器に分かれていた速度計高度計を統合することも可能となった。主たるモニターには、正面に水平儀やその左右両脇に数字によるデジタル表示と上下に目盛りが動くアナログ表示を兼用した速度計と高度計、昇降計などが映し出される。また、別のモニターにはエンジン回転数、燃料流量、航法、エラー表示、電気系統、油圧系統、燃料系統、客室気圧など、任意の情報を選択し映し出すことができるために計器数が大幅に減り、それまで必要としていた航空機関士など各機器の操作担当乗員の削減や読み取り作業の負担軽減、初期費用の削減や整備性の向上などに繋がっている。またヘッドアップディスプレイを追加することで視線を大きく動かさず、速度や高度など重要な情報を確認することが出来るようになる。

現代では飛行モードに合わせた画面レイアウトの変更、タッチパネルの採用による操作性の向上、電子チェックリスト航空図空港情報などフライトバッグに入れて持ち込んでいた書類の表示(エレクトロニック・フライトバッグ)、航空図やレーダーへ気象情報をオーバーレイするなど多彩な機能が実現されている。また自動操縦装置フライ・バイ・ワイヤなどの操縦システム、エンジン計器・乗員警告システム(EICAS)や電子式集中化航空機モニター(ECAM)などの監視システムの情報を表示する装置となった機種も出てきている。

従来は信頼性の不安感から補助計器(主として姿勢儀、速度計および高度計)は機械式と決まっていたが、現在では信頼性が向上したことにより、補助計器も液晶化されることが一般的になっている。このため大型旅客機だけではなく軽飛行機飛行船回転翼機軍用機など航空機全般で採用される方向にある。

グラスコックピット化は表示装置の変更であるため、ウィングレットと同じく基本設計を変更することなく導入できる。このため新造機への採用だけでなくアナログ計器を採用していた機種のアップデート版でグラスコックピット化が行われることもある。例としてボーイング737は当初アナログ計器を採用していたが、近代改修型の737NGでグラスコックピットに変更された。また表示レイアウトを変更できる特徴を活かし、画面上に従来型と同じアナログ計器を同じ並びで表示するモードを採用することで新規の資格取得が不要となり、パイロット育成のコストを抑えることができることがセールスポイントとなっている。

アビオニクスの製造大手のガーミンでは新造機向けのOEMの他、既存の計器類と交換するアップグレード用として、単座の軽飛行機でも搭載できる1画面の軽量モデル(Garmin G1000)や、複座向けに大型旅客機と遜色ない機能を備えた本格的なシステムを単品で販売しており、オーナーは整備工場に持ち込むだけでグラスコックピット化することができる。

航空法で定められた認定を受けた電子部品と複雑なソフトウェアは機械式の計器に比べ高価であるため、補助計器の液晶化に留める例もある。

歴史

民間の旅客機では、1982年に就航したボーイング767型機が最初に採用した。この技術は、スペースシャトルオービタでも使用されている。

明確な定義は無いが、現在最も先進的なグラスコックピットを採用している航空機は、ロッキード・マーティンなどが開発したF-35戦闘機が有名である。同機は、1つの大型な液晶パネル内で様々な情報が表示される仕組みになっている。またタッチパネルを採用したことで物理的なボタンを減らしつつ操作性を向上させている。

電子飛行計器システム

電子飛行計器システムElectronic Flight Instrument SystemEFIS)は、従来の電気機械的な計器の代わりに電子的な表示技術による計器表示システムである。EFISはプライマリー・フライト・ディスプレイ(PFD)、マルチ・ファンクション・ディスプレイ(MFD)、エンジン計器・乗員警告システム(EICAS)のディスプレイから構成される。以前はブラウン管(CRT)が使用されていたが、現在では液晶ディスプレイ(LCD)が一般的である。

複雑な電気機械式姿勢表示計(ADI)や水平儀(HSI)は最初にEFISへ置き換えられる候補になった。しかし、現在でもいくつかの電子表示ではない計器が操縦席にある。

軽飛行機用のEFISは表示装置、制御、データ処理機などがユニット化されており、1つの表示装置で飛行状態や航法データを表示する事が可能である。ワイドボディ機の場合複数の大型ディスプレイの表示レイアウトを変更することも出来る[1]

鉄道車両でのグラスコックピット化

画像提供依頼
  1. 200系の運転席の写真(鉄道博物館に設置されている運転シミュレーターでも可)と
  2. その運転士支援モニタ(同じく、鉄道博物館の運転シミュレーターでも可)の拡大写真
の画像提供をお願いします。2016年1月
ドイツ鉄道 ICE Tの運転台
JR東日本E233系電車京浜東北根岸線用1000番台)のディスプレイ拡大写真
JR西日本227系電車に採用されたタッチパネル式LCD

鉄道車両でも類似するものがあり、日本においては、1982年に登場した日本国有鉄道東北上越新幹線用の200系車両において、初めて運転士支援システム(プラズマディスプレイ)が採用された。
当時の新幹線車両である0系は運転席に2人が乗務していたが、当時の国鉄財政は赤字であった[3] ため、新たに開業する東北上越新幹線用の200系は運転席には1人だけが乗務することになった。だが車両故障の際に確認に行く人員が車両側から出せなくなるため、運転席上から故障を確認する手段として運転士支援システムが導入された。グラスコクピットとは程遠い代物であったが、日本の鉄道車両におけるグラスコクピットの導入はこのシステムの延長線上に位置づけられている。そして、1985年に登場した新幹線100系でCRT式のモニタ装置ディスプレイがカラー化され[4]、その後もモニタ装置の普及に伴い、1990年代以降は表示デバイスをLCDに置き換えながら在来線車両にも広く普及した。ただし、速度計や空気圧力計などの主要計器については、7セグメントディスプレイやアナログ指針による表示方式を存置している車両が現在においても大半である。

一方、東日本旅客鉄道(JR東日本)では、1995年に登場したE2系E3系以降の新幹線車両は速度計もLCDによる表示に置き換わったほか、在来線車両でも2000年代後半から導入されたE231系(近郊タイプ後期導入車)・E531系などでは、空気圧力計などの他計器もほぼ全てがLCDによる表示に統合された。これらのグラスコクピットは、TIMS(Train Information Management System)により構成されている。

JRグループ他社では、東海旅客鉄道(JR東海)・西日本旅客鉄道(JR西日本)・九州旅客鉄道(JR九州)の新幹線車両(300系500系700系800系N700系)において、JR東日本の新幹線車両と同様のグラスコックピットが導入されている[5]。700系新幹線の派生型車両である台湾高速鉄道700T型でも採用された。JR西日本では、在来線車両でも2015年に登場した227系にグラスコックピットが導入されている。

私鉄では、小田急電鉄50000形「VSE」が初めてグラスコックピットを採用した。他社でも、西武鉄道相模鉄道東京地下鉄(東京メトロ)などで採用例が増加しつつある。

主なグラスコックピット搭載車両(日本国内)

※現役の新幹線車両は全車両グラスコクピット搭載車。

  1. ^ B737 技術情報
  2. ^ 戦闘機F35 “操縦席”公開 : 動画 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) - 読売新聞
  3. ^ 日本国有鉄道の「4.歴史」の章の「第1次5カ年計画-第2次5カ年計画」の節を参照(2016年1月28日(木)06:38版)
  4. ^ 先だって1982年に登場した200系には、7セグメントディスプレイ方式の速度計と、8行×33文字のカナ英数を表示可能な単色プラズマディスプレイ(PDP)式のモニタ装置ディスプレイが装備された
  5. ^ ただし、300系・500系・700系(初期車)や923形については、当初は7セグメントディスプレイ方式の速度計とモニタ装置用のカラーディスプレイ2面だったものを、東海道新幹線デジタルATC化に伴い、速度計を含む3面LCDによるグラスコックピットに改造したものである
  6. ^ JR九州821系・YC1系「やさしくて力持ち」新型車両を公開! 写真149枚 - マイナビニュース、2018年10月5日、2018年10月29日閲覧
  7. ^ クラウンマジェスタと、LSの一部はメーカーオプション装備


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