クーロンズゲート 開発

クーロンズゲート

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/08 05:59 UTC 版)

開発

シリコングラフィックスのCGワークステーションを用いたPlayStation用ゲームの開発計画がたてられ、次世代機らしい音楽とポリゴンとムービーを主軸に据えることが決まった[22]。 当初は『ブレードランナー』のような世界観を冒険するという構想がたてられていたが、木村央志は仲間たちとともに訪れた香港九龍城砦およびその跡地に衝撃を受け、世界観を変更した[22]。 開発スタッフの一人である井上幸喜は、『マンホール』のようなアドベンチャーゲームをやりたいと考えていた一方、PC版『MYST』で最適化された操作性をPlayStationで表現したらどうなるのかとも考えており、操作性が大きく変わるダンジョンやイベントの間にムービーを挟んで違和感を取り除くという試みを行った[22]。 また、当初はサイバーパンクな世界観ということで大友克洋にキャラクターデザインを依頼しようとしたが、自分で下絵を描いたところプロデューサーの須藤朗がそれを気に入り、自身がキャラクターデザインを務めることとなった[22]

声優の野中希は小黒より小柄な印象を持っていた。彼女のルックスにあわせて小黒のグラフィック変更もあったと言われている[23]

井上はテレビドラマ『NIGHT HEAD』を見て、曲の雰囲気が本作にふさわしいと感じ、当時フジテレビでCGを作っていた経験を活かし、『世にも奇妙な物語』のスタッフを通じ、『NIGHT HEAD』の楽曲を担当していた蓜島邦明を本作の音楽担当者として起用した[22]

当初はPlayStationのローンチタイトルとして発売される予定であり、PlayStation発売前からプロモーションムービー等が公開されていたが、開発の遅れによる度重なる発売延期により1997年2月28日にまでずれ込んだ[18]

本作の開発は何かに引っ張られるように各スタッフが競争して生み出された相乗効果を積み重ねるようにすすめられたものであり、井上は「開発当時誰かに指示された記憶がなく、開発後半にいたっては『クーロンズ・ゲートさん』という架空の人物(概念)に指示された」とシシララTVとのインタビューの中で振り返っている[22]

世界観構築・キャラクター設定

キャラクター群のうち、鍵穴男といった「〇〇男」という名称のキャラクター群の多くは木村の考案が考案した[22]。 デザインを担当した井上は「木村さんの中でビジュアルイメージがあるものは、キャラクター設定に挿絵があったので問題なくイメージをつかめた。一方、キーワードだけ指定されたものはそこからイメージを膨らませる必要があり、『面倒なデザインのCGを作らない』という自分の中のルールに従い、キーワードからシンプルなデザインを導き出した」とシシララTVとのインタビューの中で振り返っている[22]。 また、井上は陰界の住人について「彼らは元々その場所に住んでいただけであり、プレイヤーとは敵対関係にない」と考えていたことから、デザイン上のルールの一つとして、「住民には牙などの武器を持たせない」ということを定めたほか、住民が武器を持って主人公を襲う場面を描かないことにした[22]

当初の構想では戦闘システムは存在しなかったが、木村が五行思想の属性の相克関係を使いたいと考えていたことと、アイテムを得る喜びをプレイヤーに味わってほしいという思いから、戦闘システムが導入される運びとなった[22]

販売

本作には「初回限定版」として、紙製の特製ボックスに108ページのハードカバーブックレットが付属したものが存在する。ブックレットの内容は主にゲームの世界観、メイキングについて紹介したファンブック的なものであるが、一部にストーリー上のネタバレも含まれていた。なお、「通常版」との違いはこの「箱」及び「ブックレット」の有無と、背オビデザインのみ。

発売権の移行

2000年に本作の発売権が開発元のSMEからアートディンクへ移行し、同年アートディンクの自社製廉価版である「ARTDINK BEST CHOICE」シリーズ中の一作として、新価格で再発売された(詳細はテンプレートを参照のこと)。パッケージデザイン等の細かい部分以外に大きな変更はない。 ゲームアーカイブスではアートディンク版が配信されたのち、2015年からはシティコネクションより再配信となった[注 8]

クーロンズゲートVR suzaku

2016年11月、『クーロンズゲートVR suzaku』のクラウドファンディングが開始され、すぐに支援金が目標額に達した。本編の前日談にあたり、プレイヤーが生体通信を介して陰界にシンクしているという設定で龍城路と九龍フロントを散策する。本作の登場人物に加え、新キャラクターも登場する[24]。 当初はPlayStation VR専用タイトルだったが、2017年12月21日のアップデートにより、VRモードから独立したnonVRモードが追加された[24]

クーロンズリゾーム

本作の28年後を描く次世代版続編。監督・脚本の木村央志によって『クーロンズゲート』の企画決定から25年目となる2020年に制作プロジェクトが立ち上げられた。制作自体は2019年12月に発表されたが、「シナリオが完成してから事業化する」という方針により、シナリオ第一稿が完成した2020年7月に正式にプロジェクトが発表。こちらも資金の一部をクラウドファンディングで募集し、仮に目標額に達しなくとも計画は実行すると発表されていたが、実際はストレッチゴールにもすぐに達した[25]。ストーリーは『Kowloon's Gate Archives~クーロンズ・ゲート アーカイブス~』に掲載された続編企画「クーロンズ・ゲートif」を底本として大幅に加筆・アレンジしたもので、本作に登場しなかった九龍城の一街区「光明路」を舞台とする[13]。開発はUnityベースでアセットをメインに新たな九龍城を構築する。

音楽は『ゲート』に続き、蓜島邦明が担当。原画も同じく井上幸喜が、キャラクターイラストには新たにおぐちが起用されるとされていた[25]が、最終的にキャラクターデザインは木村が手掛けた『デモンズゲート 帝都審神大戦』同様に山本章史が担当した[26]

当初はジャンル「路地裏オープンワールド」として全編リアルタイムダンジョンで構成された光明路を自由に探索できる予定だったが、完成した評価版「3Dクーロン」が期待したような面白さにならず[27]、『クーロンズゲート』の続編としての伏線の回収、設定の強化や更新を重視してゲームシステムの見直しを行い、移動をムービー、会話を静止画で行う「ムービーノベル方式」に変更された[28]。また、2021年秋にNintendo SwitchPlayStation 4、PC(Steam)での発売予定だった[25]が実現には至らず、結局、アセットがコンシューマー機に非対応だったという「アセット利用による効率化」が裏目に出た点[27]や開発規模の問題からコンシューマー機移植は断念され、2022年度内にSteamとBOOTHにて早期アクセス版の配信を目指す方向とされた[28]。その後、全8巻の分冊方式での販売が決定し、2023年2月22日に第1巻にクラウドファンディング支援者クレジットなどを加えたパイロット版がBOOTHでのみ発売された[26]


注釈

  1. ^ 他にも「ガイドブックに載せられない香港が、ある。」「入口はどこにでもある。」などが広告に使われていた。
  2. ^ 香港ではホテルを「酒店」と表記するが、文化の混合が起きている陰界の九龍では「飯店」となっている。
  3. ^ 中国では「黒」「難」「毒」「老」「死」は縁起の悪い名字とされ、父が彼女に安易に人を近づけないようにしたのではないかと推測される。
  4. ^ 現実でも古代には水銀に永遠の命や美容などで効果があると盲信されていた時代がある。
  5. ^ ゲーム中のムービーでは軟体状の生物だが、設定画では小さな人形が描かれている。
  6. ^ 移動の際STARTボタンを押下しながら進行方向を決定すると、移動ムービーをスキップできる。
  7. ^ 水は火を消し、火は金を溶かし、金は斧となって木を切り倒し、木は土の養分を吸い上げ、土は水を堰き止める。
  8. ^ シティコネクションからは同日にキリーク・ザ・ブラッド等の木村央志作品が配信されている。

出典

  1. ^ 「クーロンズゲートVR suzaku」が本日配信を開始。PlayStationの奇作「クーロンズ・ゲート」の世界観をVRで再現”. 4gamer.net (2017年10月26日). 2023年10月10日閲覧。
  2. ^ 【Oculus Go】「クーロンズゲートVR」の世界を体験できるGo向けアプリが配信” (2018年10月2日). 2018年10月6日閲覧。
  3. ^ 『クーロンズゲート』の次世代版続編『クーロンズリゾーム』始動”. 電撃オンライン (2019年11月12日). 2019年12月21日閲覧。
  4. ^ 『Kowloon's Gate Archives~クーロンズ・ゲート アーカイブス~』p79
  5. ^ 『Kowloon's Gate Archives~クーロンズ・ゲート アーカイブス~』p85
  6. ^ 『Kowloon's Gate Archives~クーロンズ・ゲート アーカイブス~』p87
  7. ^ 『Kowloon's Gate Archives~クーロンズ・ゲート アーカイブス~』p91
  8. ^ 『Kowloon's Gate Archives~クーロンズ・ゲート アーカイブス~』p95
  9. ^ 『Kowloon's Gate Archives~クーロンズ・ゲート アーカイブス~』p99
  10. ^ 『Kowloon's Gate Archives~クーロンズ・ゲート アーカイブス~』p101
  11. ^ 『Kowloon's Gate Archives~クーロンズ・ゲート アーカイブス~』p189
  12. ^ a b c 『Kowloon's Gate Archives~クーロンズ・ゲート アーカイブス~』p169
  13. ^ a b c クーロン続編新作を制作~クーロン2プロジェクト~”. 2021年6月4日閲覧。
  14. ^ a b [1] - Twitter クーロンズリゾーム公式アカウント
  15. ^ 『Kowloon's Gate Archives~クーロンズ・ゲート アーカイブス~』p17
  16. ^ [2] - Twitter クーロンズリゾーム公式アカウント
  17. ^ 『Kowloon's Gate Archives~クーロンズ・ゲート アーカイブス~』p167
  18. ^ a b c d e f g FURUKAWA (2016年1月3日). “【今から遊ぶ不朽のRPG】第11回『クーロンズゲート』(1997)”. Game*Spark. イード. 2018年5月12日閲覧。
  19. ^ a b 「クーロンズ・ゲート」の制作秘話が語られたプロジェクト25周年記念イベントをレポート。期待の続編「クーロンズリゾーム」の情報も”. 4gamer.net (2022年11月7日). 2023年10月10日閲覧。
  20. ^ 「クーロンズ・ゲート」の完全版サントラ発売記念イベント開催”. GAME Watch (2014年7月1日). 2021年6月25日閲覧。
  21. ^ 『Kowloon's Gate Archives~クーロンズ・ゲート アーカイブス~』p18。
  22. ^ a b c d e f g h i j 長雨. “制作の黒幕はクーロンズ・ゲートさん!? 『クーロンズ・ゲート』の開発を手掛けた木村央志×井上幸喜×蓜島邦明ロングインタビュー【前編】”. シシララTV. 2018年5月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月12日閲覧。
  23. ^ 電撃PlayStationG2 Vol.21. 主婦の友社. (1996年5月10日) 
  24. ^ a b 「クーロンズゲートVR suzaku」に、ヘッドセット不要のNonVRモードが追加!” (2017年12月21日). 2018年5月12日閲覧。
  25. ^ a b c CAMPFIRE クーロンズゲートの続編新作『クーロンズリゾーム』制作プロジェクト
  26. ^ a b 【「クーロンズリゾーム」PILOT版リリース記念インタビュー】 木村央志監督が語る、伝説的ゲーム「クーロンズ・ゲート」を継承するプロジェクトの狙いと今後の展開”. アキバ総研 (2023年2月22日). 2023年3月5日閲覧。
  27. ^ a b KG/Projectのあらまし
  28. ^ a b ADVからムービーノベルへ…『クーロンズ・ゲート』続編新作の『クーロンズリゾーム』が大幅な仕様変更”. Game*Spark (2022年5月30日). 2022年6月2日閲覧。
  29. ^ ウワーマン (2023年2月28日). “『クーロンズ・ゲート』が発売された日。サイバーパンクな伝説の怪作アドベンチャー。25年ぶりの伏線回収がされる新作ムービーノベルも発売【今日は何の日?】”. ファミ通.com. KADOKAWA Game Linkage. 2023年9月26日閲覧。
  30. ^ 【好きなゲームが世間のクソゲーな人インタビュー】不条理で猥雑な「クーロンズ・ゲート」の世界に心を奪われて、もう23年たってしまいました”. ねとらぼ. ITmedia (2020年12月30日). 2023年9月26日閲覧。
  31. ^ a b c その中身は、VRという名のファンディスク。” (2017年11月9日). 2018年5月12日閲覧。
  32. ^ NeoKowloon”. (有)ジェットグラフィクス. 2010年3月21日閲覧。






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