クループ 予防

クループ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/18 06:54 UTC 版)

予防

クループの大部分はインフルエンザジフテリア予防接種により予防されてきた。かつてクループはジフテリアに起因する疾患とされてきたが、今や先進国ではワクチン接種によりジフテリアがほとんどみられなくなった。[3]

治療

一般に、クループに罹患した小児はできるだけ安静にさせることが必要である。[5] ステロイドをルーチンに使用し、重症例にはアドレナリンを用いる。[5]酸素飽和度92%未満の小児には酸素投与を実施し[3]、重度クループの場合は入院させ観察化におくこともある。[4]酸素投与が必要な場合、 酸素マスクよりも小児を興奮させる刺激が少ない「ブローバイ」投与(酸素源を小児の顔のそばに保持する)が望ましい。[3]治療時に気管内挿管が必要な患者は0.2%に満たない。[8]

ステロイド

デキサメサゾンブデソニド等の副腎皮質ステロイドはあらゆる重症度クループの小児の転帰を改善することが示されている。[9] 投与後6時間もすれば著明な症状の軽減が得られる。[9] 経口、非経口、吸入による投与で効果が確認できるのであれば、経口投与が望ましい。[5] 通常は単回投与で十分であり、また安全であると考えられている。[5] 0.15 mg/kg、0.3 mg/kgおよび0.6 mg/kgのデキサメサゾンでも同じ効果が得られる。[10]

アドレナリン

中等度から重度のクループの場合、ネブライザーによるアドレナリン投与で一時的に改善する可能性がある。[5]アドレナリンは通常10~30分でクループの重症度を軽減させるが、その効果は2時間程度しか続かない[2][5]。治療後2~4時間症状が改善した状態が続き、他の合併症もみられなければ、退院可能である[2][5]

その他の治療法

これ以外のクループの治療法も研究されてきたが、いずれも実用の根拠となるだけのエビデンスが得られていない。蒸気吸入と加湿が従来のセルフケア療法であったが、その有効性は臨床試験では証明されておらず[3][5]、現在は滅多に用いられない。[11] デキストロメトルファングアイフェネシンを含有する鎮咳薬の使用もあまり推奨されていない。[2]呼吸仕事量を減少させるためのヘリオックス (ヘリウム酸素の混合気体)の吸入が用いられたこともあったが、これも科学的根拠に乏しい。[12] クループは通常ウイルス性の疾患であるため、細菌性の二次感染が疑われる場合を除き抗生物質は使用しない。[2]細菌性二次感染がある場合は抗生物質バンコマイシンおよびセフォタキシムが推奨される。[3] インフルエンザ A 型およびB型に起因する重度の症例には、抗ウイルス薬 ノイラミニダーゼ阻害薬を投与することがある。[3]

予後

ウイルス性クループは自己限定的疾患であるが、呼吸不全心停止により死亡することもまれにある[2] 症状は通常2日以内に改善するが、7日程度まで長引くこともある。[6] この他、まれではあるが合併症として細菌性気管炎や肺炎、肺浮腫を併発し得る。[6]




  1. ^ デジタル大辞泉の解説”. コトバンク. 2018年2月10日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j Rajapaksa S, Starr M (May 2010). “Croup – assessment and management”. Aust Fam Physician 39 (5): 280–2. PMID 20485713. 
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s Cherry JD (2008). “Clinical practice. croup”. N. Engl. J. Med. 358 (4): 384–91. doi:10.1056/NEJMcp072022. PMID 18216359. 
  4. ^ a b c d Diagnosis and Management of Croup (PDF)”. BC Children’s Hospital Division of Pediatric Emergency Medicine Clinical Practice Guidelines. 2013年12月11日閲覧。[リンク切れ]
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p Everard ML (February 2009). “Acute bronchiolitis and croup”. Pediatr. Clin. North Am. 56 (1): 119–33, x–xi. doi:10.1016/j.pcl.2008.10.007. PMID 19135584. 
  6. ^ a b c d e f g h i j k l Johnson D (2009). “Croup”. Clin Evid (Online) 2009. PMC: 2907784. PMID 19445760. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2907784/. 
  7. ^ Abdul-Rasool, S., et a;. (2010). “Understanding Human Coronavirus HCoV-NL63”. Open Virol J. 25 (4): 76-84. doi:10.2174/1874357901004010076. 
  8. ^ a b c Klassen TP (December 1999). “croup. A current perspective”. Pediatr. Clin. North Am. 46 (6): 1167–78. doi:10.1016/S0031-3955(05)70180-2. PMID 10629679. 
  9. ^ a b Russell KF, Liang Y, O'Gorman K, Johnson DW, Klassen TP (2011). “Glucocorticoids for croup”. Cochrane Database Syst Rev 1 (1): CD001955. doi:10.1002/14651858.CD001955.pub3. PMID 21249651. 
  10. ^ Port C (April 2009). “Towards evidence based emergency medicine: best BETs from the Manchester Royal Infirmary. BET 4. Dose of dexamethasone in croup”. Emerg Med J 26 (4): 291–2. doi:10.1136/emj.2009.072090. PMID 19307398. 
  11. ^ a b Marchessault V (November 2001). “Historical review of croup”. Can J Infect Dis 12 (6): 337–9. PMC: 2094841. PMID 18159359. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2094841/. 
  12. ^ Vorwerk C、Coats T (2010). “Heliox for クループ in children”. Cochrane Database Syst Rev 2 (2): CD006822. doi:10.1002/14651858.CD006822.pub2. PMID 20166089. 
  13. ^ Online Etymological Dictionary、Accessed 2010-09-13.
  14. ^ a b Feigin, Ralph D. (2004). Textbook of pediatric infectious diseases. Philadelphia: Saunders. p. 252. ISBN 0-7216-9329-6. 


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