クラリネット 特殊奏法

クラリネット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/29 18:59 UTC 版)

特殊奏法

クラリネットには様々な特殊奏法があり、主にジャズ現代音楽などに用いられている。

重音奏法
同時に複数の音を出す奏法。クラリネットの場合、「きれいな音」にはならないことが多い。
フラッターツンゲ(フラッタータンギング)
巻き舌のごとく "r r r r r r" と発音する奏法。 
循環呼吸
鼻から肺へ空気を吸引する間に口腔内に溜めた空気により楽器を鳴らし続ける奏法。
微分音程度のグリッサンドまたはポルタメント
グリッサンドは2音間を等速に指を滑らせて移行する奏法、ポルタメントは次の音に移る瞬間に渡りをつけるように指を滑らせて移行する奏法。このとおりに、両者は異なる技法である。グリッサンドは、ガーシュウィン作曲「ラプソディ・イン・ブルー」の最初のソロで用いられていることでよく知られている。

主な教則本

  • J.R.グルウサン著、J.ランスロ監修、二宮和子訳 『クラリネット学習の為の合理的原則』 ブージー & ホークス社 ISBN 4636013816 ; 初心者用として定番の教則本。
  • H.クローゼ著、S.ベリソン編著 『クローゼ・クラリネット教本1』 全音楽譜出版社 ISBN 4-11-548311-3 (2017年現在絶版)
  • H.クローゼ著、S.ベリソン編著 『クローゼ・クラリネット教本2』 全音楽譜出版社 ISBN 4-11-548312-1 (2017年現在絶版)
  • 板倉康明 校訂 『クローゼ・クラリネット教則本』 全音楽譜出版社 ISBN 4-11-549501-4

同属楽器

クラリネット属: 左からバス・クラリネット、バセット・ホルン、ニ調、変ロ調、イ調、ト調、変ホ調のクラリネット、イ調のバセット・クラリネット
コントラバス・クラリネット(左)とコントラアルト・クラリネット

より高い音や低い音を求めて同属楽器が作られている。主なものは次の通りで、いずれも原則的に同じ運指を用いることができる。

ハ調のソプラノ・クラリネットを除いて、通常は移調楽器として取り扱われ、ト音記号で記譜される。しかし、バス・クラリネット以下の低音楽器はヘ音記号で記譜されることもある。

呼称 管調 記音に対する
実音
備考
和名 各言語名
ソプラニーノ・クラリネット
(ピッコロ・クラリネット)
(小クラリネット)
伊:clarinetto piccolo
独:kleine Klarinette
  (Piccoloklarinette)
仏:petite clarinette
  (clarinette sopranino)
英:sopranino clarinet
  (piccolo clarinet)
As A♭ 変イ 短6度 小編成のバンドなどで使われる。
G G 完全5度 シュランメル音楽で使われる。
F F 完全5度 メンデルスゾーンの吹奏楽のための序曲作品24で使用されている。
Es E♭ 変ホ 短3度 俗にエスクラと呼ばれる。特に近代以降の大編成の管弦楽曲で多用される。
D D 長2度 モルターの協奏曲、リヒャルト・シュトラウスのティルオイレンシュピーゲルの愉快な悪戯、レスピーギのローマの祭などで活躍する。
ソプラノ・クラリネット
(クラリネット)
伊:clarinetto
  (clarinetto soprano)
独:Klarinette
  (Sopranoklarinette)
仏:clarinette
  (clarinette soprano)
英:clarinet
  (soprano clarinet)
C C 同度 B♭管で代用されてきたが、良い音色の楽器が開発され、よく使われるようになっている。
B B♭ 変ロ 長2度 最も標準的なクラリネット。
A A 短3度 管弦楽では標準的。
吹奏楽ではほとんど使われない。
G G 完全4度 トルコの民族音楽で使われる。
バセット・クラリネット 伊:clarinetto di bassetto
独:Bassettklarinette
仏:clarinette de basset
英:basset clarinet
B B♭ 変ロ 長2度 低音域をバセット・ホルン相当の記音Cまで拡張したもの。モーツァルトは好んでこの楽器のために楽曲を書いた。
A A 短3度
バセット・ホルン 伊:corno di bassetto
独:Bassetthorn
仏:cor de basset
英:basset horn
G G 完全4度 構造が普通のクラリネットとは若干異なり、低音域が広い。
F F 完全5度 低音域を更に拡張したもの。かつてはFアルトで代用されてきた。
アルト・クラリネット 伊:clarinetto contralto
独:Altklarinette
仏:clarinette alto
英:alto clarinet
F F 完全5度 バセットホルンの代用として使われる。
Es E♭ 変ホ 長6度 吹奏楽等でヴィオラ音域を担当する。
バス・クラリネット 伊:clarinetto basso
  (clarone)
独:Bassklarinette
仏:clarinette basse
英:bass clarinet
B B♭ 変ロ 長2度(仏式) 大編成の管弦楽や吹奏楽で低音域を担う。ファゴットには苦手な弱音や、敏速な動きも可能。
1オクターヴ+
長2度(独式)
A A 短3度(仏式) ワーグナードヴォルザークラベルエルガーなどに用例がある。
1オクターヴ+
短3度(独式)
コントラアルト・クラリネット 伊:clarinetto contra-alto
独:Kontra-altklarinette
仏:clarinette contralto
英:contra-alto clarinet
Es E♭ 変ホ 長6度(仏式) 吹奏楽・クラリネットアンサンブル等で使われ、重厚な響きを加える。
1オクターヴ+
長6度(独式)
コントラバス・クラリネット 伊:clarinetto contrabbasso
独:Kontrabass-klarinette
仏:clarinette contrebasse
英:contrabass clarinet
B B♭ 変ロ 1オクターヴ+
長2度(仏式)
同上。
2オクターヴ+
長2度(独式)
オクトコントラアルト・
クラリネット
伊:
独:
仏:
英:octocontra-alto clarinet
Es E♭ 変ホ 1オクターヴ+
長6度(仏式)
2オクターヴ+
長6度(独式)
オクトコントラバス・
クラリネット
伊:
独:
仏:
英:octocontrabass clarinet
B B♭ 変ロ 2オクターヴ+
長2度(仏式)
3オクターヴ+
長2度(独式)

代表的な楽曲


注釈

  1. ^ これは可搬性のためであって、音色、音質、音程などが優れているわけではない。

出典

  1. ^ a b c 下中直也(編)『音楽大事典』全6巻、平凡社、1981年
  2. ^ a b 安藤由典『新版 楽器の音響学』音楽之友社、1996年、ISBN 4-276-12311-9
  3. ^ a b アンソニー・ベインズ(著)、奥田恵二(訳) 『木管楽器とその歴史』 音楽之友社、1965年。
  4. ^ N.H.Fletcher、T.D.Rossing(著)、岸 憲史 他(訳)『楽器の物理学』 シュプリンガー・ジャパン、2002年、ISBN 978-4-431-70939-8;2012年に丸善出版より再刊 ISBN 978-4621063149
  5. ^ Obataya E; Norimoto M. (1999年8月). “Acoustic properties of a reed (Arundo donax L.) used for the vibrating plate of a clarinet”. J. Acoust. Soc. Am. 106 (2): 1106–1110. doi:10.1121/1.427118. https://www.researchgate.net/publication/243524477_Acoustic_properties_of_a_reed_%28Arundo_donax_L.%29_used_for_the_vibrating_plate_of_a_clarinet. 
  6. ^ Pinksterboer, Hugo (2001). Tipbook Clarinet. Hal Leonard Corporation. ISBN 1-85828-753-7 
  7. ^ Intravaia, Lawrence J; Resnick, Robert S. (1968年春). “A Research Study of a Technique for Adjusting Clarinet Reeds”. Journal of Research in Music Education (MENC) 16 (1): 45–58. doi:10.2307/3344436. JSTOR 3344436. 






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