キーボード (コンピュータ) キーボードの機能

キーボード (コンピュータ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/17 05:46 UTC 版)

キーボードの機能

今日、一般に普及しているキーボードは、昔のタイプライターの時代から継承してきたものや、コンピュータの時代になってから新たに追加されたものなど、数多くの機能を備えるようになっている。

オートリピート

開始や間隔の設定

キーを押しっぱなしにした場合、そのキーに対応するコードが連続して入力(送信)される機能である[4]。最初に押した時点からn秒後、m秒間隔で繰り返しするというような設定を行なえるキーボードもある。ソフトウェア的にシミュレートしたり、ソフトウェア側から(キーボード単独でなく)設定できるものもある。ほとんどのOSでは、これらの間隔を自由に設定できる。例えば、Windowsにおいては、コントロールパネルでリピート間隔(速度)を設定できる。

シフトロック

ロックされている間は、キーボード上の全てのキーがシフトキーを押したままの状態になる特殊なキーである[5]。この機能の起源は機械式のタイプライタであり、シフトロックキーが有効になっている間は文字通り物理的にシフトキーがロックされた状態となるものであった。通常コンピュータ用のQWERTY配列キーボードでは用意されている事は少ないが、フランス語圏で多用されるAZERTY配列等やコモドール64などを含む比較的古いもの等にはシフトロックキーが搭載されている。

QWERTY配列のキーボードにはシフトロックキーの代わりにキャップスロックキーが用意されている。キャップスロックでは一部の文字の入力はシフトキーと文字キーを同時に押す必要があるが、何らかの理由で同時に押すことができない状況に対応するため、例えばMacOS/OSXやWindows等を含む一部のOSやウィンドウマネージャの一部にはキャプスロックキーにシフトロックキーを割り当てる事ができる機能がある。

Caps Lock

Caps Lock(キャップスロック)キー、キャピタルロックキーは、キーが有効になっている間、コンピュータに入力される文字を小文字から大文字に変える為のキーである[5]。記号等の非英字のキーは上段シフトとして扱われない点がシフトロックとは異なる。CapsとはCapital lettersの略、すなわち英字の大文字の意味である。

Num Lock

Scr Lock

PrtSc

SysRq

SysRq(システムリクエスト)キーは、本来は操作中にシステムに対するコマンド入力モードに切り替えるためのキーである。メインフレーム環境のIBM 3270端末などでは、z/OSなどのTSO使用時にはVTAMコマンドが入力可能になり、z/VMなどのCMS使用時にはCPコマンドが入力可能になる。SysRqキーはパーソナルコンピュータでは101キーボードから搭載され、メインフレーム接続用の端末エミュレータで使用されるが、パーソナルコンピュータでは伝統的にコマンド入力モードへの切替にはEscキーを使用するアプリケーションが多い事もあり、SysRqキーは一部のディスプレイ切替装置用ソフトウェアや、LinuxカーネルでのマジックSysRqキーなどを除き、使用頻度が低い。

ベル音/ビープ音

機械式キーボードにおいては、右端まで来ると、その旨を通知するためのベルが鳴る。コンピュータ用のキーボードは、一部の機種(Sunのキーボードなど)において、キーボード内にベル音を鳴らすためのスピーカーがついている場合がある。この場合、本体側からBelキャラクタ(ASCIIで07H)を送信することで音が鳴る。但し、本物のベルではないのでビープ音という場合がほとんどである。

クリック音

機械式キーボードにおいては、キーを打鍵するたびに機械的な動作に応じて音と手応えがするが、電気式のコンピュータ用のキーボードではほとんど音がしない。そのため、キーの打鍵がされたかどうかを確認するために、打鍵するたびごとに音を発生させる仕組みが用意されている場合がある。これをクリック音という。音の発生機能そのものは前述のベル音と同じである。

しかし一部の業務用やマニア向け仕様のキーボードの中には、スイッチ部分に物理的にクリック感を生み出す物も見られ、好みで選択されている。中にはこれに特化して、激しい動作音のするものも見られる(後述)。

同時押し・ロールオーバー

電気式のキーボードは、機械式キーボードとは違い、同時に複数のキーを押すことが物理的に可能であるが、内部の電気回路的な制約により、押下したキー全ては入力できないことがある[注釈 4]。この際、何文字まで同時にキー入力を受け付けるかを表すのがロールオーバーである。たとえば3キーロールオーバーとは3キーまで同時に押しても入力可能ということを指し、Nキーロールオーバーとはどのキーを同時に押しても全て入力されることを指す。現在のキーボードはコントローラーによっていくつかの種類があり、安価なキーボードの場合には2 - 3キーロールオーバー、高価なキーボードの場合には疑似Nキーロールオーバーや完全Nキーロールオーバーとなっている。富士通製のキーボードでは疑似Nキーロールオーバーを「Fキーロールオーバー」と称している。

USBキーボードはUSB HID規格で定義されているboot protocolがほとんどの場合使われるが、その場合そのフォーマットの構造からくる制約により、完全Nキーロールオーバーの機種でも、同時押しを認識されるのは最大6キーまでとなる(キー自体は入力されるが、6キーより先は最初に押したキーから順に指を離した扱いとなる)。このためPS/2接続を好むユーザーもいるが、近年のマザーボードはレガシーデバイスが削除される傾向にあり、キーボードのためにマザーボードを選ぶ状況となっている。

この機能は主に複数同時押しを行うゲーマー向けキーボードで宣伝される事が多い。たとえばダイヤテックから発売されているマジェスタッチ、マジェスタッチリニアには、特別バージョンとしてNキーロールオーバーモデルが通常モデルとは別に存在する。大抵この機能を搭載したキーボードは1万円以上するのだが、シグマA・P・OがNキーロールオーバーではないものの、限定エリア内での複数キー同時押しを保証したキーボードを発売し、FPSゲーマー向けのエントリーモデルとなっている。

しかし、2010年にマイクロソフトが「2つのキーボードデバイスとして認識させる」事で「USB接続での最大26キー同時押し[2]」を実現した上、「実売価格で5000円台前後(2010年5月1日現在)」と言う低価格も実現した「SideWinder X4 Keyboard」が発表された[6]ことで、前述の状況は一変する事となった。

主なNキーロールオーバー対応キーボード

  • ペリックス PERIBOARD-329 5キーロールオーバー
  • SteelSeries「SteelSeries 7G」
  • 東プレREALFORCE」シリーズ
  • ダイヤテック「Majestouch 2」シリーズ
  • PFUHappy Hacking Keyboard Professional」
  • Logitech「G15 Gaming Keyboard(初代)」・「G11 Gaming Keyboard」
  • Kinesis「Kinesis Contoured Keyboard」・「Kinesis Maxim Ergonomic Keyboard」
  • サイズ CHERRY「MX-BOARD G80-3600」シリーズ
  • マイクロソフト「SideWinder X4 Keyboard」
  • ダーマ「DRTCKB109UP1」・「DRTCKB91UP2」
  • コルセア 「K65」

表示機能

ペリックス社のPeriboard-324

特殊なキーボードには特殊なステータス表示機能がついている場合がある。PC用のキーボードでは、一般的には、キャップスロック状態、ニューメリックロック状態、スクロールロック状態を3つのLEDによって表す表示機能が付いている。LEDの色はたいてい緑色か橙色であるが、青色が使われているものもある。PCで一般的に使われるATキーボード(PS/2キーボード)ではこれらの表示機能はコンピュータ本体から制御可能である。この制御がアプリケーションソフトウエアが実際に行えるかどうかはコンピュータで動作しているOSに依存する。GNU/Linux等の一部のOSでは、PC用のキーボード上のこの3つの表示機能を使い、OSからのパニック時のステータスを表示させることができるものもある。

ステータス表示用の他にも、全てのキーにライトを内蔵し、その光で暗い部屋でもキー表示が見えるようにした物等もある:右写真。売り出された当初は軍事用ではないか等の噂も立ったが、恐らくは派手な電飾を好むModding[要曖昧さ回避]文化から由来した物であると考えられる[7]。但し、LEDではないものの、光るキーボード自体はバックライト用にエレクトロルミネセンスを使用したセンチュリー等、それ以前から存在していた。出所の怪しさやチェリー製のスイッチ等が注目を浴びた理由であろうと考えられる。

LEDだけではなく、キーボードに液晶表示を搭載する例もあり、ロジクール(ロジテック、Logitech)のゲーム用キーボードG15 Gaming Keyboardには、角度調節が可能なバックライト付きLCDパネルが搭載され、様々な情報が表示される。

また極めて特異な例ではあるが、ロシアのデザイン会社Art. Lebedev Studio[8]から、全てのキートップに有機ELディスプレイが内蔵されたOptimus Maximusキーボード [9] が2008年に発売された。キーが3個だけ搭載された簡易版となるOptimus mini threeキーボード[10]とその改良版も発売されている。

その他

特定の機種専用のキーボードには、特殊なキーが用意されているものがある。下記はその例である。

  • ACPI対応キーボードや、ADB対応のMacintosh[注釈 5]NeXTワークステーションにおいては、電源ボタンが用意されており、これ一つ押すだけで終了操作(設定によってはスリープ)を行うことができる。
  • 一部のパソコンでは、電子メールクライアントウェブブラウザなどの特定のアプリケーションソフトを起動させるキーを持っているものがある(このためには、キーの操作を感知してソフトを起動する専用ドライバの常駐が必要となる場合もある)。
  • 2000年代初期以降のWindowsマシン向けのハードウェアには、Windowsで機能するWindowsキーアプリケーションキーがついていることが多い。
  • Macintoshに代表されるアップル製キーボードにはコマンドキーオプションキー(Altキーに相当)がついており、他のキーと組み合わせることでOSに様々な指示を与えることができる(キーボードショートカット)。
  • アップル製のUSBキーボードにはドライブの取り出しを行うイジェクトボタンがついている。
  • かつて[いつ?]パソコンが一般家庭に普及しだした頃に、コンピュータ画面に「 Press Any key to continue... 」「 …続けるにはどれかキーを押してください 」などと表示されたのを見た新規ユーザが、そのような “Any” “どれか” と刻印されたキーがキーボード上にあるものと誤解した (→Any key)。
  • トラックポイントトラックボールタッチパッドなど、ポインティングデバイスを内蔵したキーボードもある。

注釈

  1. ^ 最近では少ないが、1950年代や1960年代のコンピュータに関する文献や解説書においては漢字で「鍵盤」と書かれていることは多かった。なおkeyの日本語訳は「鍵」であり、boardの訳語は「盤」であり、keyboardの訳語が「鍵盤」なので、両者は本質的には同一のものである。近年は楽器については「鍵盤」と呼び、コンピュータのものは「キーボード」と呼び分けてる傾向はある。だが、鍵盤楽器でも電子楽器については「鍵盤楽器」ではなく「キーボード」と呼ぶのが当たり前なので、電子楽器に慣れている人にとっては、逆に、どちらも「キーボード」であり、同一名称で呼ぶものである。中国語ではどちらも鍵盤と呼ぶ。一方、朝鮮語では漢字表記は「字板」とした。
  2. ^ 赤ちゃん・乳幼児を育てている人々の切実な需要を意識した文章が、静音タイプのキーボードのパッケージに表示されている。赤ちゃんは聴覚器官のサイズが小さく、音高(ピッチ)が高い音に非常に敏感で、大人には聞こえていないような高い音でもはっきりと聞こえており、たとえば食品の袋やスーパーのレジ袋がかすかに動く音や、当記事で扱っているキーボードのタッチ音などにも非常に敏感に反応する。赤ちゃん・乳幼児の子育てには子供を(健やかな成長のために)眠りに誘導する作業《寝かしつけ》が含まれており、子守唄を歌ったり細心の注意でやさしくなでたりするなどしてかなりの時間(長い場合は数十分ほど)をかけて眠りに誘導し、うまく眠り始めたら大人は音を一切たてないように細心の注意を払うのだが、せっかく苦労して眠ってもらったのに、気をつけていてもコンピュータ類のキーボードを操作するだけで乳幼児が目覚めてしまい《寝かしつけ》をまた最初からやり直さなければならないということが、世の子育て中の家庭の中で無数に起きている。
  3. ^ 極端なキーの詰め込み具合から「変態配列」等とも呼ばれ、特にタッチタイピングを行う場合は勝手が変わってしまうため一部のユーザには嫌悪されている。
  4. ^ 一部のオペレーティングシステムにおいては[どれ?]、同時に押したキーが認識できない場合に、ビープ音が鳴るものもある(マザーボード本体にスピーカーが搭載されている場合)。
  5. ^ Macintosh用キーボードは、ADBが廃止されUSBとなった後もしばらくは電源ボタンが搭載されていたが、OSのフリーズ時やハブを介しての接続では使用不能となった。
  6. ^ 但し、キーを最深部まで押下した時の底付き音や、押したキーが元に戻った時の音などは発生する。これらの音を軽減するためユニット内部にゴム製の部品を使用したスイッチもあり、Apple Extended Keyboard II等に使用されている。
  7. ^ チェリーの茶軸等。
  8. ^ 古いシステムではタイプライターそのものを流用しプリンターの機能を兼ねさせることもあった。

出典

  1. ^ IT用語辞典 e-words、【キーボード keyboard】[1]
  2. ^ スタパ齋藤の『これだ!!これで行くゼ!! 〜 IBM SpaceSaverキーボード 〜』等。
  3. ^ タッチ操作の設計(Windows ストア アプリ)(Windows)
  4. ^ ピクニック企画, 堤大介, ed. (1 March 1990). "オートリピート". 『電脳辞典 1990's パソコン用語のABC』. ピクニック企画. p. 24. ISBN 4-938659-00-X
  5. ^ a b Weekly "Keyboard World" 『7. Capitals lock
  6. ^ 4Gamer.net『ついに登場した「4桁円台半ば」の大本命 SideWinder X4 Keyboard
  7. ^ Deck Backlit Keyboards
  8. ^ Art. Lebedev Studioを参照。
  9. ^ Optimus keyboard
  10. ^ Optimus mini three keyboard
  11. ^ チェリーキーボードMXキースイッチ
  12. ^ 株式会社インプレス (2018年5月29日). “【やじうまミニレビュー】 光学式スイッチを採用した高コスパのゲーミングキーボード「GAMDIAS HERMES P2」”. PC Watch. 2021年9月27日閲覧。
  13. ^ ジャンク (2020年8月15日). “オプティカルスイッチとは?ゲーミングキーボードで使われる光学キースイッチ「Opto-Mechanical」”. ジャンクライフ. 2021年9月27日閲覧。
  14. ^ 鍵人Buckling Spring Mechanisms
  15. ^ IBM BucklingSpring Keyboard (IBM 5576-003, 5576-A01, 101model M, etc...)
  16. ^ Nogujyu Keyboard Mania キートップの文字
  17. ^ Tech総研『和田英一@日本初ハッカーはちょっと変わった絵を描く』無刻印HHK発売の経緯
  18. ^ JISZ8514:2000 人間工学-視覚表示装置を用いるオフィス作業-キーボードの要求事項”. kikakurui.com. 2021年2月15日閲覧。
  19. ^ BakkerElkhuizen. “Should I have the Feet on my keyboard in or o”. BakkerElkhuizen, Work Smart - Feel Good. 2021年2月15日閲覧。
  20. ^ 最速のCPUと最高解像度の液晶を搭載する無敵のA4ノートPC PCG-GR9E(別冊ASCII No.4 2002年2月5日)
  21. ^ 松下電子部品、打鍵感に優れるキーボードの詳細を公表
  22. ^ キーボードクリーナー・掃除グッズおすすめ人気比較ランキング15選”. タスクルヒカク | 暮らしのおすすめサービス比較サイト. 2019年11月20日閲覧。





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