ガソリン ガソリンの用途

ガソリン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/04 01:27 UTC 版)

ガソリンの用途

燃料としてガソリンエンジンや携帯用コンロなどに使われる。自動車工学などでは火花点火機関用燃料に位置づけられる[13]

一般的にどの国でも軽油灯油との区別・識別のために着色されており、日本ではオレンジ色に着色するよう定められている。完全に燃焼することで二酸化炭素 (CO2) と (H2O) になるが、不完全燃焼を起こすと一酸化炭素や炭素が多くなる。理論上、ガソリン1 gの燃焼には空気14.7 gが必要である。この比率は理論空燃比とも呼ばれ、今日の各種の排ガス規制をクリアするために内燃機関メーカーは様々な対策をエンジンに施し、この理論空燃比に近づけるようにしている。

なお、ナフサ直留ガソリン粗製ガソリンと呼び、ナフサを接触改質して芳香族を高めたものを改質ガソリンと呼ぶ。重質の石油留分を接触分解または熱分解で分解して製造したガソリンやエチレンプラントでのナフサ熱分解によって得られる液体生成物は分解ガソリンと呼ばれ、分離精製して芳香族炭化水素等の石油化学製品となる。

自動車用ガソリン

一般にはガソリンスタンドで販売される。低温の中でもエンジンが始動し、暑さでもパーコレーションを起こさず、また、腐食性などがないことが要求される。時折、軽油灯油を求められてガソリンを販売してしまう(あるいは、その逆の)誤給油のトラブルが発生する[14]

日本の商慣行では、重量でなく体積を単位として取引される。このため猛暑で在庫ガソリンの体積が膨張すると、収益面で売り手が有利になる(寒冷期は逆)[15]

規格

ヨーロッパ規格ではEN228、アメリカ合衆国ではアメリカ材料試験協会のASTM D439で基準が設けられている[13]日本産業規格ではJIS K 2202によって規格化されている。

有鉛ガソリンと無鉛ガソリン

の含有量が一定基準以下のガソリンを無鉛ガソリン、その基準を満たさないものを有鉛ガソリンという。

古くはノッキング防止と動弁系部品の減摩剤として、テトラエチル鉛を添加した有鉛ガソリンが自動車用ガソリンとして使われていたが、鉛の毒性を理由とする無鉛化の動きにより規制された。

日本では1987年(昭和62年)までに完全無鉛化され[16]、公道を走る自動車のガソリンは全て無鉛ガソリンになっている。

ヨーロッパ規格(EN228)では、2000年以降、ガソリンの鉛最大含有量は5 mg/lとされ、その基準を満たさないガソリン(有鉛ガソリン)の販売は禁止されている[13]。また、ガソリンに含有するベンゼンの有害性から、無鉛ガソリンではベンゼンの上限値も設けられるようになった。日本国内で、市販自動車用ガソリンとして低ベンゼン製品の販売を最初に開始したのは出光興産で、その後、他社も追随するようになった。2000年からはベンゼン含有量1容量 %以下の製品が集荷されてきている[16]。ヨーロッパ規格(EN228)では、ベンゼンの上限値は1vol %(体積比)とされている[17]

アンチノック性による分類

ヨーロッパ

ヨーロッパ規格(EN228)では、アンチノック性の下限値95/85(RON/MON)の基準を満たすガソリンをプレミアムガソリンとして販売し、レギュラーガソリンと区別している[17]。さらに、アンチノック性の下限値が98/88(RON/MON)の基準を上回るものは、スーパープラスという[17]

日本

日本ではアンチノック性が大きい高オクタン価ガソリンは「ハイオク」と呼ばれ、レギュラーガソリンは単に「ガソリン」または「レギュラー」などと呼ばれている。

混合燃料・代替エネルギーへの転換

環境特性の強化から、エタノールを混合したガソリンのことをガスホール(ガソリン+アルコールの造語)と呼ぶ。また、二酸化炭素の排出量削減のため、植物由来のバイオエタノールイソブテンを反応させたエチルターシャリーブチルエーテルを一般のガソリンに対して1から3%混合させたバイオガソリンも、2007年4月27日より東京圏ガソリンスタンドで販売されている。

植物は大気中の二酸化炭素を吸収しており、その植物原料からの燃料ならば、燃焼させて二酸化炭素に変わっても二酸化炭素の絶対量は増えないと考えられている(カーボンニュートラルも参照)が、エチルtert-ブチルエーテル(ETBE)は毒性が高いというデータがある。ゴムやプラスチックなどの部品を腐食する可能性があり、発癌性物質であるNOxをより多く排出するともされ、根本的な解決には至っていない。近年は、電気自動車燃料電池車を環境負担の解決と考え、自動車メーカーは開発にしのぎを削っている。また、プラグインハイブリッドカーも一定の効果はあるとされている。

航空用ガソリン

100LLの航空用ガソリン

航空用ガソリン(アブガス英語版)とは、ガソリンエンジンを動力とする航空機向けに以下の条件が備わった、アルキル鉛などで加鉛されている有鉛ガソリンである。ゆえに無鉛ガソリン仕様の自動車やオートバイには使用できない。有鉛ガソリンを無鉛ガソリン仕様のエンジンに使用すると健康被害や環境汚染の原因となるだけでなく、ポペットバルブやバルブシートの損傷、点火プラグの汚損、触媒の破損など故障の原因となる。一部の国を除き自動車用ガソリンには添加が禁止されている。

添加用のアルキル鉛はテトラエチル鉛 (C2H5)4Pb が最もよく用いられるが、他にも性質の近い四メチル鉛 (CH3)4Pb やメチルエチル鉛なども使用される。これらは全て強い毒性を持ち、テトラエチル鉛は毒劇法特定毒物に指定されている。呼吸だけでなく皮膚からも容易に吸収され、体内に蓄積されやすい。多く体内に取り込まれると鉛中毒を起こす。

日本で入手できる航空用ガソリンのオクタン価は最大でも100オクタンであり、自動車用として販売されている無鉛ハイオクと同じである。

  • 適度の気化性
  • 高いアンチノック
  • 高い発熱量
  • 腐食性がないこと
  • 耐寒性に富むこと
  • 安定性が高いこと(経時分解の進行が遅いこと)

航空ガソリンの規格には次のような物がある。

  • 米民間規格 : ASTM D910-70(旧)、ASTM D910-75(新)
  • 米国軍用規格 : MIL-G-5572
  • 日本産業規格 : JIS K 2206
ASTM D910-75による航空ガソリンの等級と色識別
等級 鉛(cc/gai) 着色 備考
80 0.50 世界的に製造縮小
100LL 2.00 日、米、欧で入手可
100 3.00 現在の主流だが、100LLに移行しつつある

第二次世界大戦には圧縮比の高いレシプロエンジンを駆動するためオクタン価の高いガソリンが必要となり、枝分かれの多い脂環式炭化水素によりオクタン価を上げる提案がされた。これらの原料としてクメンを製造するためのプラントが建設された。

日本では航空用ガソリンが給油できる飛行場が減少し、価格も上昇していることから[18]、より安価で給油できる場所が多いJET-A1が使える航空用ディーゼルエンジンを販売するメーカー(Technify Motorsなど)の製品と換装する事業者もある[19]。ジェット燃料を使用しても操縦資格はガソリンと同じ「ピストン」である。

アリソン 250ターボシャフト/ターボプロップエンジンであるが、代用として航空ガソリン1に対しジェット燃料2の混合燃料、緊急時には無鉛ガソリンも使用可能である(整備が必要となる)。




  1. ^ 身近な危険物の火災、その消火方法 - 消防庁
  2. ^ 元科学捜査官「ガソリンで短時間に高温か 逃げるのは困難」 - NHK
  3. ^ ガソリンを携行容器に入れて保管する場合、必ず「消防法に適合した専用缶」に入れなければならず、ポリタンクなどに入れるのは消防法違反である。保管可能量も厳重に規制されている。(40L以上のガソリンを保管する場合、少量危険物としてみなされるため、所轄消防署へ「消防法に基づく事前届け出」が必要)。また車両への直接給油以外でガソリンを携行缶に入れて購入する場合は法改正により「使用目的の申告」と「身分証の提示」が求められ、携行缶へのガソリン給油は店員(危険物取扱資格を有する者)しかできない。
  4. ^ 工藤章, 「三国同盟と人造石油 : 日独経済・技術協力をめぐって」『社会経済史学』 55巻 5号 1989年 p.555-580,712, doi:10.20624/sehs.55.5_555
  5. ^ a b c 藤元薫, 「合成ガスから液状炭化水素の合成」『有機合成化学協会誌』 41巻 6号 1983年 p.532-544, doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.41.532
  6. ^ a b c d e 乾智行, 「秘話人造石油 : 鉄からゼオライトへ(化学への招待)」『化学と教育』 37巻 3号 1989年 p.282-285, doi:10.20665/kakyoshi.37.3_282
  7. ^ 三輪宗弘, 「海軍の技術選択の失敗 : 航空機用ガソリンと石炭液化」『第5回シンポジウム「日本の技術革新―経験蓄積と知識基盤化―」研究論文発表会論文集』 特定領域研究「日本の技術革新―経験蓄積と知識基盤化―」総括班 2010年 p.27-30, NAID 120006654598
  8. ^ 大塚博, 富田宣, 「(233)フィッシャー法合成ガソリンの成分分析に就て」『工業化学雑誌』 44巻 9号 1941-1942年 p.746-747, doi:10.1246/nikkashi1898.44.9_746
  9. ^ 三井啓策, 「旧海軍燃料廠におけるベルギウス法の研究と結果」『燃料協会誌』 54巻 10号 1975年 p. 846-856, doi:10.3775/jie.54.10_846,
  10. ^ 石川勇, 「石炭液化反応器へのRI技術の応用」『RADIOISOTOPES』 45巻 5号 1996年 p.349-350, doi:10.3769/radioisotopes.45.349
  11. ^ 乾智行, 萩原隆, 武上善信, 「修飾したメタノール合成触媒とZSM-5ゼオライトからなる複合触媒による合成ガスからの選択的炭化水素合成」『石油学会誌』 27巻 3号 1984年 p.228-235, doi:10.1627/jpi1958.27.22
  12. ^ 藤元薫, 「稼動を始めたニュージーランド合成ガソリンプラント」『燃料協会誌』 66巻 1号 1987年 p.2-12, doi:10.3775/jie.66.2
  13. ^ a b c ロバート・ボッシュ著、小口泰平監修『ボッシュ自動車ハンドブック第2版』シュタールジャパン、2003年、235頁
  14. ^ ガソリンは微量の静電気でも引火しやすいため、ドライバー自身が給油する「セルフ式給油所」では「手を静電気除去シートに必ず触れてから給油する」よう指示されている。
  15. ^ 猛暑、燃料商社に恩恵/ガソリンの体積が膨張/入荷時よりかさ増え利益 『日本経済新聞』朝刊、2018年8月16日(マーケット商品面) 2018年8月16日閲覧。
  16. ^ a b [http://www.cosmo-oil.co.jp/csr/publish/report/pdf/2001/09_p17_18.pdf 燃料油の品質規制と対応の経緯] (PDF) コスモ石油
  17. ^ a b c ロバート・ボッシュ著、小口泰平監修『ボッシュ自動車ハンドブック第2版』シュタールジャパン、2003年、236頁
  18. ^ セスナ172P | Alpha Aviation
  19. ^ セスナ172型ディーゼル・エンジン搭載機耐空検査に合格 | Alpha Aviation
  20. ^ 特許庁ホームページ - 鉛-錫合金めっき代替の鉛フリーめっき
  21. ^ 多用途での活躍が期待される新型双発機 - JGAS AVIATION BLOG





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