カロリー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/22 09:00 UTC 版)
カロリー calorie | |
---|---|
記号 | cal |
系 | 非SI単位 |
量 | 熱量 |
SI | (正確に)4.184 J(計量法による。) |
由来 | 1 gの水の温度を標準大気圧下で1 °C上げる熱量 |
語源 | ラテン語 calor(熱) |
日本の計量法においても、熱量の単位は、ジュール(SI単位)、ワット秒(SI単位)またはワット時(非SI単位)であり、カロリーは栄養学の分野などの特殊の用途にのみ用いることができる単位(計量法#用途を限定する非SI単位)にすぎない。
計量法においてカロリーは正確に 4.184 Jと定義されている[1]。
名称の由来
「カロリー」という言葉は、ラテン語で「熱」を意味する calor に由来する[2]。
計量法による定義
日本の計量法では、熱量の計量単位は、ジュール又はワット秒、ワット時と定められている[3]。そして、カロリーを特殊な計量である「人若しくは動物が摂取する物の熱量又は人若しくは動物が代謝により消費する熱量の計量」に限って使用できる単位として認めている[4]。その大きさは 1999年10月以降、1 cal = 4.184 J である。これは後述の熱化学カロリー[5](thermochemical calorie[6][7])を採用したものである。なお、計量単位令は、キロカロリー(kcal)、メガカロリー(Mcal)、ギガカロリー(Gcal)の使用を認めている。
歴史
1824年にフランスのニコラ・クレマンが、「水 1 kg の温度を0 °Cから1 °Cに上げるのに必要な熱量」をカロリーと名づけた[8]。このクレマンのカロリーは、現在のカロリーの定義では 1000 cal = 1 kcal に当たる。
1888年、英国学術協会が、「水 1 g の温度を1 °C上げるのに必要な熱量」をサーム(英: therm、現在のサーム = 105 BTU とは別)と名づけ、1896年、カロリーと改称した。
この歴史的事情が、カロリーが大カロリー(kg-calorie = 1000 cal)を意味したり、小カロリー(g-calorie = 1 cal)を意味したりする、いわゆる「Calorie Confusion」の起源である。
派生単位
日本の計量法体系では、カロリーの倍量単位として、キロカロリー(kcal),メガカロリー(Mcal),ギガカロリー(Gcal)の使用を認めているが、ミリカロリー (mcal = 0.001 cal) などの分量単位は認めていない。これに対して、国際単位系(SI)ではカロリーもその倍量・分量単位も認めていない。
栄養学の分野ではキロカロリー (kcal = 1000 cal) がよく使われる。大きな熱量を示すときには、メガカロリー (Mcal = 106 cal) やギガカロリー (Gcal = 109 cal) も希に使われる。
106カロリー(15度カロリー)をテルミまたはサーミー(仏: thermie、記号:th)という。1 th = 1000 000 cal15 ≒ 4.1855 MJ である。元来は、1 t の水について定義された、MTS単位系の単位である。
109カロリー(熱化学カロリー[9])を1TNTトンといい、核兵器などのエネルギーに使われる。1 tTNT = 109 calth = 4.184 GJ である。
大カロリー
カロリーという単位名称は元来、MKS単位系のキログラムに基づく単位(現在の kcal = 1000 cal に等しい)の名称であった。これと、CGS単位系のグラムに基づく単位は次のように言い分けられる。(なお、MTS単位系のトンに基づく単位の名称はテルミである)
MKS単位系での名称 (英語) |
CGS単位系での名称 (英語) |
記号 |
---|---|---|
小カロリー (small calorie) |
グラムカロリー (gram calorie) |
cal |
大カロリー (large calorie) |
キログラムカロリー (kilogram calorie) |
Cal kcal C |
大カロリー(記号 Cal、1文字目が大文字)は、伝統的に栄養学の分野で使われてきた。しかし極めて紛らわしいため、現在ではキロカロリー (kcal) が使われている。
栄養学における「カロリー」
栄養学においては、カロリーは生理的熱量(栄養学における熱量、エネルギー)を表す単位として用いられる。日本の計量法(1999年10月1日から)では、カロリー、キロカロリー (kcal)、メガカロリー (Mcal)、ギガカロリー (Gcal) の使用が、「人若しくは動物が接取する物の熱量又は人若しくは動物が代謝により消費する熱量の計量」(すなわち栄養学や生物学に関する事項)に限定して認められている。
摂取する食物から得られる栄養学的熱量と、運動や基礎代謝によって消費される熱量について適用され、生物が生理的に代謝したエネルギー1カロリーは空気中での酸化反応(燃焼)によって発生した熱量1カロリーと等しいと定義される。
栄養学ではカロリー(本来は平均カロリー、日本の計量法では熱化学カロリー)の1000倍のキロカロリー (kcal) がよく使われる。かつてはキロカロリーのかわりに大カロリー (Cal、1文字目が大文字)を使い、単にカロリーと言っていた。しかし、"Cal"と"cal"とは極めてまぎらわしいので、今日では kcal(キロカロリー)と表記するのが一般的である。
カロリーは、日本を含む多くの国で生理的熱量を表す標準単位として広く用いられ、計量法改正でも「用途を限定する非SI単位」と定義され、SI単位への移行からは除外されているが、今後は政策的にSI単位であるジュール(1 cal = (正確に)4.184 J)に置き換えられていく予定となっている。日本食品標準成分表においても、kcalによる数値と、1 kcal = 4.184 kJの換算によるkJによる数値が併記されている[10][11]。
海外(アメリカを除く)の食品では、そのラベルにジュール表記を併記したものもある。
エネルギー量を表す用法から転じて、「カロリー」は食品の持つ栄養価としての生理的熱量そのものを指す言葉ともなっている。例「こんにゃくはカロリーが低い」「ファストフードはカロリーが高いから太りやすい」などと表現する。
なお一日のエネルギー必要量(消費量)は、身体活動レベルに応じて基礎代謝量の1.5〜2倍程度となる。詳細は栄養#栄養学の観点からを参照のこと。
- ^ 計量単位令 別表第6、項番13
- ^ 平凡社大百科事典 第3巻(カウ-キス)、p.827、「カロリー」、執筆者は高田誠二
- ^ 計量法 別表第1、「熱量」の欄
- ^ 計量単位令第5条、別表第6 項番13
- ^ 平凡社大百科事典 第3巻(カウ-キス)、p.827、「カロリー」、熱化学カロリー(calth )は、4.184 J と評価される。(執筆者は高田誠二)
- ^ calorie IUPAC, Gold Book
- ^ THE ADOPTION OF JOULES AS UNITS OF ENERGY prepared by FAO、第5段落 The "Thermochemical calorie" was defined by Rossini simply as 4.1833 international joules in order to avoid the difficulties associated with uncertainties about the heat capacity of water (it has been redefined as 4.1840 J exactly).
- ^ "Does the history of food energy units suggest a solution to "Calorie confusion"?" Hargrove, James L (2007). Nutrition Journal. 6 (44): 44. doi:10.1186/1475-2891-6-44. PMC 2238749. PMID 18086303. Abstract "The Calorie (kcal) of present U.S. food labels is similar to the original French definition of 1825. The original published source (now available on the internet) defined the Calorie as the quantity of heat needed to raise the temperature of 1 kg of water from 0 to 1 °C."
- ^ a b c NIST Guide for SI: Factors for Units Listed Alphabetically
- ^ 日本食品標準成分表2015年版(七訂)
- ^ 日本食品標準成分表2015年版(七訂) 第1章 説明 (PDF) 2 日本食品標準成分表2015年版(七訂)、2) 収載成分項目等、(3) エネルギー、p.7、「エネルギーの単位については、キロカロリー(kcal)単位に加えてキロジュール(kJ)を併記した。また、kcalからkJへの換算はFAO/WHO合同特別専門委員会報告6) に従い次の式を用いた。 1 kcal=4.184 kJ」
- ^ 第 9 回 CGPM, 1948 年 決議 3 SI文書第 9 版 (2019) 国際単位系(SI)日本語版、p.128-129、3. 熱量の単位はジュールである。備考:熱測定の実験結果は、できるだけジュールで表すことが要請される。実験が水の温度上昇との比較で行われれば(そして、何らかの理由でカロリーという単位の使用が避けられないならば)、ジュールへの換算に必要な情報が提供されなければならない。国際度量衡委員会は(測温及び測熱)諮問委員会の助言を受けて、水の比熱についてなされた実験から得られる最も正確な値を、ジュール毎度の単位で表す表を作成すべきである。
- ^ 日本工業規格JIS Z8202-4:2000(ISO 31-4:1992) 量及び単位−第4部:熱 附属書 B(参考)参考に示すその他の単位,特に換算率に関する単位、p.11
- ^ a b 日本工業規格JIS Z8202-4:2000(ISO 31-4:1992) 量及び単位−第4部:熱 附属書 B(参考)参考に示すその他の単位,特に換算率に関する単位、p.11
- ^ a b 世界食料機関 (FAO)「The Adoption of Joules as Units of Energy」
- ^ “CJK Compatibility” (2015年). 2016年2月21日閲覧。
- ^ “The Unicode Standard, Version 8.0.0”. Mountain View, CA: The Unicode Consortium (2015年). 2016年2月21日閲覧。
- 1 カロリーとは
- 2 カロリーの概要
- 3 過去の様々な定義
- 4 符号位置
カロリーと同じ種類の言葉
- カロリーのページへのリンク