カラス 生態

カラス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/21 03:04 UTC 版)

生態

ハシブトガラスの場合、翼長は32–39cm。

ある程度の社会性を持っており、協力したり、鳴き声による意思の疎通を行ったりしている。遊戯行動(電線にぶら下がる、滑り台で滑る、雪の斜面を仰向けで滑り降りるなど)をとることも観察されている[7]4色型色覚で色を識別でき、人間と同じRGBに加えて紫外線も識別できる。人間の個体を区別して認識する。「#知能」で詳述する。

食性

雑食性で、生ゴミや動物の死骸をついばんでいるところがよく目撃される。都市部では食物を得るためにゴミ集積所を荒らすという行動や、農耕地では農作物を食害するという行動が問題となっている。その他にも昆虫類、小動物(小型哺乳類、鳥類の卵や雛、爬虫類両生類ザリガニなど多数)、植物の果実種子、動物の糞なども食べる。ハシブトガラスは動物食傾向、ハシボソガラスは植物食傾向が強い。獲得した食物を物陰に隠し、後で食べるという貯食行動も行う。

日本では、ゴミ集積所に防鳥ネットなどカラス対策が実施されたほか、罠による捕獲や巣の除去といったヒトによる駆除、さらに天敵である猛禽類の都市部緑地への進出もあり、東京都心ではカラスの生息数が2000年頃をピークに減っている[8]

繁殖・営巣

針金ハンガー入りの巣

繁殖期は春から夏で、一夫一妻制で協力して子育てを行う。抱卵期間は20日前後、巣立ちまでの期間は30〜40日程度。産卵数は2〜5(ハシブトガラス)ないし3〜5(ハシボソガラス)程度である。

巣は樹上に小枝を組んで作るが、最近では電柱や看板などに営巣することもあり、また巣の材料には針金プラスチックなど様々な人工物を利用するようになっている。電柱送電塔に針金類で営巣した場合、しばしば短絡の原因となり、問題となっている。

営巣期間中は縄張り意識が強く、不用意に巣に近づいたもしくは巣を見つめた人間や動物の個体を敵対者として認識・記憶し続け、威嚇・攻撃行動が見られる。

  • 威嚇は、最初は鳴き声によって威嚇し、次には威嚇行動として、後方から相手の頭を狙って1メートル以内まで舞い降りサッと上昇する行動を行い、遠くへ立ち去るまで数百メートルに亘り背後から追跡し繰り返す[注 2][注 3]
  • 攻撃の場合は、多くは追跡威嚇行動が攻撃化し、「後方から舞い降りて頭を蹴りつけるか、頭髪をつかんで引っ張る」というものであり、怪我をした例は全体の17%であったという報告がある[9]

群れの形成

住宅地の空き地に群れるカラス

巣立ち後も2–3ヶ月程度は家族群れを組んで生活する。

成鳥はつがいでほぼ一年中固定された縄張りを持つが、若鳥は群れで行動する。

繁殖中のつがいは巣の周辺でねぐらをとることが多いが、それ以外の個体は夜間人が立ち入ることのないよく茂った林や竹林に集団ねぐらをとる。近年では、公園の分布や面積に偏りのある都市ほど大群でねぐらをとる事例が多く発生している。

知能

筒にある餌を棒で取り出す様子

前述のように昔から知能の高い動物として知られており、イソップ寓話には、瓶の中で水に浮く餌を取り出すために石を沈めて水位を上げる『カラスと水差し』という話が伝承されている。具体的には、以下のような例が観察されている。

ハシボソガラスが硬くて自分の嘴では砕けない食べ物を飛行場の滑走路防波堤、建物の屋上などの硬い場所に落として割る行動が見られる[注 4]。広島県では、カキ貝を落とす例もある。

道路にクルミを置き、自動車に轢かせて殻を割るという行動が、日本の都市でみられている[注 5]。1996年、神奈川県で鉄道のレール上にハシボソガラスが石を置くという事件が頻発した。「JRの人間に巣を撤去されたことに対する復讐として、列車転覆させようとしたのでは」と言われたこともあったが、実際は敷石(バラスト)の下にパンを貯食した際に、くわえ上げた石を偶然レール上に置きそれを放置することで起きていたというのが真相であった[10]

カラスが、と足の指を器用に使い、公園の水道の蛇口をひねって水を飲む様子が観察されている[11]カレドニアガラスのように、小枝を加工して道具を作る例もある[12][13]。雪の上でソリすべりをする[14]

の時期から人間に飼育された個体は、キュウカンチョウでは人間の言葉や犬の声などを真似ることもできるようになる[15][16]。アメリカガラスが9年半人間の顔を覚えていた事例もある[17]。また、ハシブトガラス[18]は人間の男女の顔写真を識別できる[19][18]

ワタリガラスは食べ物の存在場所の情報を夜に仲間と共有する[20]。カラスが少なくとも41語の言葉を持つことを利用し、日本の企業がカラス撃退装置を作っている[21]。「カラス語」を研究している国立総合研究大学院大学神奈川県葉山町)の塚原直樹助教によると次のようなカラス語がある[22]

  • 「カ~カ~カ~」:カラスが餌を見つけ、仲間を呼び寄せる時に鳴く声。カラス語では「こっちに食べ物があるよ」という意味。
  • 「カッカッカッ」:などの天敵が近づいてきたことを仲間に知らせたり、警戒する時に鳴く声。カラス語では「危険だよ」という意味。
  • 「クア~クア~」:ねぐらに帰ろうとするカラスが発する鳴き声。「安全だよ」という意味。

天敵

カラスは大型鳥類のため天敵はあまり存在しないが、オオタカの中にはカラスを頻繁に捕食する個体が存在し[23]、その他の猛禽類キツネなども稀にカラスを捕食することがある。だが、カラスはこれらの天敵から逆に獲物を横取りすることも多く、また猛禽類に対しては頻繁にモビングを行う[24]。モビングする種はモビングしない種よりも長生きすると言う[25]。モビングされた猛禽類は狩りの成功率が減るため、移動していく。モビングによって豪胆さを見せたカラスは序列を高め、伴侶を見つけやすくなる可能性が指摘されている[25]

卵や雛はアオダイショウなどに捕食されている可能性もある[23]。ほかには、フクロウが実際にカラスの雛を捕食した例もある[10]。このほか、同種のカラスが他の卵や雛、衰弱した個体を共食いすることも多い[26][23]


  1. ^ カラスを「カラス属およびそれに近縁な属」としている『日本大百科全書』(浦本昌紀)は、カラス属に近縁な属としてベニハシガラス属・ホシガラス属、近縁な可能性がある属としてサバクガラス属・ヒメサバクガラス属を挙げている。ソデグロガラス属については言及がない。
  2. ^ テレビ番組等ではこれを「攻撃」と表現することがあるが、実際は威嚇の一種である。
  3. ^ 背後から頭上へ舞い降りる威嚇行動を抑止するには、50cm以上ほどの目立つ棒状等の物を頭部より高く上へ突き出すことで、接近接触の抑止効果があるとされる。
  4. ^ カラス以外では、北海道東部漁港に生息するオオセグロカモメにも、同様の方法で貝を割る行動が見られる。
  5. ^ Wild crows inhabiting the city use it to their advantage - David Attenborough YouTube - BBC Wildlife。日本の都市で車を利用してクルミを割る様子。急降下する際のハシボソガラスの羽の様子もよく分かる。
  1. ^ 安部直哉「カラス」 『世界大百科事典』(2009年改定新版)平凡社、2009年。 
  2. ^ 宇田川竜男「カラス」 『ブリタニカ国際大百科事典』(改定第2版)TBSブリタニカ、1993年。 
  3. ^ 浦本昌紀, “カラス”, 日本大百科全書, Yahoo!百科事典, 小学館, http://100.yahoo.co.jp/detail/%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%82%B9%EF%BC%88%E9%B3%A5%EF%BC%89/ [リンク切れ]
  4. ^ 浦本昌紀「カラス」 『万有百科大事典 20 動物』小学館、1974年、184-185頁。 
  5. ^ Bonaccorso, E.; Peterson, A.T. (2007), “A multilocus phylogeny of New World jay genera”, Mol. Phylogenet. Evol.journal=Mol. Phylogenet. Evol. 42: 467–476, http://specify5.specifysoftware.org/Informatics/bios/biostownpeterson/BP_MPE_2007.pdf?q=Informatics/bios/biostownpeterson/BP_MPE_2007.pdf 
  6. ^ Gill, F.; Donsker, D., eds. (2010), “Vireos, crows, and allies”, IOC World Bird Names, version 2.5, http://www.worldbirdnames.org/n-vireos.html 
  7. ^ 唐沢孝一 『カラスはどれほど賢いか ― 都市鳥の適応戦略』中央公論新社中公文庫〉、2003年、191-206頁。 
  8. ^ 「都心のカラス なぜ減るの/20年で7分の1 駆除進み生ごみも減り」朝日新聞』朝刊2022年4月12日(科学・環境面)2022年4月30日閲覧
  9. ^ 山岸哲監修山階鳥類研究所編著 『保全鳥類学』京都大学学術出版会、2007年3月25日。ISBN 978-4-87698-703-0 
  10. ^ a b 樋口広芳、森下英美子 『カラス、どこが悪い!?』小学館小学館文庫〉、2000年、35,45-56頁。 
  11. ^ “【動画】水でも飲むカァ~ 蛇口回し、器用にゴクゴク”. 神奈川新聞. (2018年3月14日). https://www.kanaloco.jp/news/life/entry-27277.html 2022年8月30日閲覧。 
  12. ^ グラスの中のものを曲がった針金で持ち上げるカレドニアガラス YouTube
  13. ^ 天才職人!道具を作るカラスNHK番組『ダーウィンが来た! 〜生きもの新伝説〜
  14. ^ Ворона катается с горки Crowboarding (Crow Snowboarding Roof)”. YouTube (2012年1月9日). 2018年7月26日閲覧。
  15. ^ Anders (2017年4月14日). “「ハロー、帰ってきたよ!元気だった?」助けてくれた人間の家に毎年挨拶にやって来るカラスたち”. マランダー. http://marandr.com/15983011 2022年8月30日閲覧。 
  16. ^ カラス?わんわん鳴くカラス Amazing crow, YouTube, (2015-05-10), https://www.youtube.com/watch?v=fgjVJyqgaQQ 2018年7月26日閲覧。 [リンク切れ]
  17. ^ “カラスが仲間の葬式をするって本当?”. ナショナルジオグラフィック. (2015年). https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/a/100600040/ 2018年7月26日閲覧。 
  18. ^ a b “カラス:顔の輪郭基に、男女を識別 エチオピア人留学生、米科学雑誌に発表――世界初”. 毎日新聞』東京夕刊. (2010年11月11日) 
  19. ^ カラス、人の男女見分けます 宇都宮大が実験”. 日本経済新聞 (2010年10月30日). 2019年8月7日閲覧。
  20. ^ スー・ドナルドソン、ウィル・キムリッカ 『人と動物の政治共同体』尚学社、2016年、245頁。 
  21. ^ 椎名堯慶 (2011-11). “カラスの勝手にはさせません”. 産学官連携ジャーナル. https://sangakukan.jst.go.jp/journal/journal_contents/2011/11/articles/1111-04/1111-04_article.html 2018年7月26日閲覧。. 
  22. ^ 和田幸一 (2017年10月30日). “迷惑カラスをカラス語でご案内”. NHK山形放送局. オリジナルの2018年9月18日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180918123551/https://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2017_1030.html 2022年8月30日閲覧。 
  23. ^ a b c 柴田佳秀 『カラスの常識』子どもの未来社〈寺子屋新書〉、2007年、27-28,88-91頁。 
  24. ^ 大田眞也 『カラスはホントに悪者か』弦書房、2007年、105-106,156-170頁。 
  25. ^ a b ジョン・マーズラフ、トニー・エンジェル 『世界一賢い鳥、カラスの科学』河出書房、2007年、210頁。 
  26. ^ 松田道生 『カラスはなぜ東京が好きなのか』平凡社、2006年、111-113頁。 
  27. ^ 「カラスの肉は栄養豊富? 帯畜大の食用化研究: 北海道」『読売新聞』2003年8月8日
  28. ^ a b c “カラス:フランス料理に登場 美味で役立つ?”. 毎日新聞. (2011年11月12日). http://mainichi.jp/select/wadai/news/20111112k0000e040047000c.html 2011年11月12日閲覧。 
  29. ^ カラスの肉は美味しいのか? 実際に食べてみた。『日刊SPA』2013年12月17日
  30. ^ “カラス食べる文化守れ「軟らかく甘み」特産品に 茨城”朝日新聞デジタル(2014年4月5日)2015年1月21日閲覧
  31. ^ a b c 岩井宏實『日本の伝統を読み解く:暮らしの謎学』(青春出版社、2003年、ISBN 4413040686)63-64頁
  32. ^ 松井高志編「野球“きまり文句”小辞典ココログ(2005年12月8日)
  33. ^ 21世紀研究会『食の世界地図』(文藝春秋)226頁
  34. ^ 月夜烏”. デジタル大辞泉. コトバンク. 2015年10月4日閲覧。






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