カボチャ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/06 10:42 UTC 版)
食材
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 205 kJ (49 kcal) |
10.9 g | |
食物繊維 | 2.8 g |
0.1 g | |
飽和脂肪酸 | 0.01 g |
多価不飽和 | 0.03 g |
1.6 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(8%) 60 µg(6%) 700 µg |
チアミン (B1) |
(6%) 0.07 mg |
リボフラビン (B2) |
(5%) 0.06 mg |
ナイアシン (B3) |
(4%) 0.6 mg |
パントテン酸 (B5) |
(10%) 0.50 mg |
ビタミンB6 |
(9%) 0.12 mg |
葉酸 (B9) |
(20%) 80 µg |
ビタミンC |
(19%) 16 mg |
ビタミンE |
(12%) 1.8 mg |
ビタミンK |
(25%) 26 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(0%) 1 mg |
カリウム |
(9%) 400 mg |
カルシウム |
(2%) 20 mg |
マグネシウム |
(4%) 15 mg |
リン |
(6%) 42 mg |
鉄分 |
(4%) 0.5 mg |
亜鉛 |
(3%) 0.3 mg |
銅 |
(4%) 0.08 mg |
マンガン |
(5%) 0.10 mg |
他の成分 | |
水分 | 86.7 g |
水溶性食物繊維 | 0.7 g |
不溶性食物繊維 | 2.1 g |
ビオチン(B7) | 1.7 µg |
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[43]。別名: とうなす、ぼうぶら、なんきん 廃棄部位: わた、種子及び両端 | |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
食材としての旬は夏場の5 - 9月といわれ、夏野菜の一つに数えられる[44][2]。新鮮でおいしいカボチャの見分け方は、ヘタが良く乾燥していて、その周囲がへこんでいるものが完熟しており、皮がかたく、ずっしりと重みがあるものが良品とされる[44][2]。また、カット品であれば、果肉が厚くて色が濃い物がよく、種がふっくらとしているものが完熟している[44][2]。
ウリ類の中では最も栄養価が高く[34]、β-カロテンなどがバランス良く含まれているのが特徴で[44]、皮は硬いものの、長時間煮ることで柔らかくして食べることもできる。サツマイモと同様に、カボチャにもデンプンを糖に分解する酵素が含まれているため、貯蔵によって、あるいは、低温でゆっくり加熱することによって甘味が増す。したがって、収穫直後よりも収穫後、約1か月頃が糖化のピークで食べ頃となる。保存性に優れ、常温で数ヵ月の保存が可能な数少ない野菜ではあるものの、保存がきくのは切っていない場合で、切って果肉が空気に触れると数日で腐ってしまう。また、切っていなくても、湿度の高い環境では表面の微細な傷が元で、外皮から腐る場合もある。
種子(パンプキンシード)も食品として流通しており、ナッツとして扱われる。パンや洋菓子のトッピングとして用いられることが多い。メキシコにはカボチャの種子をすりつぶしたソースで肉や野菜を煮込んだ、ピピアン (pipián) と言う伝統料理がある。また、種子から食用油(パンプキンシードオイル)が取れる。
アメリカ合衆国ではシナモンやクローブなど、パンプキンパイに用いる香辛料とカボチャを使って醸造したビールが生産されている。日本では北海道での生産量が多い。
同じウリ科のキュウリのように、未熟果を利用する品種もある。代表的なものにズッキーニ(ペポカボチャ系)やエホバク(ニホンカボチャ系)がある。
栄養
炭水化物が多く、エネルギーは可食部100グラム (g) あたり西洋カボチャが91 kcal、日本カボチャで49 kcalで、野菜の中でもカロリーは高めである[44][注 2]。カボチャのエネルギー源は糖質で、葉物野菜の数倍にもなり、特にセイヨウカボチャは、果物に匹敵するほどの糖質を含んでいる[29]。このため、カボチャは緑黄色野菜であると共に、穀類や芋類の仲間に分類されることもある[29]。
β-カロテンをはじめ、抗酸化作用のあるビタミンC・ビタミンEが突出して多く含まれており、ビタミンB群、カリウム、食物繊維もバランス良く含まれている[44]。β-カロテンは、カロテノイドとよばれるカボチャの黄色い色素成分のひとつで、体内で吸収されるとビタミンAに変換される[44]。ビタミンA・C・Eは、俗に「ビタミンエース」(ビタミンACE)とよばれ、抗酸化作用によって活性酸素を取り除き、免疫機能を高める効果があると言われている[44]。ビタミンCは、俗に「美容ビタミン」とも呼ばれ、皮膚や粘膜を健康に保ち、皮膚のしわやシミを防ぐ効果があり、風邪の予防にもよいといわれる[33][31]。ビタミンEは、俗に「若返りのビタミン」ともいわれ、毛細血管の血流を促し、老化を防ぐ働きがあるといわれている[33]。ミネラルではカリウムが豊富で、ナトリウムを体外へと排出する働きにより血圧を下げる作用がある[29]。また食物繊維もかなり多く含まれるほうで、食後の糖質の吸収速度を遅くして、急激な血糖値の上昇を抑制する作用があり、血液中のコレステロールや中性脂肪を下げる働きもする[29]。
栄養価の高さでは野菜の中でもトップクラスで、日本では昔から「冬至にカボチャを食べると風邪をひかない」といわれるほど群を抜いている[44]。カボチャ100gで、ビタミンA・C・Eの1日必要摂取量の約半分を摂ることができ、β-カロテンが多いニンジンと比べても、一度に量をとりやすいため、栄養の供給源としては理想的な野菜とも言える[44]。また食材としても、野菜としては1回あたりの摂取量を多く摂ることが可能という特徴がある[29]。葉物野菜類のビタミンCは、長期保存によって減少してしまうが、カボチャの場合あまり減少しない[29]。カボチャのβ-カロテンやビタミンEは熱に強く、油と合わせて調理すると、より吸収率が高まる[33]。
調理
皮がかたくて切りにくいので、ヘタもまわりから包丁の先を溝に沿って入れて切り分ける[2]。ふつう種とわたは取り除く[7]。煮物など味をしみ込ませたいときは、皮を部分的に剥く[2]。煮物にするときに皮をすべて剥いてしまうと、煮崩れしやすくなる[7]。切り方は、放射状に縦に薄く切った櫛形切りにして天ぷらやソテーに使ったり、太い櫛形切りから細断して角切りにして煮物などに使う[2]。
日本かぼちゃは、水分が多くてねっとりした肉質で、煮物などに向いており[31]、出し味を利かせ薄味に仕立てると、カボチャ本来の味が生かせる[7]。また、粉質の西洋かぼちゃは「栗かぼちゃ」ともよばれ、加熱すると甘味が強くほっくりした食感がある[31]。
甘みの強い品種は菓子作りにも向いており、パンプキンパイやかぼちゃパン、南アメリカのフランや、タイの「サンカヤー・ファクトン」などのプリンなどに加工される。
フランスではスープの材料として使われることが一般だが、南部ではパイやパンに料理される。アルゼンチンでは中をくりぬいたカボチャにシチューを入れる。
保存
カボチャは野菜の中でも保存性が高く、貯蔵しておいて冬場に食べることもできる[32]。果実を丸ごと保存するときは、新聞紙などで包んで、常温(10℃前後)で風通しの良い場所に置いておくと、1 - 2か月ほど保存できる[33][7]。カットした場合は、内側から傷むため、種とわたを取り除いた後、ラップを密着させて包み冷蔵保存すれば3日 - 1週間程度は持つ[33][2][7]。量が多くて食べきれないときは、加熱して潰してから使う分量に分けてラップで包んで冷凍保存すれば長期保存が利き、すぐにコロッケやスープにして使うことができる[33]。
注釈
出典
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