カザフスタン
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交通
道路
鉄道
旧ソ連の一部であったカザフスタン国内の鉄道は1,520mmと広軌であるために今でも頻繁に国際列車が運行され、ソ連時代からのエレクトリーチカや客車が各国で使用されており、旧ソ連政府の影響により電化率は高い。
カザフスタンの1,520mmと中国の1,435mmとの間で軌間変換をするために、カザフスタン鉄道は新型車両としてスペインのタルゴの軌間可変車両を導入した。
近年ではアクタウと、カスピ海対岸でアゼルバイジャンの鉄道と連絡する新バクー港を結ぶ鉄道連絡船経由で新ユーラシア・ランドブリッジを構成している。
航空
科学技術
カザフスタンは2011年2月に科学法を採択してから、科学開発を急速に推し進めている。傍ら国際科学技術センター(ISTC)の本部がナザルバエフ大学に置かれている。
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国民
国土の大部分は砂漠や乾燥したステップで占められており、そのため人が住めるところは少なく、人口の大半は首都と一部の地域に偏在している。2022年の人口は1,920万人程度。
住民
構成はカザフ人が69.6パーセント、ロシア人が17.9パーセント、ウズベク人が3.3パーセント、ウクライナ人が1.5パーセント、ウイグル人が1.3パーセント、タタール人が1.0パーセント、その他5.3パーセント(2022年)となっている[6]。
「その他」の中には朝鮮系が入っているが、彼らの多くは現時点で3、4世代目となっており、民族的教育も育まれることがないため、母語である朝鮮語を話せない場合が多い[注釈 2][38]。
ソ連時代の名残りにより、国内では現在もロシア語風の姓名を用いる世帯が多い。
現在、ロシア人はロシアへの移住により減少傾向にある[39]。以前はカザフ人よりロシア人の割合の方が高かったが、独立以降多くのロシア人が転出し、カザフ人の割合が徐々に増加し逆転した。
さらにカザフスタン政府が在外カザフ人の帰還を進めており、1991年から2014年1月1日までに94万4,500人のカザフ人が移住した。在外カザフ人は本国のカザフ人と比べ、よりカザフ文化を受け継いでいるが、それは本国はソ連時代にロシア化が進んだためである[40]。しかし、それに反してソ連時代の名残りが根強いため、本国のカザフ人同様に人名にはロシア語風の姓名を用いる割合が非常に高いことが特徴ともなっている。
言語
憲法ではカザフ語が国家語、カザフ語とロシア語が公用語と定められている。カザフ語は国語とされるが、カザフスタンにおいてカザフ語を理解ができるのは全人口の83.1パーセントに過ぎない。一方、ロシア語はロシア系のみならず、ソ連時代から95パーセントの住民が使用しており[41]、異民族間の交流語として、カザフ語と同様の地位を与えられている。とりわけ都市部においてはロシア語を母語とし、カザフ語を全く話せないカザフ人も多いなど、カザフ語よりもはるかに広く使われているのが実情である。
たとえば外国映画は、主にロシアで作られたロシア語吹き替え版が上映されている[42]。これに対し2012年、文化法改正法が施行され、外国映画にカザフ語吹き替えが義務づけられた。カザフスタンはロシア系住民が約20パーセントと中央アジアでは最多であるにもかかわらず、この法律により、カザフスタンでロシア映画を原語で上映できなくなる可能性があった。しかし、この法律は吹き替えコストの問題で空文化し、カザフ語吹き替え映画は政府の資金援助を受けた12本ほどにとどまった[42]。そのため2016年、カザフ語字幕でもよいと緩和した上で改めて義務づけられた[42]。
カザフ語に関しては、同じ中央アジアの旧ソ連国家であるウズベキスタンやトルクメニスタンがウズベク語やトルクメン語に行ったような、キリル文字からラテン文字への切り替えを進めており[43]、2021年に看板のロシア語併記義務を撤廃する法律が議会で可決された。トカエフ大統領は脱ロシア語に関しては急ぐ必要がないとブレーキをかける意向を見せている[44][45]。当然ながら、カザフ語とともに公用語である国内では最も広範囲に使われているロシア語はキリル文字表記のままであり、公用語から除外されるわけでもない。
カザフスタンはヴォルガ・ドイツ人の移住・追放先の一つであったため、現在でも全人口の1.1パーセントほどにあたる18万人がドイツ語を話す。
婚姻
婚姻時に、婚姻前の姓を保持する(夫婦別姓)か、共通の姓(夫婦同姓)か、複合姓に改姓することから選択することが可能である。すでに複合姓である場合にさらに追加することはできない。改姓した場合、離婚時には、婚姻時の姓を保持することも元の姓に戻すことも可能である[46]。
カザフスタン人の婚姻適齢は男女ともに18歳以上、女性に関しては妊娠や出産など正当な理由がある場合は16歳以上で婚姻可能である。人口統計資料(2018)によると平均初婚年齢は男性27歳で女性は24.3歳(2010年)となっている[47][48]。
婚姻適齢の引き下げは、婚姻を締結しようとする者、その者の親、または後見人の申し立てが必要である。
宗教
2009年の調査では、イスラム教が70.2パーセント、キリスト教が26.2パーセント、無宗教が2.8パーセントとなっている[49]。
なお、イスラム教徒が多数を占めるものの同国においてそのシャリーア(イスラム法による戒律)は緩く、イスラム教では本来禁忌である飲酒なども公然と行われている。
教育
義務教育は6歳からの8年間と定められている。国民の識字率は国民全体の99.8パーセントとなっている[50]。
国内最大の大学はナザルバエフ大学である。なお、カザフスタンは中央アジアにおいて国立大学の数が非常に多く、国際学校も豊富に揃っていることが特徴である。
保健
国内における全ての専門分野の医師の数は50.6千人(国民1万人辺りにつき約33.9人)となっている。
社会
家族
カザフ人は父系の出自を大きなアイデンティティとしている。父系の氏族「ルゥ」に帰属を持ち、44の主要なルゥがある。このルゥは民族の成立以前からあるものもある。結婚後もルゥは変わることはない。ソ連時代は家父長制であると批判されたが、集団化への抗議による家畜屠殺、それに伴う膨大な餓死者(一説には220万人)も発生し集団化は見直され、ルゥを元にした組織となった[51]。
注釈
出典
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