カキ (貝) カキと食中毒

カキ (貝)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/16 16:13 UTC 版)

カキと食中毒

古くから食べられてきたカキであるが、その一方で「あたる」食品(食材)としても知られている。カキの食中毒が注目されるのは非加熱状態で食べられる機会が多いことと関係している。

貝の身を食べることに関して、アサリやハマグリ、シジミサザエなどは加熱してから丸のまま、ホタテ貝柱で生で食べることはあるにしても、丸ごとでは焼いたり茹でたりしてから食べ、アオヤギの小柱は軍艦巻などにしたり、舌の部分は湯振りしてから食べるのが基本等々だが、カキに関しては調理方法や食べ方については生食のケースが多いため、十分注意する必要がある。

現代の日本国内で流通している生食用のカキは、食中毒を極力回避するために生産・流通段階でいくつかの対策がとられている[34]。例えば、生食用として販売されるカキには加工基準が設けられ、カキそのものを対象として規格基準が設けられている。さらに、保存基準、表示基準も規定されている[35]。具体的には、加工基準としては、食品衛生法或いは厚生労働省通知に基づき

  • 定期的な貝毒検査の実施[36]
  • 大腸菌群最確数が一定以下の海域で採取されたもの
  • それ以外の海域で採取されたものであって、大腸菌群最確数が一定以下の海水、または塩分濃度3%の人工塩水を用い、かつ、当該海水若しくは人工塩水を随時換え、浄化したもの

のどちらかであることが規定されている[37]。また、規格基準としては、細菌数E.coli大腸菌)最確数、V. parahaemolyticus腸炎ビブリオ)最確数も規定されている。これらに加えさらに厳しい指導基準を各生産地域が設けている場合もある[38]。なお、生食用カキの上記加工基準を満たすために、紫外線殺菌された海水中や人工海水などを充分に循環させた環境下にて絶食状態として数日間飼育される場合がある。この場合、貝表面や貝内部に取り込まれた細菌の大部分を貝内から排出させほぼ無菌状態になることとは引き替えに、同様の処理がされていないものに比べ身が痩せてしまうこともあるので、加熱処理用のものよりも味が劣ることがある[39]

現代において、食中毒症状を引き起こす原因としては貝毒、細菌腸炎ビブリオ大腸菌など)とウイルス(特にノロウイルス)がよく知られているが、どの原因も生育環境(海水)に由来するものであり、二枚貝特有の摂餌行動などによって貝内部、特に消化器官(中腸腺など)に取り込まれ濃縮されるものである。

貝毒以外の食中毒の予防のために留意すべきことは、

  • 十分に加熱することで食中毒を回避できる
  • カキを含むいずれの二枚貝も、同様の処理で食用にする限り食中毒の危険度に関しては変わらない

という点である。

貝毒

貝毒は貝が捕食する海水中の有毒プランクトンを蓄積したものである。対策として、生育海水中の植物プランクトンの種類および貝に含まれる毒が定期的に検査されている[36](参照:マウスユニット)。有毒プランクトンの発生し易い時期は3月から5月。広島県立総合技術研究所の研究によれば、濾過海水中で一定期間飼育することで、毒の量を規制値以下に減毒できるとしている[40]

細菌

細菌は海水中に常時一定数存在するものであり、ごく少量であれば食中毒症状を引き起こすことはない。しかし、気候や水質、保存方法などによっては細菌が大量に増殖することもあり、生食する際には注意が必要である。なお、現代の日本国内の生食用カキの場合は上述のように流通段階では十分な対策が取られているが、実際には、食中毒原因菌である腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)[41]、糞便性大腸菌群( Escherichia coli )[42]が検出される事があり[43]、残った少量の細菌を増殖させてしまうような環境で保存することの方が危険であると指摘されている[43]

腸炎ビブリオ
20℃付近でおよそ10分間に1回と活発に分裂・増殖するが、15℃以下では増殖は抑制される。また、経口摂取によって感染症状を引き起こす際には生菌100万個程度が必要であるとされる。
これらのことから、20℃以上の環境に数時間置いておくだけで食中毒を引き起こす可能性があると言えるので、家庭で調理する際には十分に注意されたい。夏期に海水温が20℃を超えるような時期はやはり食中毒の原因となりやすい。70度以上1分間の加熱でほぼ死滅するとされている。
大腸菌
一般的には37℃付近でおよそ30分に1回と活発に分裂・増殖する。紫外線照射海水や清浄海水などの循環によって同菌への対策がなされている。75度以上1分間の加熱でほぼ死滅するとされている。
赤痢菌
日本国内産についてはまず問題になることはないが、韓国では2001年にカキが原因で1,000人規模の罹患者を出した。この際、韓国産のカキが日本国内において、国内産として産地偽装され流通されていることが発覚した。
黄色ブドウ球菌
食品中で増殖し加熱しても分解されない耐熱性の毒素(エンテロトキシン)を産生する。

ウイルス

ノロウイルス
2000年頃より特に注目されている。ノロウイルス感染力は85℃以上で1分間以上加熱されることにより不活化するとされており、中心部まで十分に加熱することが重要とされる[44]
2001年-2003年の調査では、生食用カキの12.9%、加熱加工用カキの24.4%がノロウイルスで汚染されていた[45]
厚生労働省保健所は二枚貝を内臓も含めて、食す際には内部まで十分に加熱調理するように、また調理の際に使用した器具の十分な洗浄を呼びかけている。下水処理場では感染者の排泄物に含まれるウイルスを十分に除去できないため、排水が流入する養殖海域で養殖される貝類などから検出されることが多い。免疫のない者(1年以内に感染していない者や、先天的に免疫ができない者)、抵抗力が弱い老人や子供などはウイルス感染を起こし、激しい感染性胃腸炎を引き起こす。通常1-2日で治癒するが、乳児・高齢者は重症となることがある[46]
なお、ノロウイルスに関する情報として厚生労働省の公式サイト内にノロウイルスに関するQ&A[47]が用意されているので、こちらも参照されたい。
日本では報道により「ノロウイルスと言えばカキ」という印象が広まり、特に2006年から2007年にかけてノロウイルス感染報道があるごとにカキの売上が減少した。

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  5. ^ かき 環境省 せとうちネット
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  35. ^ 生かきの衛生的な取扱い 東京都福祉保健局
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  38. ^ みえのカキ安心確保の取り組みについて 三重県
  39. ^ 食品表示のおいしい読み方:/11 カキの「生食用」は新鮮なわけじゃない!? - 毎日jp(毎日新聞)
  40. ^ 高田久美代、高辻英之、妹尾正登「麻痺性貝毒により毒化したマガキのろ過海水中での蓄養による減毒」『日本水産学会誌』第74巻第1号、公益社団法人日本水産学会、2008年1月15日、 78-80頁、 doi:10.2331/suisan.74.78NAID 110006595212
  41. ^ 清水晃、尾崎潤一郎、河野潤一ほか、魚介類および食肉からの黄色ブドウ球菌の分離と性状 食品と微生物 Vol.8 (1991-1992) No.3 P.135-141, doi:10.14840/jsfm1984.8.135
  42. ^ 糞便系大腸菌群及び大腸菌について 食品分析開発センター
  43. ^ a b 飲食物の安全性に関する細菌学的研究(第7報)-食用カキを対象として- (PDF) 東京家政学院大学紀要 第47号 p.1-10
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  50. ^ 生かきの取扱いと届出制度”. 百貝万魚 東京市場の水産物安全情報. 東京都市場衛生検査所. 2008年12月30日閲覧。
  51. ^ 小曽戸洋「『日本薬局方』(15改正)収載漢薬の来源」『生薬学雑誌』第61巻第2号、2007年、 p.p.76、 ISSN 00374377NAID 40015616633
  52. ^ サザエであれば「ふんどし」と呼ばれる部分が相当する
  53. ^ 緑色をしたカキもあるがこれは餌の違いによるもので、あまり一般的ではない
  54. ^ 宮原桂 『漢方ポケット図鑑』源草社、2008年、194頁。ISBN 4-906668-62-3 





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