カエル 人間との関係

カエル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/12 10:10 UTC 版)

人間との関係

大型の種類は、世界各地で食用にされる。日本で「食用蛙」といえば、普通ウシガエルのことを指す。肉は鶏肉のささみに似ており、淡白で美味である。中国をはじめ、欧州など世界的には、カエルを食べることは特別なことではない。ただし、欧州の蛙食の歴史に於いて先駆的であったフランス人は、後続の国々から「カエル喰い」と揶揄を込めて呼ばれていた。現在でも英語で frog eater (フロッグ・イーター)やJohnny Crapaud(ジョニー・クラポー。クラポーは仏語でカエル)はフランス人に対する蔑称であり、frog だけでフランス人を指すこともある。現代フランス料理の祖といわれるオーギュスト・エスコフィエは、若き日の英国王エドワード7世に自慢のカエル料理を提供し賞賛を得たが、材料を問われて言葉につまり、「頭が三角になる思い」をしたという。後年、エスコフィエはロンドンの「カールトン・ホテル」で評判となった冷製料理「妖精・オーロラ風」がカエル料理だったことを明かし、イギリス食通のあいだに騒動を巻き起こした[7]。食べ方としてはソテーパン粉焼きなどがある。もっぱら腿が用いられる。

中国においてもっとも一般的な食用蛙はアカガエルの一種で、中国語では「田鶏(ティエンジー)」と呼ばれる。冬に食べることが多かったが、現在は養殖されており年中食べることができる。またエジプトなどから大型のウシガエルも移入されて養殖されている。安徽省福建省などでは渓流に住む「石鶏 (シージー、Rana spinosa)」も美味と珍重されている。食べ方としては手足の部分の唐揚げが最も一般的。上下を真っ二つに切って、内臓を取り出し、スープにする場合もある。また、華南ではの具としても利用される。

なお、人へも寄生する広東住血線虫などが寄生している場合もあるので、生食や野生の捕獲喫食は危険である。

モデル生物としてカエルが利用されることも多い。発生生物学や生理学の部門での利用が有名である。特にアフリカツメガエルはよく実験目的で飼育される。脳を切除して脊髄反射を見る実験は「脊髄ガエル」という名がつけられている。 解剖の実習では蛙が定番であるが、日本の理科教育においては次第に軽視される傾向にある。

文化

鳥獣戯画

日本大和民族)におけるカエルは、棲息に好適な水辺や水田が多かったことから、常に人にとって身近な存在となっている。古来より冬眠から覚めて活発に行動するからにかけての景物とされ、『万葉集』以来、特に鳴き声を愛でて詩歌に詠む。 例えば山上憶良が「あまぐものむかぶすきはみ たにぐくのさわたるきはみ」(万葉集巻第五)と詠んだように、上代では谷間で聞かれる鳴き声から、ヒキガエルを「たにぐく(多爾具久・谷蟇)」と呼び[8]、『古事記』にも葦原中国の神の一柱として多邇具久が登場する。 和歌での「かはづ」は、主に鳴き声が美しいことで知られるカジカガエルのことを指すが、この語は平安初期ごろから、混同されてカエル一般を指すようになった。俳諧においては、カエル一般を指すと思われる用例が増える。芭蕉の「古池や蛙飛び込む水の音」、一茶の「やせ蛙まけるな一茶これにあり」等の句は特に有名。「蛙」は春の季語で、これは初蛙のイメージから。「雨蛙(あまがへる)」「蟇/蟾蜍(ひきがへる)、蟾(ひき)、蝦蟇(がま)」「河鹿(かじか=カジカガエル)」は夏の季語である[注釈 1]歌舞伎では、アカガイの貝殻を2枚こすり合わせることでカエルの鳴き声を表現する[10][11]

鳥獣戯画平安時代末期)にも、サルウサギとともに、人間に擬せられたカエルの姿が、生き生きと描かれている。また、草双紙江戸時代)では妖術使いの児雷也が大蝦蟇(おおがま=空想上の化け物)に乗って登場する等、様々な表現のモチーフとなっている。

童謡『かえるの合唱』は、ドイツ民謡を音楽家の岡本敏明が日本語に訳詞したもの。

昭和40年代にはカエルを主人公とした漫画およびアニメーションど根性ガエル』や、着ぐるみ劇『ケロヨン』が人気を博した。

また、サンリオは『けろけろけろっぴ』という子供カエルのキャラクターを創造した。宮沢賢治は寓話『蛙のゴム靴』で、西洋から渡来のゴム長靴を晴れた日にも履き、得意になっている文明開化の明治紳士を風刺する中篇を書いている。21世紀にあっても、百田尚樹の風刺小説『カエルの楽園』のモチーフに使用されている。

貝原益軒の『大和本草』によれば、カエルの名は他の土地に移しても必ず元の所に帰るという性質に由来すると記述されている。

日本では、「お金が返る(カエル)」として、カエルのマスコットを財布の中に入れておく習慣がある。似たような扱いで、新しいものでは、1985年NTTが出した「カエルコール」がある。帰るときに家に連絡を入れよう、というものだが、「今から、カエル」というテレビのコマーシャルが人気を呼んだ。

一方、北海道アイヌ民族の文化においては、カエルは不吉な生き物とされていた。家にカエルが入り込めば、すかさず炉の熱灰をかけて退治したという。水田耕作をおこなわなかったアイヌにとって湿地帯は利用価値の低い土地で吸血虫の住処であり、そこに住むカエルも同様に忌み嫌われたものらしい[12]

中国では道教青蛙神信仰の影響から後ろ脚が一つのガマガエルが縁起物として飾られている場合がある。

南米のいくつかの地域では、カエルは幸運(特に金運)を招くものと考えられている。このため、カエルをペットのように飼ったり、カエルの置物を家に飾ったりすることがある。また、口を開けたカエルの置物に向かってコインを投げ、うまく口の中に入れることを競う遊びも行なわれている。

西洋においてもカエルはよく親しまれている。ギリシャ古喜劇の『』では、カエルが船をこぐディオニューソスを半ば冷やかしながら歌い続けるシーンからそのタイトルをとっている。 日本語ではカエルという語はカエル目全般を指す総称だが、ヨーロッパ言語では愛すべき生き物としてのカエル(frog,frosh,grenouileなど)と、醜い生き物であるヒキガエル(toad,kröte,crapaudなど)やガマガエル(unke)を区別しており、後者はしばしば人に対する蔑称として使用される[8]。中世キリスト教ではカエルは死や吝嗇など不浄のシンボルとされたが、死後の世界では魂が水底と地上を循環するという民間伝承を持つドイツでは、水との親和性や冬眠することなどからカエルは人の魂のメタファーとされた。

ノーベル賞の授賞式では参加した学生と受賞者がカエルのようにジャンプする「蛙跳び」の儀式があり、これは受賞者のさらなる飛躍を願ってのことである由。受賞者の参加は自由意思によるが、参加した受賞者には「カエル勲章」が授けられる。またアメリカ合衆国では地域によってウシガエルの三段跳び競争が行われている。東洋においても、農業が盛んな一部の地域では信仰の対象として事実上の保護動物として扱う国々があり、一方でベトナムや東南アジアでは主に唐揚げとして酒の肴とする食用カエルが養育されている。その他熱帯雨林気候の地域では多種が生息する身近な動物である為、その国ごとのことわざにも登場する例が多い。

この他にも、世界の森林保全を目的に活動する国際NGO団体「レインフォレスト・アライアンス(RA)」が定めた、独自の基準を認証した農園で栽培された作物を使用した商品に対して付けられるマークにカエルを採用している。これはカエルが自然環境に敏感であり、環境が悪化すると他の動物よりも先に消えてしまうと言われているからである[13]

成句

蛙鳴蝉噪(あめいせんそう)/蛙鳴雀噪(あめいじゃくそう)
井の中の蛙(かわず)、大海(たいかい)を知らず
井の中の蛙(かわず)、大海(たいかい)を知らず(「されど空の高さを知る」と続ける場合もあり、意味が逆転する。元々は「されど空の高さを知る」はなく、日本で勝手に付け加えられたもの)。
蛙、オタマジャクシの時を忘れる
蛙が兜虫に成る(かえるがかぶとむしになる)
蛙の尾
蛙の行列
蛙の子は蛙
蛙の相撲
蛙の面に水(かえるのつらへみず)/蛙の面に小便(かえるのつらにしょうべん)
蛙の頬被り(かえるのほおかむり)
蛙の目借時(かえるのめかりどき)
蛙は口ゆえ蛇に呑まるる/蛙は口から呑まるる
井底之蛙(せいていのあ)、井蛙之見(せいあのけん)
「井の中の蛙、大海を知らず」と同じ。
蛇に見込まれた蛙/蛇に逢うた蛙
茹でガエル(ゆでがえる)
三竦み

注釈

  1. ^ 「蛙/蝦」は三春(初春・仲春・晩春・義春)・動物に、「雨蛙」「蟇/蟾蜍」「河鹿」は三夏・動物に分類される季語である[9]
  2. ^ ただし、大型のカエルは反対にこれら捕食者を捕食することもある。

出典

  1. ^ 日本爬虫両棲類学会 (2020) 日本産爬虫両生類標準和名リスト(2020年3月16日版). http://herpetology.jp/wamei/ (2020年4月27日閲覧).
  2. ^ a b c d e f g h i j Anthony Arak 「カエル類」松井正文訳『動物大百科 12 両生・爬虫類』深田祝監修 T.R.ハリディ、K.アドラー編、平凡社1986年、42-63頁。
  3. ^ Skulls gone wild: How and why some frogs evolved extreme heads https://www.floridamuseum.ufl.edu/science/how-frogs-evolved-extreme-skulls/
  4. ^ Amphibiaweb”. 2014年12月12日閲覧。[出典無効]
  5. ^ a b フジテレビトリビア普及委員会『トリビアの泉〜へぇの本〜 2』講談社、2003年。
  6. ^ a b c 倉本満 「すべてのオタマジャクシ期を経るわけではなく、繁殖様式は変化に富み多様である。」『動物たちの地球 両生類・爬虫類 3 トノサマガエル・モリアオガエルほか』第5巻 99号、朝日新聞社、1993年、66-67頁
  7. ^ 21世紀研究会 (2004, p. 235)
  8. ^ a b 嶋内博愛、松枝到(編)「カエルをめぐる象徴性:グリム童話集を起点に」『象徴図像研究:動物と象徴』 言叢社 2006 ISBN 4862090079 pp.147-168.
  9. ^ 齋藤 & 阿久根 (1997)
  10. ^ 歌舞伎用語案内 照明と音響”. 松竹、国立国会図書館、歌舞伎. 2020年1月2日閲覧。
  11. ^ 身近な音具たち かえる”. 京都教育大学. 2020年1月2日閲覧。
  12. ^ 『図解アイヌ』 角田陽一 新紀元社 2018年 p92
  13. ^ JICA (2011, p. 16f)
  14. ^ “<カエル・ツボカビ症>国内で初確認 両生類絶滅の危険性も”. 毎日jp (毎日新聞). (2007年1月12日). オリジナルの2007年1月15日時点におけるアーカイブ。. http://wayback.archive.org/web/20070115085859/http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070112-00000044-mai-soci 2013年1月10日閲覧。 
  15. ^ 東 (2002)


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