オートミール
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歴史
明治時代にエンバクが栽培され始めた当初は馬の餌だったが、技術の進歩により、1920年代には北海道にある日本食品製造が日本で初めて人間用のオートミールを製品化した。だが、日本ではコメが一般的であり、オートミールそのものは広まらなかった[4]。 それでも、昭和天皇の洋食タイプの朝食にはいつも供されており[5]、映画『日本のいちばん長い日』によると、1945年8月15日の朝食もオートミールであり、思いのほか質素な食事であると作中で言及されている。
健康食品としてのオートミール
近年、オートミールは健康食品として注目されている。
オートミールは燕麦の糠(胚芽など)の部分が無精製で含まれる全粒穀物であるため、精白した穀類よりも食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富である。食物繊維が食品100g中10g前後と、他の穀物や野菜と比べても非常に豊富に含まれる[6]。水溶性食物繊維、不溶性食物繊維ともに豊富である。オートミールを食べることによって血中コレステロール濃度が低くなるという研究結果が数多く報告されている[7][8][9]。エンバクの水溶性食物繊維の大部分はβグルカンである。エンバク由来のβグルカンについて血中コレステロール値上昇抑制作用、血糖値上昇抑制作用、血圧低下作用、排便促進作用、免疫機能調節作用(鼻炎などの体質改善にも効果があった事例がある)などが欧米を中心に多数報告されている[10]。また、燕麦に含まれるβ1,3-グルカンは心臓病を発症するリスクを低くする。
アメリカ合衆国では、1980年に食生活指針が策定された前後で、健康への関心が高まっていた。
1984年10月にケロッグがアメリカ国立癌研究所 (NCI) に認定を受け自社製品に食物繊維の多い食品はある種のがんを予防すると表示した[11]。その後、他のメーカーもこれに追従し、このような表示が氾濫していった[11]。結果として、食物繊維を多く含むシリアル食品を食べる家庭を200万世帯増やした[11]。
1980年代後半、オートブランがコレステロール値を改善するとしてブームになり、1989年にピークを迎えた。ブームは1990年代初めには衰えたが、1997年1月にアメリカ食品医薬品局がオートブランやロールドオーツ(後述)を多く含む食品を低脂肪の食事と組み合わせて摂取すれば心臓病にかかる危険が低くなるという表示をつけることを許可した後、オートミールその他の燕麦製品の人気が再燃した。ロールドオーツは、食物繊維を多く含むため消化吸収を緩やかにし血糖値を安定させるはたらきを持つため、激しい運動をする人、特にウエイトトレーニングをしている人に人気がある。ボディビルダーの中には、アミノ酸や蛋白質のサプリメントをオートミールに混ぜて摂取する人が少なくない。
コロナ禍とオートミール
2020年のコロナウイルスの流行に伴う緊急事態宣言が発令された際、SNS上でオートミールが品切れになるという報告が相次いだ[12]。宣言解除後もAmazon.comの「シリアル売れ筋ランキング」の上位にはオートミールに関連した商品がランクインしていた[13]。
インターネット上では、パンケーキなどの洋食から雑炊などの和食に至るまで、様々な調理方法が編み出されており[14][4][15]、ついにはレシピ投稿サイト「クックパッド」の「食トレンド大賞2020」の一つに選ばれた[16]。また、メーカー側がレシピを公開することもあった[17]。
フォーブス・ジャパンの大竹初奈と石塚有紗は、巣ごもり生活の長期化によって健康意識が高まり、インフルエンサーが健康を保つためにオートミールを食事に取り入れていたことが人気の理由だと考えている[14]。また2人は、自粛期間中にお菓子作りが流行したことによって小麦粉などが売り切れたことも、オートミールの人気につながったと考えている[14]。朝日新聞の藤波優も、日本食品製造の担当者の話として、新型コロナウイルスの流行で健康に対する意識が高まったことやアレンジのしやすさが人気につながったとしている[4]。
フードコンサルタントの小倉明子は仙台放送の取材の中で、様々なレシピにアレンジできる汎用性だけでなく、保存が効くこともオートミールの人気につながったと推測している[18]。
一方、金融ジャーナリストの伊藤歩は、NHK『あさイチ』などのテレビ番組で取り上げられたことが原因でオートミールの売れ行きが伸びたと分析している[15]。調査会社のインテージホールディングスがスーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストアなど全国6000店舗の2021年1月~10月の販売データを集計し、前年からの販売金額の伸び率を基に公表された2021年の「売れたものランキング」では首位となり、伸び率は前年度に比べ2.9倍であった[19]。
- ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
- ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
- ^ “FoodData Central”. U.S. DEPARTMENT OF AGRICULTURE. 2021年8月21日閲覧。
- ^ a b c d “オートミールが人気、手軽に調理できてアレンジ自在 コロナ禍で注目:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2021年12月4日閲覧。
- ^ 渡辺誠『昭和天皇のお食事』文春文庫、2009年、ISBN 978-4167753382[要ページ番号]
- ^ 五訂増補 日本食品標準成分表 - 文部科学省
- ^ Davidson MH, Dugan LD, Burns JH et al "The hypocholesterolemic effects of beta-glucan in oatmeal and oat bran: a dose-controlled study." JAMA. 265(14), 1991, P1833-1839.
- ^ Shinnick FL, Mathews R, Ink S "Serum cholesterol reduction by oats and other fiber sources." Cereal-Foods-World, v.36(9),Sept 1991, p815-821
- ^ Marlett JA, Hosig KB, Vollendorf NW et arl."Mechanism of serum cholesterol reduction by oat bran." Hepatology, 20(6), 1994 Dec, P1450-7
- ^ 荒木茂樹, 伊藤一敏, 青江誠一郎 ほか、「大麦の生理作用と健康強調表示の現況」『栄養学雑誌』 2009年 67巻 5号 p.235-251, doi:10.5264/eiyogakuzashi.67.235
- ^ a b c マイケル・ヒースマン、ジュリアン・メレンティン 『機能性食品革命』 講談社、2002年4月。ISBN 978-4062112673。172-173頁。原著 The functional foods revolution 2001
- ^ 栗林史子 (2021年2月5日). “「コロナ太り」解消法? オートミールの需要増える”. 朝日新聞デジタル. 2021年8月21日閲覧。
- ^ 大竹初奈; 石塚有紗 (2020年10月24日). 松崎美和子: “食卓のニューノーマル? コロナ禍で「オートミール」の人気が爆発したワケ”. Forbes JAPAN. 2021年8月21日閲覧。
- ^ a b c 大竹初奈; 石塚有紗 (2020年10月24日). 松崎美和子: “食卓のニューノーマル? コロナ禍で「オートミール」の人気が爆発したワケ(2ページ目)”. Forbes JAPAN. 2021年8月21日閲覧。
- ^ a b 伊藤 歩 (2021年8月19日). “コロナで「売れた」「売れなくなった」商品トップ30 | 消費・マーケティング”. 東洋経済オンライン. 2021年8月21日閲覧。
- ^ “クックパッドニュース:[食トレンド大賞2020]ヘルシー食材「オートミール」を日常的に楽しむ人が続出!”. 毎日新聞 (2020年12月17日). 2021年8月21日閲覧。
- ^ 室作 幸江 (2021年6月22日). “シリアル市場が大きく伸長、健康や簡便さ、保存性などの商品価値が再評価され市場は好調!”. ダイヤモンド・チェーンストアオンライン. 2021年8月21日閲覧。
- ^ “今注目の完全栄養食「オートミール」 懐かしいのに新しい お勧めの食べ方をご紹介【宮城発】”. FNNプライムオンライン. 2021年8月21日閲覧。
- ^ “今年「売れたもの」首位はオートミール…健康志向で2位麦芽飲料、4位プロテイン : 経済 : ニュース”. 読売新聞オンライン (株式会社読売新聞社). (2021年12月8日). オリジナルの2021年12月8日時点におけるアーカイブ。 2021年12月8日閲覧。
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