オートマチック限定免許 日本における現状

オートマチック限定免許

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/12 13:59 UTC 版)

日本における現状

四輪

自動車販売店の業界団体である社団法人日本自動車販売協会連合会によれば、日本における乗用車のAT車の販売台数比率は2011年で98.5%である。これには現在の日本において、乗用車には趣味性の強い一部特殊な車種を除き、軽自動車から高級車に至るまでATが設定されるようになったことによって、AT車自体の数が増えたことやAT機構の改良などにより運転操作がしやすいことも含め、AT自体の性能向上が大きく影響していると考えられている。

そのため、普通自動車免許取得者の中で、AT限定免許を取る人の割合は年々増え続けている。2001年には3割を下回っていたが、2010年には半数を超える51%となり、2020年には普通自動車免許取得者116万9249人中、AT限定取得者は80万4956人と69%にまで増加している[3]。また、普通自動車免許保有者の内訳においても、2015年にAT限定は52%となり、AT限定が過半数となっている。また、MTの取り扱いがない車種が増えたことから社用車もATのみとする例が増え、かつては就職の求人で多く見られた「AT限定免許は応募不可」も以前よりは減少している。

一方でトラック・バスでは安定した動力性能を発揮できるAT機構の登場が遅かったこともあり、長らくMT車で生産されており、その影響もあって、それらの車種はMT車が主流であるが、近年は中型・大型トラック・バス車両でもATが徐々に増加しており、一例として1999年から配備が開始された陸上自衛隊の主力トラックである、現行3 1/2tトラック(73式大型トラック)ではAT車も[注 8]採用されている。

また、業務用車両の分野でもAT車の比率が高まっており、タクシーや一般企業の営業車やレンタカーや大型小売店などの貸し出し用の軽トラック・小型トラックでもほとんどの場合AT車の導入がなされている。それでも、運送業・建設業・自動車販売店・ガソリンスタンドなどの職種においては限定なし普通免許の必要性は依然として高いが、2017年以降は準中型免許の登場により低下傾向にある[注 9]

二輪

自動二輪免許の場合、小型限定ではAT限定免許取得者の割合が高いが、普通大型は現在もMT免許取得者の割合が高い。2014年の統計では小型AT限定取得者が約60%、普通AT限定所持者が7%程度、大型AT限定では1%にも満たない状態である。

これは、普通自動二輪車以上での課題走行・二輪特別課題のいくつかにおいて、AT車(教習車はビッグスクーターの自動二輪車が使用される)の方が難易度が高く、それゆえ指定自動車教習所も、教習生へ限定なしの免許取得を勧めることが、主な要因となっている。

さらに大型自動二輪車となると、市販の大型バイクはほぼ全車種がMTである上、大型のAT限定免許は2019年(令和元年)11月まで排気量が650cc以下に限定される制約があったことや、実習時間も余り変わらないほか[注 10]、「どうせ取得するならば一切制限のない免許を」ということで、AT限定の需要自体が少ない。また公安委員会の認可へ手間がかかるため、取り扱っている指定自動車教習所も少ない。

一方小型限定自動二輪免許では、課題にスラロームがないことや、市販されている125cc以下の車種がほぼATまたはクラッチ操作のいらない手動変速のみとなっている現状から、AT限定免許の割合が高いため、小型二輪はAT限定のみ取り扱っている指定自動車教習所もある。


注釈

  1. ^ 構造が異なることからバランスや乗車姿勢も根本的に異なることや、極低速での速度調節がMTでは半クラッチでできるのに対し、ATではアクセルでしか調節できないなど。
  2. ^ 大型自動二輪AT創設当時スズキスカイウェイブ650が二輪ATの最大排気量であったことから基準にされたため。
  3. ^ 例えばクラッチ操作を必要としないものの排気量が650ccを超えるホンダDN-01ヤマハFJR1300ASは大型自動二輪AT限定免許では、2019年12月1日より前は運転できなかった。
  4. ^ ただし、旧々普通自動車免許から移行した中型(8t限定)自動車免許を除く。
  5. ^ ただし、旧普通自動車免許から移行した準中型(5t限定)自動車免許を除く。
  6. ^ 2018年にトヨタコンフォート(小型タクシー枠)の生産及び販売が終了したことで現行のタクシー専用車種は全車ATとなった事、そもそも中型タクシー枠で同じXS10系であるクラウンコンフォートクラウンセダンを導入する地域ではそれらの車種にATしか設定されていなかったことから早期にATに移行していたこともあり、2020年の第二種普通運転免許取得者の1万2179人中、68%の8287人がAT限定で取得しており、二種免許もAT限定で取得する者が主流となっている。
  7. ^ 準中型免許の場合、二種免許は存在しない。そのため、旧々普通二種免許および旧普通二種免許から移行するのは中型二種(前者は8t限定、後者は5t限定)となる。
  8. ^ ただし、北部および東北方面隊区内部隊では、燃費の悪化、MTと違い発進時はトルクコンバーターの性能上少し多めに踏み込まないと加速が悪いなどのATとMTの違いによる問題も存在し、部内資料や隊員の体験談を記した書籍類にもこれらの注意点が記載されている。また、各師団自動車教習所向け教習車両の更新用には同系のMT車が導入されており、全体で見ればMT車を運転する技術が必要であることには変わりない。
  9. ^ 2017年以降の普通免許は車両総重量の制限が厳しいため、限定なし普通免許で運転できるがAT限定で運転できないという貨物車両は、軽トラックのほかには多くない。過去にAT限定普通免許を取った者は、現在はAT限定の準中型・中型免許を持つが、その人数が今後増加することはない。
  10. ^ 二輪免許がない場合で7時間、AT普通二輪がある場合では6時間、MT普通二輪の場合は3時間の差である(なおAT限定解除する場合は8時間の講習が必要)。
  11. ^ a b 道路交通法施行規則第19条第4項および別表第2。免許証記載事項略語のうち、「AT車」の定義として「オートマチック・トランスミッションその他のクラッチの操作を要しない機構がとられており、クラッチの操作装置を有しない自動車等」が規定されている。

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