オートファジー タンパク質分解との関係

オートファジー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/31 09:07 UTC 版)

タンパク質分解との関係

細胞は、タンパク質を新たに作り出す機構だけでなく、作ったタンパク質が不要になった場合に分解する機構も持っている。この機構をタンパク質分解と呼ぶが、これには

  1. ユビキチン - プロテアソーム
  2. オートファジー

の二つの主要な機構が存在する。

ユビキチン-プロテアソーム系では、分解するべきタンパク質の一つ一つに、ユビキチン分子が複数結合することでプロテアソームにより認識されて分解されるというかたちで個々のタンパク質ごとの分解が行われるのに対し、オートファジーでは、一度に多くのタンパク質が分解される。このためオートファジーによるタンパク質分解のことはバルク分解とも呼ばれる[61]

栄養飢餓

細胞が生命活動を行うためには、必要な遺伝子を発現させて、タンパク質などの生体高分子を生合成する必要がある。タンパク質はアミノ酸からなる高分子であり、細胞が生命活動を行うためにはその材料となる必須アミノ酸を、栄養源として細胞外から取り込む必要がある。

個体が飢餓状態におかれて栄養が枯渇し、アミノ酸の供給が断たれることは、細胞にとっては生死に関わる重大なダメージになりうる。飢餓状態で細胞分裂が行われると、染色体の数などに異常が生じやすくなり、これががんの原因にもなる[62]。しかしオートファジーが働くことによって、細胞は一時的にこのダメージを回避することが可能で、染色体数などの異常を抑制し、がんなどの病気の発生を予防している[62]。オートファジーが起きると、細胞内に常に存在しているタンパク質(ハウスキーピングタンパク質)の一部が分解されて、ペプチドやアミノ酸が生成され、それが細胞の生命活動にとって、より重要性の高いタンパク質を合成する材料に充てられると考えられている。この機構は動物の個体レベルにおいても観察され、例えばマウスを一晩絶食させることで、肝細胞でオートファジーが起きることが知られている。

哺乳類の出生時、出産によって胎盤を介しての栄養の供給がなくなると、胎児は母乳から栄養を摂るまで一時的な栄養飢餓となる[63]。この時オートファジーによってアミノ酸を生成することで、栄養飢餓を凌いでいる[63]

オートファジーによる栄養飢餓の回避はあくまで一時的なものであり、飢餓状態が長く続いた場合には対処することができない。この場合、オートファジーが過度に進行することで、細胞が自分自身を「食べ尽くし」てプログラム細胞死に至ると考えられている。実際にオートファジーが直接の原因となって細胞死に至るのは極めてまれで、プログラム細胞死はあくまでもオートファジーを伴っているだけである[64]

飢餓状態になると栄養センサーであるTORC1の活性が低下し、Atg13が速やかに脱リン酸化される。これによりAtg13はAtg1とAtg17に対する高い親和性を獲得し、Atg1複合体が形成されオートファジーが始動する[13]

感染防御

病原体の細菌と宿主のオートファジーとの間の標的相互作用

細胞内に侵入する細菌が宿主細胞に侵入しエンドソームに損傷を与えて生じる膜断片は、宿主に選択的オートファジーを行わせる[65]。この時、細菌の性質によりその後が異なる。

結核菌などはエンドソームに包まれた後ユビキチン化され、オートファジーにより殺菌される[65][66]赤痢菌などは、オートファジーを回避し、エンドソームから細胞質に脱出する[66]レジオネラなどは、オートファゴソームとリソソームの膜融合を遅らせ、オートファゴソーム内の栄養を利用し増殖する[66]

食作用

オートファジーの機構とよく似たものの一つに、マクロファージ好中球などの食細胞が行う食作用(しょくさよう、ファゴサイトーシスや貪食とも呼ぶ)がある。これらの食細胞は、体内に侵入した異物や病原体をエンドサイトーシスによって、ファゴソームという小胞に包んだ形で取り込む。ファゴソームは細胞質内で、オートファゴソームと同様にリソソームと膜融合してファゴリソソームとなり小胞内部の異物を消化分解する。

しかしリステリア属の細菌は、内部からファゴソームを破壊して貪食の機構から逃れ、細胞質内に感染(細胞内感染)しようとする。オートファジーはこのようにして細胞質内に逃れた細菌を、再び捕えなおして分解する働きも果たしており、この働きによって生体を微生物による感染から守っていると考えられている。


注釈

  1. ^ 日本語訳は「オートファジー小胞」。
  2. ^ 小脳萎縮や小脳性運動失調などを症状とする。

出典

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