オートバイ 基本構造

オートバイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/08 23:07 UTC 版)

基本構造

オートバイの構造は、その歴史のなかで様々な形態が現れ、変遷してきた。ここでは現在市販されている二輪のオートバイとして一般的なものを示す。したがって、いくつかの車種には例外があり、特に三輪のものについては構造が大きく異なる例もある。

オートバイの構成要素を機能で大きく分けると、フレーム、エンジンクラッチトランスミッション(ギアボックス)、タイヤホイールブレーキサスペンションなどに大別される[4]

前後輪の役割としては前輪操舵・後輪駆動が一般的であるが、前輪が操舵と駆動の両方を担うものもある[注釈 27]。エンジンの位置は前輪と後輪の間に搭載されるものが一般的である。前輪駆動のものはフロントホイール内(インホイールエンジン)やフロントフォークに搭載される。エンジンが発生した出力はまず1段減速された後に、クラッチを経て変速機に伝えられる[4]

運転操作は、右グリップがスロットル、右レバーが前ブレーキ、右ペダルが後ブレーキ、左レバーがクラッチ、左ペダルがギアチェンジという構成が現在では一般的である。ただし、イギリス車では伝統的に右足でギアチェンジ、左足で後輪ブレーキ操作を行う車種が多く、一時期は燃料タンクの左脇に手で操作するシフトレバーがある車種も多かった。

スクーターに関しては、構造や操作などに特徴がある。

エンジン

オートバイのエンジンは通常、車体フレームに固定されている(駆動輪と一体になっているスクーターなどはエンジンがスイングアームの一部ともなり可動する場合がある)。チェーン、または歯付ベルトドライブ(駆動)のものはクランクシャフトが車体進行方向に対して横向きになる配置に搭載される。このうち直列エンジンは、二輪車特有の表現である「並列エンジン」(へいれつエンジン)とも呼ばれる。一方、シャフトドライブの車種の多くは縦置きエンジンを採用している。

駆動系

基本構造が分かりやすい例
エンジンおよびトランスミッションケース、及びその周囲のフレームを示す。エンジンと一体となったトランスミッションケースがフレームに直接固定されている。写真のフレームはアルミ押出材のダブルクレードル形式

マニュアルトランスミッション車は運転者が速度負荷に応じたギアの組み合わせを選ぶ機構で、マニュアル車やミッション車(しかしトランスミッションがないオートバイは通常ない)とも呼ばれる。クラッチの操作も必要となるが、トルクコンバーターを用いたものや、湿式多板クラッチなどを用いたオートマチックトランスミッション車がある。

クラッチは、エンジンオイルに浸されていて複数の摩擦面を持つ湿式多板クラッチの他、BMW水平対向エンジン車やモト・グッツィなど、縦置きエンジンの車種で乾式単板クラッチ、競技車両やイタリアのドゥカティの一部では乾式多板クラッチ、また自動遠心クラッチなど多種が存在している。

オートバイのトランスミッションは、エンジンのクランクケースと一体になったケースに収められている場合が多く、4ストロークエンジンの車種ではエンジンオイルがトランスミッション(と湿式多板クラッチ)の潤滑を兼ねている。トランスミッションは4段から6段程度の変速段数を持つ車種が多い[4]

トランスミッションから車軸へ動力(トルク)を伝達する手段には、ローラーチェーン[4]プロペラシャフト(シャフトドライブ)、歯付ベルト(オートマチックトランスミッションを採用するオートバイ)などが使用される。

足回り

ホイールは、チューブレスタイヤを使用する車種ではアルミダイカスト製の「キャストホイール」を採用しているモデルが多い。一方、リムハブをワイヤースポークでつないだホイールを採用する車種も少なくない[4]

ブレーキには自転車同様のバンドブレーキリムブレーキも当初見られたが、自動車と同じ仕組のドラムブレーキがそれらに取って代わった。ドラムに対するブレーキシューの向きで自己サーボ効果を発揮する方向が異なるため、フロントをツーリーディング、リアをリーディング&トレーリングとする組み合わせが多い。1970年代末にはスポーツ車からディスクブレーキが普及し初め、スポーツ車以外にも採用が広がっている。

サスペンションは、走行中に路面からの衝撃を吸収させ、車輪をつねに路面に接触させ、操縦性・安定性に寄与している[4]。前輪はテレスコピックフォークがほとんどの場合採用される。後輪はスイングアーム(もしくはユニットスイングアーム)が多い。




注釈

  1. ^ 「ガソリン機関による動力で走る二輪車」(出典:大辞泉)。大辞泉では「ガソリン機関による」とされたが、2012年現在ではガソリン機関だけでなく、モーターやガスタービンを動力とするものも市販されている。
  2. ^ bi」は「2」を意味する接頭辞で「cycle」は「輪」輪を示す。いずれもラテン語に由来する。
  3. ^ また、ヤマハ発動機のウェブサイトでは、2012年3月29日時点で、Motorcyclesのページ内に大きく「スポーツバイク」「スクーター」「競技用」の3つを立てている[1]が、「スポーツバイク」の中に、TMAX(=スクーター タイプ)も含めている[2]
  4. ^ http://megalodon.jp/2012-0329-2122-59/www.honda.co.jp/motor/ ホンダのホームページ、http://megalodon.jp/2012-0329-2122-08/www.honda.co.jp/motor-lineup/category/ 同ページカテゴリー区分
  5. ^ スズキのホームページでは、2012年3月29日時点で、「二輪車」というタイトルのページをつくり、そこで排気量別で大きく分け、各排気量の中に、スクーターも含めて表示した。[3]
  6. ^ 「週刊バイクTV」は、オートバイに関する番組であるが、各社の大型スクーターの紹介を頻繁に行っている。
  7. ^ あるいは「オートバイ」という用語は最初から避け、「motorcycles」「二輪車」という用語を用いてスクーターも含めて様々なタイプのそれを説明・紹介している。
  8. ^ 人体を基準にするため黎明期から現代に至るまでおよそ全長200cm、幅70cm、高さ80cm程度の車格が用いられている
  9. ^ 代表的な技術としてサイドバルブ機構がOHV機構に、自動負圧式バルブが機械駆動式に、鋳鉄シリンダーおよびピストンがシリンダーで鋼製削りだし、ピストンが鋳鉄、あるいは鍛造アルミ、オイルリングの装着などが挙げられる
  10. ^ 60*60mm、180ccの空冷4ストローク単気筒エンジンは回転速度2000rpmまで回り、出力公証1.5psを発揮した
  11. ^ フロントブレーキや手を使ってのクラッチ操作には後にボーデンケーブル英語版が用いられ、これは現代においても同様の機構を用いた車種が存在する。
  12. ^ 1896年(明治29年)に十文字信介(十文字大元の実兄)が石油発動自転車を輸入して丸ノ内で試乗とある1896年1月26日『国民新聞』『新聞集成明治編年史. 第九卷』(国立国会図書館近代デジタルライブラリー)
  13. ^ 1935年(昭和10年)までに日本にはAJS、アリエル、ダグラス、BSA、JAP、ノートン、ラッジ、サンビーム、トライアンフ、ヴェロセット(以上イギリス)、モトグッチイタリア)、クリーブランド(アメリカ)、BMW(ドイツ)といった各国のオートバイが輸入されていた。
  14. ^ 1928年(昭和3年)、日本自動車の蒔田鉄司により設計された250cc、空冷2ストロークエンジンを搭載した車両。
  15. ^ 1930年(昭和5年)に宍戸兄弟の手により製作された350cc、および500ccエンジンを搭載した車両
  16. ^ 1934年(昭和9年)東京モーター用品製造組合会員による共同製作車両。エンジン設計はJAC号と同じく蒔田鉄司。
  17. ^ 1927年(昭和2年)愛知県犬山のみづほ自動車製作所により製作された車両。キャブトンとは、Come And Buy To Osaka Nakagawaの頭文字を並べたもので、もともとは大阪の中川幸四郎商店が設計したものであった。
  18. ^ 1936年(昭和11年)にプロレーサーとしても活躍した栗林が経営する栗林部品店が製作した車両。同社は1928年(昭和3年)創業、1933年(昭和8年)にヴィリアース社製2ストロークエンジンを搭載した車両を製作し、1936年(昭和11年)には500cc、4ストロークエンジンを搭載した車両を製作した。
  19. ^ 1937年(昭和12年)、日本内燃機会社が製作した1296cc、4ストロークV型2気筒の大型エンジン搭載し、最高出力は12psに達した。エンジン設計は蒔田鉄司、車名は同氏の名前にちなむ。
  20. ^ 1936年(昭和11年)、目黒製作所が製作、販売した車両。目黒製作所は1923年(大正12年)に村田延治、鈴木高広の二名によって創業され、当初は変速機やエンジンの製造を行っていた。この車両では500cc、4ストロークOHV単気筒エンジンを日本で初めて搭載していた。
  21. ^ 2ストローク42×45mm、62ccのエンジンで1.2馬力を発揮した。
  22. ^ 戦中2ストローク無線電源用発電機の多くはトーハツが製造、納品していた。
  23. ^ また、国産車にはないスリーブレスアルミメッキシリンダーといった技術も用いられていた。
  24. ^ 。ビスモーターを他社に先駆け発売したみづほは需要の変化に戦前からの実績があった350cc単気筒や600cc二気筒エンジンを搭載した車両を市場に送り出すが、当時の流行からは大きすぎた。こうした市場との乖離による業績不振や、晩年のなりふり構わぬ小型車の発売などはブランドイメージの低下に拍車をかけ、最盛期であった1954年(昭和29年)のわずか2年後に倒産。
  25. ^ 。戦中、唯一オートバイを製造していた陸王も1960年(昭和35年)に倒産したが、最後に販売した陸王AC型は空冷4ストロークOHV345cc単気筒、最大出力18ps/4,750rpm シャフトドライブで最高速度120km/h 車両重量180kgのドイツ車のような車両であった。
  26. ^ 。戦前の川西航空機が終戦を機に新明和興業と改名。航空機で培った技術を元にバイクモーターを手始めにオートバイ事業に参入したが、新進オートバイメーカーの躍進に業績が悪化。1963年(昭和38年)に18年のオートバイ事業に幕を下ろす。
  27. ^ 画像は、ウィキメディア・コモンズの「Category:Motorcycles with FWD (front wheel drive 前輪駆動のモーターサイクル」を参照。
  28. ^ 重篤なものとしては大腿部の動脈を損傷した場合などがある
  29. ^ 2006年から、北米生産のアメリカンツアラー「ゴールドウィング」を皮切りに装備された。
  30. ^ C1に装備して発売し、ヨーロッパの一部の国ではヘルメット着用義務の例外として扱われる車種となった。
  31. ^ ヘルメットリムーバーまたエアジャッキの要領でヘルメットを頭から抜くツールも開発されており、ヘルメットリムーバーにおいてはロードレースなどの競技会で義務化されつつある。

出典

  1. ^ a b c 広辞苑 第五版
  2. ^ 日本のオートバイの歴史。- 二輪車メーカーの興亡の記録。、P. 7
  3. ^ 百年のマン島 - TTレースと日本人、P.179-180
  4. ^ a b c d e f g 世界大百科事典 第4巻
  5. ^ 『図解入門よくわかる最新バイクの基本と仕組み』秀和システム、2010)第二章
  6. ^ a b International Council on Clean Transportation European Vehicle Market Statistics - Pocketbook 2013
  7. ^ 日本自動車工業会 「インド自動車市場とその将来」 [リンク切れ]他の国のデータと年次が異なり2004年の数値である。
  8. ^ 出典元に記載が無いため、記載されている台数と台湾の頁の人口より算出。
  9. ^ 日本自動車工業会 「世界各国/地域の二輪車保有台数」
  10. ^ 注 - 発展途上国では、四輪自動車は庶民の年収と比較して高額なため、オートバイが購入される。発展途上国の都市部では、オートバイは交通渋滞をすり抜けやすいという利点もあり、特に重要な交通手段である。
  11. ^ 【真相断面】“FUNバイク”アジア攻勢/富裕層・中産階級ターゲット『日刊工業新聞』2018年3月16日
  12. ^ a b c d 日本のオートバイの歴史。 - 第3章 ガソリン・エンジンの誕生P. 23-30
  13. ^ 日本のオートバイの歴史。 - 第2章 後進・日本のオートバイ産業P. 19-22
  14. ^ a b c d e f g h i j k l m n 日本のオートバイの歴史。 - 第4章 黎明期の日本のオートバイ界P. 31-66
  15. ^ a b c d e f 日本のオートバイの歴史。 - 第1章 オートバイ技術の内容P. 7-18
  16. ^ a b c d e f g h i 日本のオートバイの歴史。 - 第5章 敗戦とそのあとに来たものP. 67-82
  17. ^ 中日本重工は戦後の財閥解体により3社に分割された三菱重工業の自動車部門。後に中日本重工は新三菱重工となり、後に3社は合併し、再び三菱重工業となる。新三菱重工は実質上三菱自動車工業の前身ともいえる面を持っており、後のミニカミニキャブの礎となった三菱・360の成功を契機に二輪・オート三輪を捨て四輪メーカーへと梶を切ることとなる。
  18. ^ a b 日本のオートバイの歴史。 - 第7章 オートバイ大流行の先駆・バイクモーターP. 99-116
  19. ^ a b 日本のオートバイの歴史。 - 第8章 本格的オートバイ時代到来P. 117-138
  20. ^ a b 日本のオートバイの歴史。 - 第9章 戦後派の大進出と制覇P. 139-168
  21. ^ a b c 日本のオートバイの歴史。 - 第10章 優勝劣敗強まるP. 169-192
  22. ^ a b c d 日本のオートバイの歴史。 - 第11章 日本オートバイの世界制覇P. 193-202
  23. ^ 二輪車リサイクル(一般社団法人 日本二輪車普及安全協会)
  24. ^ ハーレーダビッドソン!鉄馬マガジン 2005/9/30 No.21
  25. ^ 乗員が足で支える、スタンドを使用する、乗員がバランスを取る、補助輪を使うなどの方法が必要である。
  26. ^ Sarkar S, Peek C, Kraus JF. "Fatal injuries in motorcycle riders according to helmet use." J Trauma. 1995 Feb;38 (2) :242-5. PMID 7869444
  27. ^ 平成18年中の交通事故の発生状況について
  28. ^ Stella J, Cooke C, Sprivulis P. "Most head injury related motorcycle crash deaths are related to poor riding practices." Emerg Med (Fremantle). 2002 Mar;14 (1) :58-61. PMID 11993836
  29. ^ Kraus JF, Peek-Asa C, Cryer HG. "Incidence, severity, and patterns of intrathoracic and intra-abdominal injuries in motorcycle crashes." J Trauma. 2002 Mar;52 (3) :548-53. PMID 11901334
  30. ^ 交通安全の模範例となる二輪車 - 二輪車の利用環境改善と安全走行のために | JAMAGAZINE 2007年5月号より
  31. ^ 月刊オートバイ 2008年1月号「ライダーの「胸部」保護を考える」pp.203-210[リンク切れ]
  32. ^ European Agenda for Motorcycle Safety (PDF)




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「オートバイ」の関連用語

オートバイのお隣キーワード

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   
検索ランキング



オートバイのページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのオートバイ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2019 Weblio RSS