オーストリア料理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/05 03:37 UTC 版)
飲料
コーヒー
ウィーンにおけるコーヒーの歴史は17世紀まで遡ることができ、1668年ごろには既にアルメニア人商人によってトルコのコーヒー豆がウィーンに輸入されていた[46]。現在もウィーンではコーヒーが好まれており、カフェで出されるコーヒーは以下の種類に大別される。
- モカ(Mokka)、シュヴァルツァー(Schwarzer):ブラックコーヒー
- ブラウナー(Brauner):ミルクを入れたコーヒー
- カプツィーナー(Kapuziner):ミルクを入れたコーヒー。ブラウナーに比べてミルクの量は少ない
- メランジェ(Melange):コーヒーと泡立てた温かい牛乳を半々の割合で入れたもの
コーヒーの濃さとカップの大きさは指定でき、好みでホイップクリームを乗せることもできる。また、モカに最初からホイップクリームを乗せたアインシュペナーも供されている。皇帝フランツ・ヨーゼフ1世はメランジェを愛飲し、蜂蜜(または砂糖)、卵黄、コニャックを撹拌したものにモカとミルクを注いだ「カイザー・メランジェ・カフェ」(Kaiser Melange Kaffee)をほぼ毎日飲んでいたと言われる[47]。19世紀半ばに人気を博したコンツァート・カフェ(音楽カフェ)でも、メランジェの人気は高かった[47]。
1747年にマリア・テレジアの命令でウィーンのカフェ店主の同業組合と酒店の同業組合が統合されると、カフェでもアルコールが提供されるようになった[48]。リキュール入りのコーヒーが流行し、女帝の名を冠した「カフェ・マリア・テレジア」などが考案された。
酒類
オーストリアでは多種の酒が作られているが、飲食店では酒類が安価で供されているため、アルコール依存症が社会問題となっている[49]。特にワインとビールが多く消費され、ワインは中流階級以上、ビールは労働者階級の飲み物という傾向が見受けられる[49]。
ワインについては頭一つ抜けて品質が高い銘柄は無いが、飲みやすい銘柄が多いとされている[50]。ブドウの品種などでドイツワインとの共通点が多く、ラベル表示もドイツの方式が採用されている[51]。ウィーン近郊のグンポルスキルヒェン(Gumpoldskirchen)で醸造される、オーストリアワインで最も流通量が多い白ワイン・グンポルスキルヘナー(Gumpoldskirchener)のほか[50][51]、グリンツィンガー、クレムス周辺で生産されるクレムサーが有名。南バーデンとフォスローで獲れたブドウを原料とする赤ワイン、ブルゲンラント州のルストで醸造される白ワインが最上と言われている[50]。
かつてビールは修道院で醸造され、断食期間の栄養源として重宝されていた[49]。ザルツブルク州では、ワインよりもビールが好まれている[50]。オーストリアで一般的に飲まれるビールは、ラーガービア(Lagerbier ラガービール)である[52]。クリスマスと復活祭には、この日のために醸造されたアルコール度の高いボックビア(Bockbier)が飲まれる。1840年代のウィーンで発明された、ウィーンスタイルの赤いラガービールは、世界的なラガー人気の草分けとなったビールの一つである[53]。ビールを同量のレモネードで割って飲む「ラードラー」(Radler)というスタイルも定着している。
リンゴか洋ナシを原料とする、モスト(Most)という果実酒はオーストリア独特の飲料として知られている。オーバーエスターライヒ州はモストの特産地として知られており、州には「モストフィアテル(モスト地方)」という名前の地方が存在する[52]。モストと同じく果実を原料とするアルコール度数40-45度のシュナップス(Schnapps)という蒸留酒は、オーストリアでは食後酒としてよく飲まれる。一般家庭では一定量の自家用シュナップスの蒸留が認められているが、法律で定められた量より多く蒸溜する場合は税金を納めなければならない[54]。モストとシュナップスはどちらも自家製の酒類を起源とする[52]。
初夏には発泡ワインにイチゴなどを漬けたポンチの一種エルドベーレボウル(Erdbeerebowle)、冬になるとワインに甘味料と香辛料をくわえて温めたグリューワイン、酒とジュースを混ぜて温めたプンシュ(Punsch)が飲まれる。
- ^ a b ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.11
- ^ a b c d e f g h オーストリアの代表的な料理(2013年3月閲覧)
- ^ a b c d ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.40
- ^ a b c 『世界の食べもの』合本4巻、p.63
- ^ a b c 真鍋「料理と酒」『オーストリア』、p.299
- ^ 『世界の食べもの』合本4巻、p.62
- ^ ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.10
- ^ ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、pp.13-14
- ^ 『世界の食べもの』合本4巻、pp.71-72
- ^ a b c d ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.14
- ^ ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.144
- ^ ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.15
- ^ 関田『ハプスブルク プリンセスの宮廷菓子』、pp.70-71
- ^ a b ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.18
- ^ a b ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.23
- ^ ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.8
- ^ ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.43,47
- ^ ブース『ありのままのアンデルセン ヨーロッパ独り旅を追う』、p.476
- ^ a b ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.43
- ^ 『世界の食べもの』合本4巻、p.66
- ^ ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.47
- ^ ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.49
- ^ a b c d e f g 真鍋「料理と酒」『オーストリア』、p.300
- ^ a b 真鍋「料理と酒」『オーストリア』、p.303
- ^ a b 真鍋「料理と酒」『オーストリア』、p.305
- ^ a b c ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.41
- ^ a b ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.42
- ^ 『世界の食べもの』合本4巻、p.64
- ^ ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、pp.51-52
- ^ a b ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.51
- ^ 布施『オーストリア・パッチワーク 緑とワインと音楽と』、p.85,290
- ^ a b ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.53
- ^ a b トゥーサン=サマ『お菓子の歴史』、p.357
- ^ ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、pp.41,167-168
- ^ 関田『ハプスブルク プリンセスの宮廷菓子』、p.68
- ^ a b 関田『ハプスブルク プリンセスの宮廷菓子』、p9.68-69
- ^ 真鍋「料理と酒」『オーストリア』、p.309
- ^ ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、pp.176-177
- ^ 真鍋「料理と酒」『オーストリア』、p.308
- ^ 真鍋「料理と酒」『オーストリア』、pp.307-308
- ^ 真鍋「料理と酒」『オーストリア』、p.307
- ^ トゥーサン=サマ『お菓子の歴史』、p.358
- ^ ハンブル『ケーキの歴史物語』、pp.57-58
- ^ ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.170
- ^ コーヒー、ケーキ(2013年3月閲覧)
- ^ 関田『ハプスブルク プリンセスの宮廷菓子』、p.66
- ^ a b 関田『ハプスブルク プリンセスの宮廷菓子』、p.144
- ^ 関田『ハプスブルク プリンセスの宮廷菓子』、p.47
- ^ a b c 真鍋「料理と酒」『オーストリア』、p.314
- ^ a b c d シモン『世界のワイン』、pp.387-389
- ^ a b ウォー『ワインと酒』、p.133
- ^ a b c 真鍋「料理と酒」『オーストリア』、p.315
- ^ 渡辺『ビール大全』、pp.232-233
- ^ 真鍋「料理と酒」『オーストリア』、p.316
- ^ a b c d ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.70
- ^ a b c d ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.71
- ^ a b ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.69
- ^ ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、pp.69-70
- ^ ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.72
- ^ 吉田『チョコレート物語』、pp.26-27
- ^ ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.73
- ^ ウェクスバーグ『オーストリア ハンガリー料理』、p.76
- ^ チロル州観光局日本担当オフィス・オフィシャルホームページ(2013年3月閲覧)
- ^ a b 関田『ハプスブルク プリンセスの宮廷菓子』、p.61
- ^ 関田『ハプスブルク プリンセスの宮廷菓子』、pp.56-57
- ^ 関田『ハプスブルク プリンセスの宮廷菓子』、p.43
- ^ 関田『ハプスブルク プリンセスの宮廷菓子』、p.38
- オーストリア料理のページへのリンク