オオカミ 生態

オオカミ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/10 05:04 UTC 版)

生態

オオカミは雌雄のペアを中心とした平均4‐8頭ほどの社会的な群れパック英語版)を形成する。群れはそれぞれ縄張りを持ち、広さは食物量に影響され100‐1000平方キロメートルに及ぶ。

群れと順位

群れは雌雄別の順位制を伴い、通常は繁殖ペアが最上位であるが、順位交代もする。最上位から順にアルファ、ベータと呼び、最下位の個体をオメガと呼ぶ。順位は常に儀式的に確認しあい維持される。群れはたいてい繁殖ペアの子孫や兄弟で血縁関係にあることが多い。他の群れを出た個体が混ざることもある。狼の群れの頭数は最多で42頭にもなったという記録があるものの、平均して概ね3-11頭の間である。しかし、大規模な群れでも主に仕事を行うのはペアであり、最も効率が良いのはペアの狼とされている。

狩り

ヘラジカを狩る2頭のオオカミ

オオカミは肉食で、シカイノシシ、野生のヒツジヤギバイソンなどの有蹄類、ウサギ齧歯類などの小動物を狩る。餌が少ないと人間の生活圏で家畜や残飯を食べる。シカなどの大きな獲物を狩る時は群れで行動する。健康体を狩る場合もあるが、通常は長時間の追跡を行い獲物の群れのうち弱い個体(病気、高齢、幼体)を捕まえる。上位の個体が、獲物を先に食べる。

カナダ太平洋岸ブリティッシュコロンビア州ではサケを捕食していることがサンプルで判明しているほか、サケが遡上しないその沖合の離島では海岸付近の甲殻類ニシンの卵、漂着したクジラの死骸などを餌としている[4]

最高速度の時速70キロメートル[5]なら20分間、時速30キロメートル前後なら7時間以上獲物を追い回す事ができる。追いかける途中で諦める事が多く、リカオン などと比べると諦めやすい性格といえる。狩猟成功率は生息密度や環境に左右される。アラスカのデナリ国立公園1977年にカリブーを仕留めようと追いかけた回数が16回であり、そのうち殺したのが9頭で成功率は56%という報告例がある。1972年オンタリオ[要曖昧さ回避][どこ?]では35回獲物に狙いを定めそのうちの16頭の鹿を殺す事に成功している所が観察された。

繁殖

幼獣
  • 繁殖は一夫一妻型で群れの最上位のペアのみが行うが、例外的に他の個体が繁殖することもある。交尾 は一般に1月~3月頃に行われる。妊娠期間は60 - 63日、平均4 - 6頭の子を産む。雌は巣穴を作りそこで子育てを行う。父親や群れの仲間も子育てを手伝う。
  • 子は生後12 - 14日で目を開き、生後20 - 24日で動き回るようになり、生後20 - 77日の間で群れを認識する社会性が育ち離乳する。固形食は大人が吐き戻して与える。8週ほどで巣穴を離れるようになる。
  • 子は1年も経てば成体と同じ大きさになるが、性的に成熟するには2年ほどかかる。成熟したオオカミは群れに残るか、群れを出て新たな場所に移り、配偶者を見つけ(この過程で1匹になることを一匹狼という)、新たな群れを形成する。

コミュニケーション

遠吠え英語版はオオカミのコミュニケーションの一つ。

オオカミはボディランゲージ、表情、遠吠えなどで群れの内外とコミュニケーションを取る。表情やしぐさは群れの順位を確認する際に良く使われる。

遠吠えは、群れの仲間との連絡、狩りの前触れ、縄張りの主張などの目的で行われ、目的に応じて吠え方が異なるといわれる。合唱のように共同で遠吠えすることもある。

なお幼少時には驚いた時などに鳴くことがある(「キャンキャン」など)が、成長すると通常は吠えたり鳴いたりすることはない(遠吠えを除く)。

寿命

飼育下での平均寿命は15年ほどである。動物園で20年生きた記録がある。野生では、他の動物と同様に幼齢時の死亡率が高いが、成熟個体は5 - 10年ほど生き、時には10年以上生きる個体もいる。


注釈

  1. ^ インドネパールパキスタンブータン個体群はワシントン条約附属書I。
  2. ^ ただしヤマイヌと呼んだ上でのニホンオオカミ以外のイヌ科動物との混同、未分類のままの崇拝も見られる。

出典

  1. ^ Boitani, L., Phillips, M. & Jhala, Y. 2018. Canis lupus (errata version published in 2020). The IUCN Red List of Threatened Species 2018: e.T3746A163508960. doi:10.2305/IUCN.UK.2018-2.RLTS.T3746A163508960.en. Downloaded on 10 April 2020.
  2. ^ 今泉忠明『絶滅野生動物事典』(KADOKAWA<角川ソフィア文庫>、2020年ISBN 978-4-04-400527-6)p.85
  3. ^ W. Chris Wozencraft: Wolf. In: Andrew T. Smith, Yan Xie: A Guide to the Mammals of China. Princeton University Press, Princeton NJ 2008, ISBN 978-0-691-09984-2, S. 416–418.
  4. ^ 「海辺のオオカミ」『ナショナルジオグラフィック日本版』2015年10月号
  5. ^ 今泉忠明『野生イヌの百科』(第2版)データハウス〈動物百科〉、2007年、15頁。ISBN 9784887189157 
  6. ^ Sardella, Raffaele; Bertè, Davide; Iurino, Dawid Adam; Cherin, Marco; Tagliacozzo, Antonio (2014). “The wolf from Grotta Romanelli (Apulia, Italy) and its implications in the evolutionary history of Canis lupus in the Late Pleistocene of Southern Italy”. Quaternary International 328–329: 179–195. Bibcode2014QuInt.328..179S. doi:10.1016/j.quaint.2013.11.016. 
  7. ^ a b Wang, Xiaoming; Tedford, Richard H. (2008). Dogs: Their Fossil Relatives and Evolutionary History. Columbia University Press, New York. pp. 1–232. ISBN 978-0-231-13529-0. OCLC 502410693. https://books.google.com/books?id=LnWdpK7ctI0C 
  8. ^ a b c R.M. Nowak (2003). “Chapter 9 - Wolf evolution and taxonomy”. In Mech, L. David; Boitani, Luigi. Wolves: Behaviour, Ecology and Conservation. University of Chicago Press. pp. 239–258. ISBN 978-0-226-51696-7 
  9. ^ Vucetich, John A.; Smith, Douglas W.; Stahler, Daniel R. (2005-11). “Influence of harvest, climate and wolf predation on Yellowstone elk, 1961‐2004” (英語). Oikos 111 (2): 259–270. doi:10.1111/j.0030-1299.2005.14180.x. ISSN 0030-1299. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.0030-1299.2005.14180.x. 
  10. ^ Winnie, John A. (2012-12). “Predation risk, elk, and aspen: tests of a behaviorally mediated trophic cascade in the Greater Yellowstone Ecosystem” (英語). Ecology 93 (12): 2600–2614. doi:10.1890/11-1990.1. ISSN 0012-9658. https://esajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1890/11-1990.1. 
  11. ^ 吉行瑞子今泉吉典福井城内で射殺されたニホンオオカミ」『ANIMATE』第4巻、農大動物研究会、2003年、 オリジナルの2019年3月30日時点におけるアーカイブ、2019年5月6日閲覧 
  12. ^ a b “最後のニホンオオカミ 福井市(6)”. マイタウン福井 (朝日新聞社). (2007年1月9日). オリジナルの2007年10月6日時点におけるアーカイブ。. https://megalodon.jp/2007-1006-2236-27/mytown.asahi.com/fukui/news.php?k_id=19000130701090001 
  13. ^ Canis lupus hodophilax, Japanese wolf”. Natural History Museum Picture Library. The Trustees of the Natural History Museum, London. 2016年3月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月6日閲覧。
  14. ^ オオカミ、エゾオオカミ、狼 - アイヌと自然デジタル図鑑
  15. ^ ベヤリング・グウルド 著、今泉忠義 訳『民俗学の話』角川書店〈角川文庫〉、1955年、43頁。 
  16. ^ 佐久市志編纂委員会編纂『佐久市志 民俗編 下』(佐久市志刊行会、1990年)1119ページ
  17. ^ Uno Harva: Die religiösen Vorstellungen der altaischen Völker. FF Communications N:o 125. Suomalainen Tiedeakatemia, Helsinki 1938, S. 473
  18. ^ Im Führerhauptquartier (FHQ)
  19. ^ 『狼群作戦の黄昏』朝日ソノラマ新戦史シリーズ
  20. ^ 緑黄色社会、新曲「Mela!」が玉城ティナ出演"パルティ カラーリングミルク"CM曲に決定&先行配信スタート。クリエイター8名によるMVも本日4/13プレミア公開 Skream! 劇ロックエンタテインメント 2020年4月13日
  21. ^ 狐と兎:映画作品情報・あらすじ・評価|MOVIE WALKER PRESS 映画”. MOVIE WALKER PRESS. 2023年7月20日閲覧。
  22. ^ やっぱりおおかみ|福音館書店”. 福音館書店. 2023年7月21日閲覧。
  23. ^ 田中, 光二 (1984-08-01). 闇の牙. 集英社. ISBN 978-4-08-750781-2. https://www.amazon.co.jp/%E9%97%87%E3%81%AE%E7%89%99-%E9%9B%86%E8%8B%B1%E7%A4%BE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E7%94%B0%E4%B8%AD-%E5%85%89%E4%BA%8C/dp/4087507815 
  24. ^ 布浦, 翼 (1978-12-15). ワイルドブルー. 講談社. ISBN 978-4-06-106461-4. https://www.amazon.co.jp/%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC-%E5%88%A5%E5%86%8A%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%89KC-%E5%B8%83%E6%B5%A6-%E7%BF%BC/dp/4061064614 
  25. ^ 東京都古書籍商業協同組合『プチフラワー 昭和57年9月号 八百比丘尼/山岸凉子 w / 古書 森羅 / 古本、中古本、古書籍の通販は「日本の古本屋」https://www.kosho.or.jp/products/detail.php?product_id=427588755 
  26. ^ きつねのよめいり 1 | 吉田秋生 – 小学館コミック”. shogakukan-comic.jp. 2023年7月21日閲覧。






オオカミと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「オオカミ」の関連用語

1
100% |||||

2
100% |||||

3
96% |||||

4
96% |||||

5
96% |||||

6
90% |||||

7
90% |||||

8
90% |||||

9
90% |||||


オオカミのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



オオカミのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのオオカミ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS