エチオピア料理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/15 09:37 UTC 版)
スープ
インジェラの副菜として、ワットというシチューが食べられている。ワットはバルバリを使ったカイ・ワットと、バルバリを使わないアレチャ・ワットに大別される。肉、魚、野菜がワットの材料となり、バルバリ、カルダモン、ショウガ、フェヌグリーク、クミンなどの香辛料、香草が使われる。鶏肉とゆで卵を使ったドロ・ワットは最上級のワットで、これを供することがもっとも丁重なもてなしとされている[19]。
野菜
地中海沿岸部を除いたアフリカ大陸の中で、野菜の栽培が伝統的に続けられているのはエチオピアのみである[1]。エチオピアのキリスト教徒は、肉食が禁じられる年に200数十日ある断食の日には野菜の煮込み、ポテトフライ、生のトマトやタマネギなどを副菜として食している[20]。ヒヨコマメ(ガルバンゾ)のペーストを魚の形に整えるイェシンブラ・アッサは断食の日のための料理である[21]。
飲料
食事の際にはテラ(タラ)という酒が供される。テラは「エチオピアのビール」とも呼ばれ、古代メソポタミアのビールに近い特徴を持つ[22]。テラを蒸留して造るアラキという酒も飲まれているが[7]、アルコール度数が高いアラキはもっぱら一部の愛飲家に好まれている[23]。また、アジスアベバのベデレなど、エチオピアでは多くの地ビールも造られている[23]。
ハチミツから造る酒のタジ(タッジ)は庶民の酒であるテラに対する高級酒で、エチオピア皇帝が愛飲したことでも知られている[24]。タジはハチミツに酵母を加えて発酵させた酒で、ドライ、ミディアム・スイート、スイートなど様々な種類が存在する[23]。宮廷で造られていたタジが出される場面は兵士の激励、特別な宴会などに限られていたが、1920年代に入って一般の人間もタジを飲めるようになったと言われている[25]。
エチオピアのカッファ州は、コーヒーノキの原産地と考えられている[26]。エチオピア全土でコーヒーが飲まれるようになったのは19世紀末以降であるが、南西部ではそれよりも早い時期にコーヒーが利用されていたと考えられている[27]。エチオピアではコーヒーの豆を炒って粉にしたものを煮立てて飲まれ、コーヒーノキが育たない低地ではコーヒーの木の葉や豆を覆う外殻が煎じて飲まれる[28]。エチオピア高地には客人にコーヒーを出し、大勢の人間を集めて時間をかけてもてなす習慣があり、コーヒー・セレモニーの名前で知られるこのもてなしはエチオピアの観光名物の一つにもなっている[29]。また、コーヒーは飲用にされるほか、果肉はバターで煮て調理され、若葉は野菜として用いられる[26]。
代表的な料理
- インジェラ
- ワット - シチュー
- ドロ・ワット - 鶏肉とゆで卵のワット
- バグ・ワット - 羊肉のワット
- スガ・ワット - 牛肉のワット
- アサ・ワット - 身をほぐした魚のワット
- シュロ・ワット - 粉状の豆を使ったワット
- ムッスル・ワット - 粒状のレンズマメのワット
- アティクルト・ワット - 野菜のワット
- メティン・シュロ - 粉末のエンドウマメ、レンズマメ、ヒヨコマメなどを使った野菜のワット
- クックル - 羊肉などを使った肉のスープ
- キトゥフォ
- トュブス - ぶつ切りの肉のソテー
- ヤタクレテ・キルキル - ニンニクとショウガ入りの野菜の炒め煮
- イェミサー・セラタ - エシャロットとトウガラシで風味を付けたレンズマメのサラダ
- ウルゴ - ヨーグルト。ワットに混ぜて食べられる。
- ナミャファ - 硬質のヨーグルト
- ボンボリーノ - ドーナツ
- ^ a b 『世界の食べもの』合本5巻、136頁
- ^ 鈴木『高地民族の国エチオピア』、121頁
- ^ 岡倉『エチオピアを知るための50章』、36頁
- ^ 鈴木『高地民族の国エチオピア』、121-122頁
- ^ a b c 岡倉『エチオピアを知るための50章』、39頁
- ^ a b 鈴木『高地民族の国エチオピア』、123頁
- ^ a b 『世界の食べもの』合本5巻、139頁
- ^ 小川『アフリカ』、215-216頁
- ^ 岡倉『エチオピアを知るための50章』、40頁
- ^ 鈴木『高地民族の国エチオピア』、127-128頁
- ^ ヴァンダーポスト『アフリカ料理』、35頁
- ^ 「地球の歩き方」編集室・編『東アフリカ(2014‐2015年版)』、341頁
- ^ ヴァンダーポスト『アフリカ料理』、46-47頁
- ^ 鈴木『高地民族の国エチオピア』、124-125頁
- ^ a b c d 鈴木『高地民族の国エチオピア』、124頁
- ^ a b c 『世界の食べもの』合本5巻、138頁
- ^ 「地球の歩き方」編集室・編『東アフリカ(2014‐2015年版)』、340頁
- ^ ヴァンダーポスト『アフリカ料理』、40頁
- ^ 『世界の食べもの』合本5巻、137頁
- ^ 小川『アフリカ』、209頁
- ^ ヴァンダーポスト『アフリカ料理』、46頁
- ^ 鈴木『高地民族の国エチオピア』、125-126頁
- ^ a b c 岡倉『エチオピアを知るための50章』、47頁
- ^ 鈴木『高地民族の国エチオピア』、126頁
- ^ 岡倉『エチオピアを知るための50章』、48頁
- ^ a b 鈴木『高地民族の国エチオピア』、129頁
- ^ 『世界の食べもの』合本5巻、140頁
- ^ 岡倉『エチオピアを知るための50章』、45-46頁
- ^ 岡倉『エチオピアを知るための50章』、43-44頁
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