イヴ 各宗教におけるイヴ

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イヴ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/01 01:37 UTC 版)

各宗教におけるイヴ

ユダヤ教

古代においてさえ、互いに矛盾する2つの記述があった。1つは『創世記』1章27節の「神(Elohim)は自分のかたちに人を創造された。すなわち、神のかたちに創造し、男と女とに創造された。[10]」(Vayivra Elohim et-ha'adam betsalmo betselem Elohim bara oto zachar unekevah bara otam.[11])というもので、男女が同時に創造されたことが暗示されていると解釈される。もう1つは、『創世記』2章18節のアダムが孤独だったため、神がアダムの肋骨からイヴを作ったという記述である。この矛盾を解決するため、中世のラビはイヴと『創世記』1章27節に登場する最初の女性は別人であるという解釈を示した。

ミドラーシュ』や 『ベン・シラのアルファベット』では、この女性はアダムの下の位置での性交を嫌がり逃げたため、アダムは孤独になってしまったとされている。この最初の女性の名前は『ミドラーシュ』ではリリスとされ、他では夜の悪魔として描かれる。

『ベン・シラのアルファベット』ではさらに、リリスの後でイヴの前に作られたアダムの3番目の妻がいたと書かれている。この名前のない妻は、アダムと同様に「地面の塵」から作られたとされるが、アダムは彼女に近づこうとしなかった。また、彼女は無から作られ、神は最初に骨格、次に内臓、最後に肉を作ったとも言われている。

聖書には、アダムとイヴがエデンの園にどれくらいの期間留まっていたかについては明らかにしていない。しかしヨベル書第3章33節では、彼らは創造から8年目の4か月目の新月の日に追放されたと記述されている。他のユダヤ教の書物では、1日に満たなかったと述べているものもある。追放されてすぐ、イヴは最初の子供を生み、その後2番目の子供を産んだ。彼らはそれぞれカインとアベルと名付けられた。

"male and female He created them"という文の別の解釈では、神がアダムをもともと雌雄同体として作ったというものである。神は後にアダムとイヴを分離させ、2つに分かれた魂を結合させるために2人を一緒にすることを思いついた。

アダムの3人の子であるカイン、アベル、セトの名前は『創世記』にはっきり書かれているが、5章4節では、その他にも息子や娘がいたと述べられている。『ヨベル書』では、長女アワンと、カイン、アベル、セト、その他9人の兄とアワンの後に生まれた次女アズラの名前が書かれている。『ヨベル書』ではさらに、後にカインはアワンとセトはアズラと結婚したと書かれている。しかし『創世記注解』やその他の文献によると、カインにはLebudaという双子の姉妹、アベルにはQelimathという双子の姉妹がいたと書かれている。『アダムとイヴとサタンの対立』では、カインの双子の姉妹はルルワ、アベルの双子の姉妹はAkliaという名前になっている。

他の偽典では、エデンの園の外での生活がより詳細に描かれている。特に『アダムとエバの生涯[12]』(『モーセの黙示録』)は、エデンの園の外での彼らの生活の記述だけから構成されている。一般的に、ユダヤ教におけるイヴの罪は、子供を産む義務から外れた女性に何が起こるかの例として用いられる。

ユダヤ教では伝統的に、イヴはヘブロンマクペラの洞穴に葬られたと信じられている。

キリスト教

キリスト教ではイヴはしばしば性的誘惑の例として用いられるが、ユダヤ教ではこの役割はリリスが担っているため、見られない特徴である。さらにイヴを誘惑した蛇はサタンと解釈されることが多いが、『モーセ五書』では触れられていない。この主題を扱った書物は、ギリシア、ローマ、スラボニア、シリア、アルメニア、アラビア等にある。それらは間違いなくユダヤ教にまで遡っているが、現在に伝わる形では全体がキリスト教化されている。最も古く、ほとんどの部分がユダヤ教に基づくのはPrimary Adam Literatureである。その他に、『アダムとイヴとサタンの対立』[13]やシリア語の『宝の洞窟[14]がある。

ジャン・クーザン父(Jean Cousin)[15] エヴァ・プリマ・パンドラ[16] ルーブル美術館 1550年

イヴはアダムに生命の木の実を食べるよう唆したため、初期の教父は彼女やそれに続く女性を最初の罪人とし、特に堕罪はイヴの罪によるものとした。彼女はまた「悪魔の槍」、「不道徳の道」、「サソリの針」、「嘘の娘」、「地獄の監視員」、「平和の敵」、「最も危険な野獣」等とも呼ばれた。2世紀初頭にテルトゥリアヌスは女性の聴衆に対し、「お前は悪魔の門だ。」と言ったと言い、続けて全ての女性はキリストの死に対する責任があるからだと説明したという[17]。このように、イヴは世界に悪魔を放ったギリシア神話パンドラと同等と見なされている。

エレーヌ・ペイゲルスによると、アウグスティヌスは、人間を原罪に繋がる堕罪に永遠に怯える者と捉える自身の独特の見方を、イヴの罪のせいにしたと伝えられる。

キリスト教絵画におけるイヴは、その大部分がアダムを誘惑する女として描かれるが、ルネッサンス期にはさらに、エデンの園の蛇もイヴと同じ女性の顔を持って描かれることがしばしばあった。

1人の男性に1人の女性が与えられるアダムとイヴの話では、一夫一婦制が示唆されているという主張もある。

ルター派の教会では、イヴはアダムと共に12月19日を聖人暦として祝われる。

グノーシス主義

グノーシス主義では、イヴはまた別の役割を与えられている。例えば、彼女はしばしば至高の女性的位相が実体化したバルベーローと見なされている。このように、彼女は知恵、神の言葉の創造者とされている。別の文献では、生命と同一視されていることもある[18]。『アルコーンの本質』等では、Pistis Sophiaはイヴの娘でセトの妻のノーレアと同一視されている。

このようなグノーシス主義の信仰のため、女性は男性と平等と考えられ、予言者、教師、伝道者、信仰治療師、司祭、そしてさらに主教等に就いて尊敬されている。

イスラム教

クルアーンではイヴの名前は出てこないが、アダムの配偶者として登場する。イスラム教では伝統的に彼女のことを、同じ語源のحواء (Hawwāʾ、ハッワー)と読んでいる。アダムの配偶者についての言及は、スーラ2の30-39節、スーラ7の11-25節、スーラ15の26-42節、スーラ17の61-65節、スーラ18の50-51節、スーラ20の110-124節、スーラ38の71-85節に登場する。

クルアーンやハディースに含まれるアダムとイヴの物語は、聖書のものとは異なる。クルアーンでは、アダムとイヴが等しく罪を負う。クルアーンでは、イヴがアダムを誘惑して食べさせたとは書かれておらず、彼より先に食べたとさえ書かれていない。アダムとイヴが罪を犯し、神に許しを請うと神は両者を許したと書かれているだけである。イスラム教では、通常原罪が存在するとは考えられていない。

イスラム教では伝統的に、イヴはサウジアラビアジッダにある「イヴの墓」に葬られていると信じられている。


  1. ^ Sale, George. An Universal History, Part 1. 1. p. 38. http://books.google.com/books?id=fNg-AAAAYAAJ&pg=PA38&lpg=PA38&dq=tradition+%22death+of+eve%22+930&source=bl&ots=7CyG9Vdvcl&sig=duN95in5PHOe4M1Bs0oZM1r9UrY&hl=en&ei=GCzcTM2LFoS0lQfDv5GVCQ&sa=X&oi=book_result&ct=result&resnum=10&ved=0CDYQ6AEwCQ#v=onepage&q=tradition%20%22death%20of%20eve%22%20930&f=false 
  2. ^ ヘブライ語対訳英語聖書 Genesis 3:20
  3. ^ The Weidner "Chronicle" mentioning Kubaba from A.K. Grayson, Assyrian and Babylonian Chronicles (1975)
  4. ^ Munn, Mark (2004). "Kybele as Kubaba in a Lydo-Phrygian Context": Emory University cross-cultural conference "Hittites, Greeks and Their Neighbors in Central Anatolia" (Abstracts)
  5. ^ Kramer, Samuel Noah: "History Begins at Sumer: Thirty-Nine "Firsts" in Recorded History" (1956)
  6. ^ Genesis 3
  7. ^ This (Gen.3:17) is the point at which Adam is first used as a proper name.
  8. ^ Hebrew Havva, "life".
  9. ^ Genesis 4
  10. ^  創世記(口語訳). 創世記(口語訳)#1:27. - ウィキソース. )
  11. ^ Bereshit - Genesis 1 - Bereshith
  12. ^ 原始キリスト教世界 アダムとエバの生涯”. Barbaroi!. 2010年7月25日閲覧。
  13. ^ translated from the Ethiopic (1882) by Malan. This was first translated by Dillmann (Das christl. Adambuch des Morgenlandes, 1853), and the Ethiopic book first edited by Trump (Abh. d. Münch. Akad. xv., 1870-1881)
  14. ^ Die Schatzhöhle translated by Carl Bezold from three Syriac MSS. in 1883 and subsequently edited in Syriac in 1888
  15. ^ クーザンは「フォンテーヌブロー派」の画家で、この作品は彼の代表作であるとともにフランス絵画初の完全な裸婦像とされる(中野京子『名画の謎 ギリシャ神話篇』(文藝春秋 2011年)p.60)
  16. ^ 「かつてパンドラだったイヴ」という意味で、赤い壷はアンリ2世 (フランス王)のパリ入城祝典記念品とされる。
  17. ^ Tertullian, "De Cultu Feminarum", Book I Chapter I, Modesty in Apparel Becoming to Women in Memory of the Introduction of Sin Through a Woman (in "The Ante-Nicene Fathers")
  18. ^ Krosney, Herbert (2007) "The Lost Gospel: the quest for the Gospel of Judas Iscariot" (National Geographic)


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