インボイス方式 インボイス方式の概要

インボイス方式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/28 07:50 UTC 版)

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ヨーロッパにおけるインボイス方式

古くから国境を越える取引が盛んに行われてきたヨーロッパでは、インボイス方式は商取引慣行として定着してきた。商取引の情報を書面及び電子的形式で表現し発行するものである。

日本におけるインボイス方式(適格請求書等保存方式)

日本では、2023年(令和5年)10月1日から適格請求書等保存方式が導入される[1]適格請求書等保存方式においては、消費税の仕入税額控除の要件の1つとして、適格請求書発行事業者が交付する「適格請求書」の保存が必要となる[1][注釈 1]。この適格請求書発行事業者となるには、税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、登録を受ける必要がある[1][注釈 2]

沿革

日本では、消費税導入の1989年(平成元年)4月1日から1997年(平成9年)3月31日まで「帳簿方式」が[5]、1997年(平成9年)4月1日から2019年(平成31年)9月30日まで「請求書等保存方式」が採用されていた[6]。2019年(平成31年)10月1日から軽減税率制度が導入されたことに伴い、インボイス方式の導入が必要とされたが、現行制度から切り替えるための準備期間として、2019年(平成31年)10月1日から2023年(令和5年)9月30日まで「区分記載請求書等保存方式」が採用され、2023年(令和5年)10月1日から「適格請求書等保存方式」としてインボイス方式が導入される[7][8]

適格請求書等

適格請求書

適格請求書」とは、「売手が、買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段[1]」であり、下記の事項を記載した請求書、納品書などの書類で適格請求書発行事業者が交付したものをいう[9]

  1. 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  2. 課税資産の譲渡等を行った年月日
  3. 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
  4. 課税資産の譲渡等に係る税抜価額又は税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額及び適用税率
  5. 消費税額等
  6. 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

適格簡易請求書

適格請求書発行事業者が小売業などの事業者である場合には、「適格簡易請求書」として、適格請求書の代わりに下記の事項を記載した請求書、納品書などの書類を交付することができる[9]

  1. 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  2. 課税資産の譲渡等を行った年月日
  3. 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
  4. 課税資産の譲渡等に係る税抜価額又は税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額
  5. 消費税額等又は適用税率

適格簡易請求書は、適格請求書と異なり「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」の記載が不要であり、適格請求書では両方の記載が必要な消費税額等と適用税率についていずれか一方の記載のみで書類の記載事項としての要件を満たす[10]

なお、適格請求書も適格簡易請求書も、書式については規定がないため、上記の必要事項が記載されている書類であれば、その書類の名称や書き方を問わず、適格請求書・適格簡易請求書に該当することとなる[9]

適格返還請求書

適格請求書発行事業者が、売上げに係る対価の返還等(返品・値引き・割戻し)を行った場合には、「適格返還請求書」として、下記の事項を記載した請求書、納品書などの書類を交付するしなければならない[11]

  1. 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  2. 売上げに係る対価の返還等を行う年月日及び当該売上げに係る対価の返還等に係る課税資産の譲渡等を行った年月日
  3. 売上げに係る対価の返還等に係る課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
  4. 売上げに係る対価の返還等に係る税抜価額又は税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額
  5. 売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等又は適用税率

ただし、適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、売上げに係る対価の返還等に際し適格返還請求書を交付することが困難な課税資産の譲渡等を行う場合は、適格返還請求書の交付義務は免除される[12]

電磁的記録(電子インボイス)

上記のこれらの書類の交付の代わりに、電磁的記録(これらの書類の記載事項を記録した電子データ)の提供を行うことも可能である[13]。電磁的記録の提供には、光ディスク磁気テープなどの記録媒体のほか、EDI取引電子メールウェブサイトを通じた電子データの提供も含まれる[13]

誤りがあった場合

これらの書類の記載事項、電磁的記録として提供した事項に誤りがあった場合には、これらの書類を交付した他の事業者に対して、修正した書類の交付、修正した電磁的記録の提供をしなければならない[14]

適格請求書類似書類等

適格請求書発行事業者でない者は、適格請求書発行事業者が作成した適格請求書などであると誤認されるおそれのある表示をした書類を交付してはならない[13]

適格請求書発行事業者

適格請求書を交付することができるのは適格請求書発行事業者だけであり、適格請求書発行事業者とは、税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、登録を受けた課税事業者をいう[1][4]

適格請求書発行事業者には、適格請求書・適格簡易請求書・適格返還請求書の交付又は電磁的記録の提供[注釈 3]、適格請求書・適格簡易請求書・適格返還請求書の写し[注釈 4]又は電磁的記録の保存[注釈 5]の義務が課される[13]

適格請求書発行事業者として登録された事業者は、登録を取り消さない限り、小規模事業者に係る納税義務の免除の規定を受けることができない(いわゆる免税事業者になれない)[15][3]

影響

適格請求書等保存方式において、免税事業者は適格請求書を発行することができないため、仕入税額控除の適用を受けようとする事業者は取引先として免税事業者より課税事業者(適格請求書発行事業者)を進んで選ぶと考えられる[16][17][注釈 6]。免税事業者を理由として選ばれなくなることを回避するために、適格請求書発行事業者として登録すれば、その事業者は本来であれば免税とされるはずの小規模事業者であっても課税事業者となることを選択せざるを得なくなる[17]。なお、適格請求書等保存方式自体が、益税の発生(本来は納税されるはずの消費税が免税事業者の手元に利益として残ること)を解消するための措置として導入されているという面もある[18]

また、適格請求書発行事業者・仕入税額控除を行う事業者は、適格請求書の保管をはじめとして、登録番号の確認、課税・非課税・不課税の判断、標準税率適用・軽減税率適用の判断などを行わねばならず、税務当局においても、登録番号の付与・管理を行うという事務負担が新たに生じることとなる[12][17]

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 簡易課税制度を選択している場合、適格請求書の保存は仕入税額控除の要件とならない[2]
  2. ^ この申請書の提出は2021年(令和3年)10月1日から可能であり、適格請求書等保存方式の導入と同時に登録を受けるためには原則として2023年(令和5年)3月31日までに提出する必要がある[3][4]
  3. ^ 適格請求書を交付することが困難な場合を除く[13]
  4. ^ 写しには、書類の複写のほか、レジジャーナルなどの記載事項が確認できる程度の記載がされているもの含む[13]
  5. ^ 電磁的記録の保存には、タイムスタンプを付して保存する、訂正・削除を行った場合にその事実及び内容を確認することができる電子計算機処理システム、または訂正・削除することができない電子計算機処理システムを使用して保存することなどの一定の措置が必要となり、電磁的記録を印刷して保存する場合には、整然とした形式および明瞭な状態で出力する必要がある[13]
  6. ^ 経過措置として、適格請求書等保存方式導入前の(従来の)免税事業者からの仕入について、2023年(令和5年)10月1日から2026年(令和8年)9月30日まではその仕入税額の80%が、2026年(令和8年)10月1日から2029年(令和11年)9月30日まではその仕入税額の50%が課税仕入れに係る消費税額とみなされる[18]

出典

  1. ^ a b c d e 手引き 2020, p. 55.
  2. ^ 手引き 2020, p. 66.
  3. ^ a b 手引き 2020, p. 56.
  4. ^ a b [手続名]適格請求書発行事業者の登録申請手続”. 国税庁. 2020年12月28日閲覧。
  5. ^ 山田 2020, p. 73.
  6. ^ 山田 2020, p. 29.
  7. ^ 山田 2020, p. 30.
  8. ^ 適格請求書等保存方式の導入について”. 国税庁 (2020年4月1日). 2020年12月28日閲覧。
  9. ^ a b c 手引き 2020, p. 58.
  10. ^ 山田 2020, pp. 35-36.
  11. ^ 手引き 2020, p. 61.
  12. ^ a b 山田 2020, p. 36.
  13. ^ a b c d e f g 手引き 2020, p. 57.
  14. ^ 手引き 2020, p. 60.
  15. ^ 山田 2020, p. 38.
  16. ^ 山田 2020, p. 43.
  17. ^ a b c 消費税インボイス 個人事業主・フリーランスの営業はどうなる?軽減税率、インボイス、消費税10%引き上げの問題点”. 全国商工団体連合会. 2020年12月28日閲覧。
  18. ^ a b 金本悠希 (2018年12月12日). “税率引き上げより怖い消費税の「インボイス制度」”. 大和総研グループ. 2020年12月28日閲覧。


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