インフレーション 分類

インフレーション

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 15:07 UTC 版)

分類

実物的要因

戦争や産業構造破壊により、供給が需要を大幅に下回ることによって発生するインフレ。第二次大戦終戦直後の日本(1946年)では300%強のインフレ率を記録している[12]。また、ジンバブエでは、政策により白人農家が国外に追い出され農業構造が破壊されたところに旱魃が追い討ちをかけたことにより極度の物不足が発生、最終的に2億3000万%という超ハイパーインフレーションとなった[13]

需要

需要側に原因があるインフレーションで、需要超過インフレーション(需要牽引型インフレーション、ディマンドプル・インフレーション、demand-pull inflation)とも呼ばれる。需要の増大(需要曲線の上方シフト)により、価格が高くても購買意欲が衰えないので物価は上昇する。この場合、供給曲線が垂直である(すなわち生産していない)場合を除いて景気はよくなる。

1973年から1975年にかけての日本のインフレの原因は、オイルショックに注目が集まるが、変動相場制移行直前の短資流入による過剰流動性、「列島改造ブーム」による過剰な建設需要も大きな要因である[要出典]

供給

供給曲線の上方シフトに原因があるインフレで、原価上昇インフレーション(コストプッシュ・インフレーション、cost-push inflation)とも呼ばれる。多くの場合、景気が悪化しスタグフレーションか、それに近い状態になる。通常為替レートが下落すると、輸入物価が上昇してインフレを引き起こすと同時に、企業が抱える外貨建ての債務の返済負担が膨らむ[14]

原価上昇は総供給が上にシフトするので、実質GDPは減少する[15]。一方で、需要超過は総需要が上にシフトするので、実質GDPは増加する[15]。つまり、実質GDPの動きで原価上昇か需要超過かは判別できる[15]景気の過熱によって物価が上昇しているのかどうかを判断するには、消費者物価指数ではなくGDPデフレーターを見なければならない[16]

原価インフレーション(コストインフレーション)
賃金・材料等の高騰によって発生する。原油価格の高騰によるインフレーションや消費増税によるスタグフレーションが典型的な例である。
構造インフレーション
産業によって成長に格差がある場合、生産性の低い産業の物価が高くなり発生する。例えば効率の良い製造業で生産性が上がり賃金が上昇したとする。これに影響を受けてサービス業で生産性向上以上に賃金が上昇するとサービス料を上げざるを得なくなるため、インフレーションを招く。
輸出インフレーション
輸出の増大により発生する。企業が製品を輸出に振り向けたことにより、国内市場向けの供給量が結果的に減って発生する。幕末期に生糸などの輸出が急増し、インフレーションが発生している。このパターンは乗数効果で総需要が増大しているため、需要インフレの側面もある。
輸入インフレーション
他国の輸入を通じて国外のインフレーションが国内に影響し発生する。例えば穀物を輸入していた国が、輸出元の国の内需が増加したり輸出元が他の需要国へ輸出を振り分けた場合などに穀物の輸入が減少し、穀物価格が上昇するといった具合である。実際に中国が穀物純輸入国に転じた際、トウモロコシ市場で価格急騰が起きたことがある。
キャッチアップインフレーション
賃金や物価統制を行っている体制が、市場経済に移行する際に発生することが多い。米国および日本で1970年代にかけて発生した。欧州では冷戦の終結および欧州中央銀行(ECB)拡大による東欧諸国の自由主義諸国への経済統合により、低賃金諸国での賃金・サービス価格の上昇によるキャッチアップインフレが発生している[17]

貨幣的要因

貨幣の供給量が増えることによって発生する。貨幣の供給増加は、他のあらゆる財・サービスに対する貨幣の相対価値を低下させるが、これはインフレーションそのものである。さらに、貨幣の供給増加は貨幣に対する債券の相対価値を高めることになり名目金利を低下させる。このため通常は投資が増大し、需要増大をもたらす。そのプロセスが最終的に、需要インフレに帰結することでもインフレーションに結びつく。公開市場操作などの中央銀行による通常の貨幣供給調節以外に、貨幣の供給が増える特段の理由がある場合には、「財政インフレ」「信用インフレ」「為替インフレ」などと呼んで区分けることもある。

財政インフレーション
政府の発行した公債中央銀行が引き受けること(財政ファイナンス、マネタイゼーション)により、貨幣の供給が増加して発生するインフレーション[18]。金融緩和を経由した効果に加えて、財政支出による有効需要創出効果によって需要インフレも発生する。ハイパーインフレは財政ファイナンスを原因とすることが多い。
信用インフレーション
市中銀行が貸付や信用保証を増加させることによって信用貨幣の供給量が増大することから発生するインフレーション。
為替インフレーション
外国為替市場を経由して通貨が大量に供給されることで発生するインフレーション。戦前の金解禁における「為替インフレーション論争」を特に指す場合もある[19][20][21][22]。なお、当時は固定相場制であり、現在の変動相場制とは、外国為替市場の動きが貨幣供給量に与える影響が異なることに留意が必要である。

速度別

クリーピングインフレーション
ゆるやかに進むインフレーション。インフレ率は年数%で、好況期に見られる。経済が健全に成長していると見なされ、望ましい状態と言われることが多い。「マイルド・インフレ」とも呼ばれる。
ギャロッピングインフレーション
早足に進むインフレーション。馬の早足を表す「ギャロップ」から。インフレ率は年率10%超-数十%程度を指すことが多い。スタグフレーションに伴って生じることがある。
ハイパーインフレーション

  1. ^ Wyplosz & Burda 1997 (Glossary)
  2. ^ Blanchard 2000 (Glossary)
  3. ^ Barro 1997 (Glossary)
  4. ^ Abel & Bernanke 1995 (Glossary)
  5. ^ Why price stability? Archived October 14, 2008, at the Wayback Machine., Central Bank of Iceland, Accessed on September 11, 2008.
  6. ^ Paul H. Walgenbach, Norman E. Dittrich and Ernest I. Hanson, (1973), Financial Accounting, New York: Harcourt Brace Javonovich, Inc. Page 429. "The Measuring Unit principle: The unit of measure in accounting shall be the base money unit of the most relevant currency. This principle also assumes that the unit of measure is stable; that is, changes in its general purchasing power are not considered sufficiently important to require adjustments to the basic financial statements."
  7. ^ Robert Barro and Vittorio Grilli (1994), European Macroeconomics, Ch. 8, p. 139, Fig. 8.1. Macmillan, ISBN 0-333-57764-7.
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  9. ^ Mankiw 2002, pp. 81–107
  10. ^ Abel & Bernanke 2005, pp. 266–269
  11. ^ Hummel, Jeffrey Rogers. "Death and Taxes, Including Inflation: the Public versus Economists" (January 2007). p. 56
  12. ^ 三橋貴明 『高校生でもわかる日本経済のすごさ!』 彩図社、2009年、66頁。
  13. ^ 三橋貴明 『高校生でもわかる日本経済のすごさ!』 彩図社、2009年、65頁。
  14. ^ 三和総合研究所編 『30語でわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2000年、258頁。
  15. ^ a b c 政治・社会 【日本の解き方】岩田日銀副総裁の本音を読む 財政政策求めるメッセージかZAKZAK 2014年5月31日
  16. ^ 森永卓郎 『「騙されない!」ための経済学 モリタク流・経済ニュースのウラ読み術』 PHP研究所〈PHPビジネス新書〉、2008年、96頁。
  17. ^ [1][2]
  18. ^ 「財政赤字の問題点について」[3] P.2、「デフレ、不良債権問題と金融政策」深尾光洋(財務省財務総合政策研究所2002.8)[4] P.40
  19. ^ Cinii文献情報[5]
  20. ^ 吉田賢一, 「為替相場の「名目的」変動の購買力平価説:「外国為替相場変動の二重性」再論」『經濟學研究』 46巻 1号 p.53-68 1996年, 北海道大学經濟學部, ISSN 0451-6265
  21. ^ 吉田賢一, 「金解禁(昭和5~6年)の歴史的意義:井上準之助の緊縮財政政策」『經濟學研究』 38巻 3号 p.47-78 1988年, 北海道大学經濟學部, ISSN 0451-6265
  22. ^ 藤沢正也, 「インフレーションのマネタリイファクター : ハロッドのインフレ対策論をめぐって」『商学討究』 10巻 3号 p.1-30 1960年, 小樽商科大学, ISSN 04748638
  23. ^ a b スティーヴン・ランズバーグ 『ランチタイムの経済学-日常生活の謎をやさしく解き明かす』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2004年、113頁。
  24. ^ 浜田宏一・内閣官房参与 核心インタビュー 「アベノミクスがもたらす金融政策の大転換 インフレ目標と日銀法改正で日本経済を取り戻す」 ダイヤモンド・オンライン 2013年1月20日
  25. ^ 「白川総裁は誠実だったが、国民を苦しめた」 浜田宏一 イェール大学名誉教授独占インタビュー 東洋経済オンライン 2013年2月8日
  26. ^ 高橋洋一の俗論を撃つ! 現在のインフレは金融政策の効果 懸念は1997年型に近づく消費税増税の影響ダイヤモンド・オンライン 2014年5月29日
  27. ^ スティーヴン・ランズバーグ 『ランチタイムの経済学-日常生活の謎をやさしく解き明かす』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2004年、330頁。
  28. ^ スティーヴン・ランズバーグ 『ランチタイムの経済学-日常生活の謎をやさしく解き明かす』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2004年、331頁。
  29. ^ a b 大型増税で個人消費は落ち込む--総需要安定化政策を徹底すべき / 村上尚己 / エコノミストSYNODOS -シノドス- 2014年8月12日
  30. ^ 原田泰・大和総研 『新社会人に効く日本経済入門』 毎日新聞社〈毎日ビジネスブックス〉、2009年、126頁。
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  32. ^ 経済学者伊東光晴氏「聞きかじりだから安倍首相は嘘をつく」日刊ゲンダイ 2014年8月10日
  33. ^ スティーヴン・ランズバーグ 『ランチタイムの経済学-日常生活の謎をやさしく解き明かす』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2004年、114頁。
  34. ^ 岩田規久男 『日本経済にいま何が起きているのか』 東洋経済新報社、2005年、40頁。
  35. ^ 岩田規久男 『景気ってなんだろう』 筑摩書房〈ちくまプリマー新書〉、2008年、153頁。
  36. ^ 岩田規久男 『経済学的思考のすすめ』 筑摩書房、2011年、168頁。
  37. ^ 高橋洋一 『日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える』 光文社〈光文社新書〉、2010年、55頁。
  38. ^ 竹中平蔵 『竹中先生、経済ってなんですか?』 ナレッジフォア、2008年、76頁。
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  40. ^ 日銀新総裁はゼロ金利に復帰を PHPビジネスオンライン 衆知 2008年5月8日
  41. ^ ジョセフ・スティグリッツ教授 特別寄稿 「もう同じ過ちは繰り返すな! 2009年に得た厳しい教訓」 ダイヤモンド・オンライン 2010年1月5日
  42. ^ 円高なくして成長なし PHPビジネスオンライン 衆知 2008年9月16日
  43. ^ a b Roger Dobson (2002年1月27日). “How Alexander caused a great Babylon inflation”. インデペンデント. https://www.independent.co.uk/news/world/europe/how-alexander-caused-a-great-babylon-inflation-9213402.html 2019年3月28日閲覧。 
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  50. ^ 『世界同時不況』を書いた岩田規久男氏に聞く 東洋経済オンライン 2009年4月28日
  51. ^ 原田泰・大和総研 『新社会人に効く日本経済入門』 毎日新聞社〈毎日ビジネスブックス〉、2009年、61頁。
  52. ^ 岩田規久男編 『昭和恐慌の研究』 東洋経済新報社、2004年、195頁。






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