インターネット 社会的影響

インターネット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/15 18:52 UTC 版)

社会的影響

WWWが発明された1990年から2010年までの20年間に、インターネットは学術ネットワークから日常生活のインフラへと変革を遂げた。それに伴い情報の流通量の激増と取得コストの大幅な低下が起き、世界の在り方そのものが大きな変革を遂げ、ユビキタス社会となった。この変革はIT革命デジタルトランスフォーメーション(DX)などと呼ばれてきた。

グローバリゼーションの加速

1990年代からグローバリゼーションの急加速は、インターネットや情報技術の進歩による部分が非常に大きい[24]

たとえば文化的グローバリゼーションに関しては、2007年より動画共有サービス[注 3]、2010年よりSoundCloudなどの音声ファイル共有サービスを用いて、国境を越えて音楽を発信したり発見したりすることが活発化した。一般のリスナーでも音楽関係者でも、国境や文化圏を越えて異ジャンルの音楽に触れることができるようになり、隔たっていた様々な音楽の融合も加速した。政治的グローバリゼーションでは、国境の向こう側の政治的状況もよく伝わり、容易に連絡も取り合えるので、自国の状況も他国と比較しつつ把握できるようになり、グローバル規模での民主化も促進された[25]。2010年から2012年にかけてのアラブの春において、インターネットによって連絡を取り議論を深めていった市民が独裁政治を倒したのは、ひとつの例である[26]。なおこの政治的グローバリゼーションは民主化の方向にばかり進んだわけではなく、例えばイスラーム圏のイスラーム教徒同士も国境を越えて容易に交流できるようになり、それを利用してISIL(イスラム国)などの原理主義軍事勢力がグローバル規模で戦闘員の募集を行うなどの弊害も起こった。

従来型メディアの位置づけの低下

インターネットの普及は従来の産業にも変化をもたらした。ネット普及により大きな影響を受けた産業の一つとして、マスメディアが挙げられる。新聞テレビといった従来型のマスメディアはネット利用の急増に伴って、相対的位置付けの低下が徐々に進行している。日本を例にとれば、1995年から2010年にかけてインターネットの利用が激増する[27]一方で、テレビ視聴時間は微減[28]、新聞[29]・ラジオ[30]・雑誌[31]は減少傾向にある。アメリカやヨーロッパにおいては特に従来の紙による新聞の販売が漸減しており、2009年ごろから新聞社の規模縮小や廃刊が続いている[32]。オンライン中心の社会となった結果、従来のマスメディアもオンラインメディアへと変化しつつある。

情報格差

世界的に常時接続環境が提供されているのは都市部が中心で、先進国でも山間部や離島などでは不十分なものだった。さらに発展途上国に至っては通信も電力も存在していない地域があり、情報格差が問題になっていた[33]。その都市部や先進国でも当初、パソコンが高価だったことや操作体系が複雑だったことから、未来学者のアルビン・トフラーは、パソコンスキルの有無や経済力で情報格差が生じると予想していた。だが後に「誤算があった」として、パソコンの低価格化などにより誰にでも広く普及すると修正した。また操作方法もインターネットに対応したフィーチャーフォン(3G携帯)、スマートフォンタブレット端末、あるいはスマートテレビなどの登場で、かつてのパソコンと比べ格段に容易になった。これによりインターネットについての高度な知識やスキルは不要となり、操作スキルの有無による格差もなくなっていった。発展途上国では、インターネットカフェがインターネットの普及を支えていたが、2013年までに格安パソコンや格安スマートフォンが普及した。2010年代後半では、たとえばアフリカのケニアでもスマホが安価に街の個人商店規模の中古業者などによって販売されるようになっていて、街から離れて草原で狩猟で生活しているようなケニア人ですら、数人にひとりがスマホを手に入れ、インターネット接続しそこで得た情報を仲間と共有するような時代になった。

ただ、世界的に見て利用者の割合が圧倒的に増えた結果、その割合が増えれば増えるほど、逆に、いまだに存在する高齢者の一部などのインターネット未利用者にとっての情報格差は、より一層深刻な状態になっている。インターネットへのより平等なアクセスを持つ国は、より高いスキル能力を持つ国でもある。ドメイン全体での国のスキルの習熟度とインターネットを使用している人口の割合の間には、有意な正の相関関係(65%)がある[34]

テレワークの普及

1990年代後半からは自宅でPCとインターネットを使って仕事を行うSOHOが、2010年代からは場所を選ばないノマドワークが流行したが、あくまでも特殊な働き方の1つに過ぎなかった。しかし、2020年新型コロナウイルスのパンデミック以降は直接の対面を避けて働く人が大幅に増え、場所を問わない働き方全てがテレワークとして集約され普及した。今後は全ての分野で急速に遠隔化が進むと予想されている。


注釈

  1. ^ そのため別冊宝島2611『80年代アイドルcollection』p.93.には、1980年代サブカル・流行一覧にインターネットの誕生が紹介されている
  2. ^ 同時期の日本では、1999年2月に、NTTドコモがi-modeサービスを提供しはじめ、携帯電話でもインターネットへの接続サービスが提供されるようになり、携帯電話でのインターネット接続も一般化した。
  3. ^ YouTubeニコニコ動画など

出典

  1. ^ 「メディアリテラシ」(Computer Science Library 15)p68 植田祐子・増永良文著 サイエンス社 2013年8月10日初版発行
  2. ^ 多くの英字メディアが採用するAPスタイルガイド、固有名詞扱いだった「Internet」を一般名詞扱いの「internet」へ” (2016年4月7日). 2017年1月15日閲覧。
  3. ^ ウェブ コトバンク 2021年10月7日閲覧。
  4. ^ 岩崎宰守 (2016年10月3日). “米国政府がルートDNSや、IPアドレス管理などの“IANA機能”監督権限を手放す -INTERNET Watch”. インプレス. 2016年10月18日閲覧。
  5. ^ 「インターネット」p59-60 村井純 岩波書店 1995年11月30日第1刷発行
  6. ^ 「メディアリテラシ」(Computer Science Library 15)p80 植田祐子・増永良文著 サイエンス社 2013年8月10日初版発行
  7. ^ World IPv6 Launch
  8. ^ State of the Internet IPv6 Adoption Visualization - Akamai
  9. ^ "Percentage of Individuals using the Internet 2000-2012", International Telecommunications Union (Geneva), June 2013, retrieved 22 June 2013
  10. ^ Freedom on the Net 2018”. Freedom House (2018年11月). 2018年11月1日閲覧。
  11. ^ OpenNet Initiative "Summarized global Internet filtering data spreadsheet" Archived 10 January 2012 at the Wayback Machine., 8 November 2011 and "Country Profiles" Archived 26 August 2011 at the Wayback Machine., the OpenNet Initiative is a collaborative partnership of the Citizen Lab at the Munk School of Global Affairs, University of Toronto; the Berkman Center for Internet & Society at Harvard University; and the SecDev Group, Ottawa
  12. ^ "Internet Enemies", Enemies of the Internet 2014: Entities at the heart of censorship and surveillance, Reporters Without Borders (Paris), 11 March 2014. Retrieved 24 June 2014.
  13. ^ Internet Enemies, Reporters Without Borders (Paris), 12 March 2012
  14. ^ Man-Computer Symbiosis 「人間とコンピュータの共生」 1960年3月
  15. ^ インターネットが40周年 最初に送られたメッセージは「LO」 - ITmedia News
  16. ^ 40th Anniversary of the Internet / UCLA Spotlight
  17. ^ インターネット 歴史の一幕:JUNETの誕生 - JPNIC ニュースレターNo.29
  18. ^ 『インターネットの秘密』24ページ。
  19. ^ 「インターネット」p155-156 村井純 岩波書店 1995年11月30日第1刷発行
  20. ^ "BATTLE FOR THE SOUL OF THE INTERNET". TIME, 1994年7月25日。
  21. ^ 低年齢層の子供のインターネット利用環境実態調査 - 内閣府
  22. ^ 0~9歳児の約40%がネット利用 内閣府調査 | NHKニュース[リンク切れ]
  23. ^ ネット利用、スマホがPCを逆転 総務省調査
  24. ^ 「グローバリゼーションと開発の主要課題」p34 大坪滋(「グローバリゼーションと開発」所収)大坪滋編 勁草書房 2009年2月25日第1刷第1版発行
  25. ^ 「Next教科書シリーズ 政治学」p158-159 山田光矢編 弘文堂 2011年3月15日初版1刷
  26. ^ 「中東・北アフリカの体制崩壊と民主化 MENA市民革命のゆくえ」p242-243 福富満久 岩波書店 2011年10月18日第1刷発行
  27. ^ 「メディアと日本人」p70-71 橋元良明 岩波新書 2011年3月18日第1刷
  28. ^ 「メディアと日本人」p54 橋元良明 岩波新書 2011年3月18日第1刷
  29. ^ 「メディアと日本人」p64 橋元良明 岩波新書 2011年3月18日第1刷
  30. ^ 「メディアと日本人」p79 橋元良明 岩波新書 2011年3月18日第1刷
  31. ^ 「メディアと日本人」p87 橋元良明 岩波新書 2011年3月18日第1刷
  32. ^ 「メディアとジャーナリズムの理論 基礎理論から実践的なジャーナリズム論へ」p210 仲川秀樹・塚越孝著 同友館 2011年8月22日
  33. ^ 「メディア学の現在 新版」p128 山口功二・渡辺武達・岡満男編 世界思想社 2001年4月20日第1刷
  34. ^ Announcing the Coursera 2020 Global Skills Index” (英語). Coursera Blog (2020年7月16日). 2020年11月11日閲覧。


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