イリジウム 名称

イリジウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/19 01:20 UTC 版)

名称

「イリジウム」という名は、その塩類が、虹のように様々な色調を示す事から、ギリシャ神話の虹の女神イリスにちなんで名付けられた[2]

所在

地球の地殻

イリジウムは白金の精錬時に得られる副産物として採取されている[3]。このためプラチナの生産量に、イリジウムの生産量も依存する。ただ、地球地殻中での濃度は0.001 ppmppb)に過ぎず[4][注釈 1]、イリジウムの1年間の採掘量は、4トン程度と少ない。このため、レアメタル(希少金属)として扱われている。

なお地殻中でも偏在が見られ、イリジウムの産出量の95パーセントを南アフリカ共和国が占めており、南アフリカ共和国のブッシュフェルトの埋蔵量は、現在知られている中で最大である。この他には、ロシアのノリリスクや、カナダのサドバリーでも採掘されており、僅かながらアメリカ合衆国でも発見されている。

その他の場所

このように地球の地殻中では希少だが、地球内部のマントルには、地殻よりも遥かに高濃度でイリジウムが含まれている。また隕石にも、より高濃度でイリジウムが含まれており、その濃度は0.5 ppm以上であるとされている。

特殊な地層中に含まれるイリジウム

恐竜絶滅に関する議論で、白亜紀古第三紀の境界の地層中に大量のイリジウムを含んだ地層であるK-Pg境界層が、しばしば登場してきた。イリジウムは、地表では非常に少ない金属であるため、これは隕石または地球の深部由来の物と判断され、これをユカタン半島への隕石の衝突を示す証拠であると言及されたり、デカン高原を形成した破局的な噴火が発生した証拠であると言及されたりしてきた。

性質

物理的性質

常温常圧で安定なイリジウムの結晶構造は、面心立方構造 (FCC)である。常温常圧におかれたイリジウムは、展延性に乏しく、非常に硬いため、加工も難しい。

常圧におけるイリジウムの融点は 2466 ℃、沸点は4428 ℃である。このように融点も高いため、そのままでは加工や成形を行う事が困難であり、一般的には粉末にしたイリジウム合金を焼結して使用する場合が多い。

イリジウム単体の密度22.562 g/cm3[5]であり、比重は全元素中で2番目に大きい[注釈 2]。かつてはイリジウム22.65 g/cm3、オスミウム22.61 g/cm3とされ、イリジウムが全元素中最大の比重とされてきたものの、計算時の原子数が間違っていたため修正された[6]

化学的性質

イリジウムの単体は、一般的なアルカリとは反応せず、常温では王水ともほとんど反応しない。せいぜい、粉末にすれば僅かに王水に溶ける程度である。常温では酸素とも反応が難く、貴金属として扱われる。このように反応性が低いため、Ir-10Al合金化する事で優れた耐酸化性能を与えられる[7]

しかしながら、高温でフッ素塩素、酸素と反応する。また、高温酸化雰囲気中では揮発性酸化物を生成する[8]。なお、イリジウムは、-1, 0, +2, +3, +4, +6価の原子価を取り得る。参考までに、酸素と化合したイリジウムで安定なのは、+4価の二酸化イリジウムである。


注釈

  1. ^ 地球の地殻中では、オスミウムとロジウムに次ぎ、イリジウムは3番目に低濃度の元素である。
  2. ^ 密度が最大の元素はオスミウム(Os)で、その密度は、22.587 g/cm3である。

出典

  1. ^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds, in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.
  2. ^ a b 桜井弘『元素111の新知識』講談社、1997年10月20日、314頁。ISBN 4-06-257192-7 
  3. ^ a b 御手洗 容子 『白金族金属の構造材料への応用』 まてりあ Vol.54 (2015) No.7 pp.339-342, doi:10.2320/materia.54.339
  4. ^ The Element Iridium”. It's Elemental. Jefferson Lab. 2016年10月1日閲覧。
  5. ^ J. W. Arblaster: Densities of Osmium and Iridium, in: Platinum Metals Review, 1989, 33, 1, S. 14–16; Volltext.
  6. ^ グレイ(2010)
  7. ^ a b 御手洗容子、村上秀之 『Ir 基合金の高温耐酸化性』 まてりあ Vol.52 (2013) No.9 p.440-444, doi:10.2320/materia.52.440
  8. ^ J. H. Carpenter: J. Less-common Met., 152(1989), 35-45., doi:10.1016/0022-5088(89)90069-6
  9. ^ イリジウムルツボ 株式会社 フルヤ金属
  10. ^ 従来の約20倍の耐久性を持つ超高温用熱電 (PDF)
  11. ^ 小倉秀樹 ほか、「1950℃付近におけるイリジウム-ロジウム熱電対の評価技術」 センシングフォーラム資料 31, 234-238, 2014-09-25, NAID 40020353679
  12. ^ 貴金属について”. 日本ジュエリー協会. 2017年5月1日閲覧。
  13. ^ Luxury Iridium Jewelry”. American Elements. 2017年5月1日閲覧。


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