イラク 概要

イラク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/09 12:48 UTC 版)

概要

チグリス川ユーフラテス川流域を中心とする世界最古の文明メソポタミア文明(シュメール文明)を擁した地である[5]。8世紀のアッバース朝首都をイラクのバグダードに置き[5]貿易イスラム教の中心地として栄えた[6]。アッバース朝衰退後の10世紀からは異民族支配を受け、16世紀からはオスマン帝国の属州となった[6]第一次世界大戦イギリス軍占領され、戦後イギリス委任統治領メソポタミアとなった[5]1932年に独立王国となり、1958年の軍部クーデター「7月14日革命」で共和制になった[7]。その後もクーデターが相次ぎ、1979年からサダム・フセイン独裁体制となった。クルド人自治問題、イラン・イラク戦争湾岸戦争の敗北、経済制裁などの難問に強権で対処したが、2003年に米英軍の攻撃を受け、政権は崩壊[6]。2005年10月に国民投票によって新憲法が承認され[5]、以降、民主選挙による政府が樹立された[8]。しばらく治安対策や復興支援のために米軍駐留が続いたが、2011年に米軍が撤収した[5]

民主化以降の政治体制は議院内閣制であり、議会は一院制で、州ごとの比例代表制および少数派を優先した全国区の比例代表制で選出される。任期は4年。元首である大統領は議会で選出され、大統領の任期も連動して4年である。大統領が任命する首相行政権を握る[5]

経済面では北部と北東部および南部で採掘される石油が豊富(世界5位)で、石油輸出が財政に占める割合が9割以上である[9][7]。特に近年は原油生産量が急速に上昇している[10]。同時に政府は石油依存体質からの脱却を目指している[9]

2020年の米国CIAの調査によれば人口は約3887万人で、民族はアラブ人シーア派約6割、スンニ派約2割)、クルド人(約2割、多くはスンニ派)、トルクメン人アッシリア人などから構成される[9]。言語はアラビア語クルド語が公用語である[6]

地理としては国土の中心をなすのはチグリス川とユーフラテス川が潤すメソポタミア平原であり、「肥沃な三日月地帯」の東部を占めている[7]。北はトルコ、東はイラン、西はシリアヨルダン、南はサウジアラビアクウェートに接し、南部の一部はペルシア湾(アラビア湾)に臨んでいる[5]


注釈

  1. ^ 4つのクルド地方では第一公用語
  2. ^ クルド人自治区の首府はアルビール
  3. ^ 3名の主権評議会、カーシムが首相・国防・最高司令官を兼任、アーリフを副首相兼内務大臣、自由将校団から数名登用、国民民主党・バアス党・共産党から文民の登用。カーシムはイラク民族主義を基本とする社会改革を目指した。アーリフはアラブ民族主義者。
  4. ^ かつてはハジ・イブラヒーム山(3600 m)が最高峰とされていた。
  5. ^ いずれもアジア人初である。しかし、2022年時点では韓国代表ソン・フンミンの5ポイント獲得で「11位」がアジア最高記録となっている。

出典

  1. ^ イラクにおける新大統領の選出及び次期首相候補の指名について”. 外務省. 2022年10月24日閲覧。
  2. ^ THE WORLD BANK 2020 イラク” (英語). WORLD BANK (2020年). 2021年11月11日閲覧。
  3. ^ THE WORLD BANK 2020 イラク” (英語). WORLD BANK (2020年). 2021年11月11日閲覧。
  4. ^ a b c d e f World Economic Outlook Database, October 2021” (英語). IMF (2021年10月). 2021年11月11日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g 日本大百科全書(ニッポニカ)
  6. ^ a b c d 百科事典マイペディア
  7. ^ a b c ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
  8. ^ デジタル大辞泉 イラク共和国
  9. ^ a b c 外務省 イラク共和国(Republic of Iraq)基礎データ
  10. ^ イラクの石油産業
  11. ^ イラク軍、領内の英軍基地を攻撃(『東京日日新聞』昭和16年5月4日夕刊)『昭和ニュース辞典第7巻 昭和14年-昭和16年』p389 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
  12. ^ 足場固めるフセイン体制 反対派一掃をねらう『朝日新聞』1979年(昭和54年)7月31日朝刊 13版 7面
  13. ^ a b c d e f 外務省>各国・地域情勢>中東>イラク共和国>基礎データ
  14. ^ “スンニ派政党、不参加表明 イラク総選挙”. MSN産経ニュース. 共同通信. (2010年2月20日). オリジナルの2010年3月3日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20100303081312/http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/100220/mds1002202148007-n1.htm 2011年1月10日閲覧。 
  15. ^ “オバマ大統領、イラク戦争終結を宣言 米兵前に演説”. 日本経済新聞 電子版 (日本経済新聞社). (2011年12月15日). http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM15013_V11C11A2000000/ 
  16. ^ バグダッドで米軍撤収の式典 AFPBB News 2011年12月16日
  17. ^ 米大統領がイラク戦争終結を宣言、「多大な業績」と評価 ロイター 2011年12月15日
  18. ^ “イラク内務省前で自爆テロ、死傷者44人 検問所6カ所通過”. CNN.co.jp. (2011年12月27日). http://www.cnn.co.jp/world/30005061.html 2011年12月31日閲覧。 [リンク切れ]
  19. ^ イラク政府はタッル・アファルのISISからの解放を宣言』 2017年9月1日 Onebox News
  20. ^ イラク・クルディスタンの変わりゆく勢力構図-第4回議会選挙の結果から-
  21. ^ 吉岡明子 (2019年1月18日). “イラク/選挙”. 中東・イスラーム諸国の政治変動. NIHUプログラム現代中東研究・政治変動研究会. 2020年5月30日閲覧。
  22. ^ “イラク大統領、総選挙の早期実施を表明” (日本語). 日本経済新聞. (2019年11月1日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51698900R01C19A1FF8000/ 2020年5月30日閲覧。 
  23. ^ Foreign Policy:The List: The World’s Worst Currencies(2007年6月16日時点のアーカイブ
    “世界で最も価値の低い通貨トップ5”. GIGAZINE. (2007年6月19日). http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070619_worlds_worst_currencies/ 
  24. ^ Alnasrawi, Abbas (1994). The Economy of Iraq: Oil, Wars, Destruction of development and Prospects, 1950–2010. ABC-CLIO. p. 80. ISBN 0-313-29186-1 
  25. ^ Alnasrawi 1994 , p. 80
  26. ^ トリップ(2004) 406ページ
  27. ^ イラク鉄道に中国製の新型高速列車”. WIRED (2014年3月24日). 2018年8月28日閲覧。
  28. ^ A Guide to Name and Naming Practices, March 2006.
  29. ^ a b Iraq”. CIA Factbook. 米国中央情報局. 2015年5月6日閲覧。
  30. ^ IRAQ: Christians live in fear of death squads”. IRIN Middle East. IRIN (2006年10月19日). 2013年10月21日閲覧。
  31. ^ The world fact book”. CIA. 23 October, 2015閲覧。






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