イタリア語 音声

イタリア語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/11 04:28 UTC 版)

音声

イタリア語の音節は、1個以上の子音母音の組み合わせからなる。発音に対する綴りは、子音と母音が一対一の場合は日本語ローマ字綴りに近い(ローマ字綴りがイタリア語等のラテン系言語の母音の表記に倣っているため)。また以下に示すように発音が規則的であり、同じ綴りで発音が違うといったケースが非常に少ない。

母音 (vocale)

イタリア語の母音図
  • 母音は a, e, i, o, u で表す。e と o に2種類の発音があるので7種類になる。
  • e には強勢部のみ [e][ɛ], /E/がある。語末にアクセントが来た時や辞書で広狭を明確にする場合、閉口音の[e]は é, 開口音の[ɛ]は è で記述する。語末のアクセント記号は広狭にかかわらず必ず書かれる。
  • o には強勢部のみ [o][ɔ], /O/がある。E と同様、閉口音[o]は ó, 開口音[ɔ]は ò で記述する。
  • e と o の各2種類の発音は、意味の違いを表すが文脈などで区別できる場合が多く対立は弱い。

子音 (consonante)

  両唇
(bilabiale)
唇歯
(labiodentale)
歯音
(dentale)
歯茎
(alveodentale)
後部歯茎
(postalveolare)
硬口蓋
(palatale)
軟口蓋
(velare)
閉鎖音
(occlusiva)
p b     t d k g
鼻音
(nasale)
  m ɱ n n ɲ ŋ
摩擦音
(fricativa)
f v s z ʃ    
破擦音
(affricata)
ʦ ʣ ʧ ʤ    
ふるえ音
(vibrante)
r    
はじき音
(vibrata)
ɾ    
側音
(laterale)
l ʎ  
接近音
(approssimante)
  j w
  • 子音字は b, c, d, f, g, i, l, m, n, p, q, r, s, t, v, z を使用。
  • c は a, o, u と使用された時は子音 [k] を表す。e、iと共に使用された時は子音 [tʃ], /tS/を表す。ce(チェ)、ci(チ)。
  • ch はe, i と共に使用され、1つの子音[k]を表す。che(ケ)、chi(キ)。
  • g は a, o, u と使用された時は子音[g]を表す。e、i と使用された時は子音 [dʒ], /dZ/を表す。ge(ヂェ)、gi(ヂ)。
  • gh は e, i と共に使用され、1つの(語中では長い)子音[g]を表す。ghe(ゲ)、ghi(ギ)。
  • 単独の gli は[ʎi], /Li/, 母音+gli は [ʎʎi], /LLi/の音となる。また、gli+母音の場合は "gli" 3文字で1つの子音[ʎ]を表し、さらに母音間に挟まれた場合は [ʎʎ] となる。glielo /ˈʎelo/(リェーロ)、luglio /ˈluʎʎo/(ルッリョ)。ただし gli を[gli, glj](グリ)と読む単語もある[3]
  • gn は鼻音[ɲ], /J/を表す。例えば gna は「ンニャ」に近い。
  • h+母音は母音のみの音と同じ。
  • i+母音となった時の i はアクセントでない場合、子音[j]を表す事が多い。
  • q は常に u と共に使用され、qu[kw](ク)となる。
  • s は有声音[z]と無声音[s]のどちらも表す。次に来る子音が有声音の場合(sl-, sb-など)は有声で、次の子音が無声音の場合や、語頭で次に母音が来る場合、l・n・r の次に来る場合は無声音になる。ss は無声音で促音。s 単独で母音に挟まれた場合は単語により決まる。casa(家)や地名 Pisa のようにピサでもピザでも構わないというものも多い。また、発音の違いで意味の違いはない。
  • sc は a, u, o と共に用いた時は二重子音[sk]だが、e, i と共に使用された時は別の1つの子音 [ʃ], /S/を表す。sce(シェ)、sci(シ)。語中では長めに発音される。
  • sch は e, i と共に使用し二重子音[sk]となる。
  • z は有声音[dz]と無声音[ts]のどちらも表す。語中では無声が多いが有声のこともあり、接尾辞 "-izzare" 「~化する、~にする」およびその派生形(-izzante、-izzatore など)では [idˈʣare] と有声かつ長音である。z単独で母音に挟まれた場合は無声となり促音になりやすい。それ以外では単語により有声か無声かが決まる。どちらでも構わないという単語もある。
  • 半母音拗音は i と u を母音の前に使用して表記。
  • 子音字を2つ連続させて促音を表すが、rr は巻き舌が強くなる。ただし ch、gh に対応する促音は cch、ggh とする。q を重ねる語は soqquadro(混乱)などわずかしかなく、普通は acqua のように cq が使われる。
  • 二重子音など子音が複数個重なることがある。fra, quattro など。

以下は子音+母音の代表的なものと、日本語の発音(カタカナ)と発音記号(括弧内)との対応表である。

日本語での発音は近いものを選んでいる。e と o についてはそれぞれ広狭の違いは割愛した。

子音↓\母音→ a e i o u
- ア [a] エ [e] イ [i] オ [o] ウ [u]
b バ [ba] ベ [be] ビ [bi] ボ [bo] ブ [bu]
c カ [ka] チェ [tʃe] チ [tʃi] コ [ko] ク [ku]
ch - ケ [ke] キ [ki] - -
ci チャ [tʃa] チェ [tʃe] - チョ [tʃo] チュ [tʃu]
d ダ [da] デ [de] ディ [di] ド [do] ドゥ [du]
f ファ [fa] フェ [fe] フィ [fi] フォ [fo] フ [fu]
g ガ [ga] ジェ [dʒe] ジ [dʒi] ゴ [go] グ [gu]
gh - ゲ [ge] ギ [gi] - -
gi ジャ [dʒa] - - ジョ [dʒo] ジュ [dʒu]
gl グラ [gla] グレ [gle] グリ [gli] グロ [glo] グル [glu]
gli glia
リャ [ʎa]
glie
リェ [ʎe]
gli
リ [ʎi]
glio
リョ [ʎo]
gliu
リュ [ʎu]
gn ニャ [ɲa] ニェ [ɲe] ニ [ɲi] ニョ [ɲo] ニュ [ɲu]
h ア [a] - - オ [o] -
i イア [ia]/ヤ [ja] イエ [ie]/イェ [je] - イオ[io]/ヨ [jo] イウ [iu]/ユ [ju]
l ラ [la] レ [le] リ [li] ロ [lo] ル [lu]
m マ [ma] メ [me] ミ [mi] モ [mo] ム [mu]
n ナ [na] ネ [ne] ニ [ni] ノ [no] ヌ [nu]
p パ [pa] ペ [pe] ピ [pi] ポ [po] プ [pu]
qu クワ [kwa] クウェ [kwe] クウィ [kwi] クウォ [kwo] -
r ラ [ra] レ [re] リ [ri] ロ [ro] ル [ru]
s サ [sa]/ザ [za] セ [se]/ゼ [ze] スィ [si]/ズィ [zi] ソ [so]/ゾ [zo] ス [su]/ズ [zu]
sc スカ [ska] シェ [ʃe] シ [ʃi] スコ [sko] スク [sku]
sci シャ [ʃa] シェ [ʃe] - ショ [ʃo] シュ [ʃu]
t タ [ta] テ [te] ティ [ti] ト [to] トゥ [tu]
u ワ [wa]/ウア [ua] ウェ [we]/ウエ [ue] ウィ [wi]/ウイ [ui] ウォ [wo]/ウオ [uo] -
v ヴァ [va] ヴェ [ve] ヴィ [vi] ヴォ [vo] ヴ [vu]
z ツァ [tsa]/ヅァ [dza] ツェ [tse]/ヅェ [dze] ツィ [tsi]/ヅィ [dzi] ツォ [tso]/ヅォ [dzo] ツ [tsu]/ヅ [dzu]

アクセント

イタリア語のアクセントは強弱アクセントである。

  • アクセント(強勢)は単語の後ろから2番目の音節の母音にあることが多い(parossitono, parola piano など。)。Dio, io は i がアクセントである。
  • 後ろから2番目の母音字の i が拗音になっている場合は、後ろから1番目の母音字と共に一つの音節を構成するため、「後ろから2番目の音節」は後ろから3番目の母音字の音節になる。Italia, dizionario, salumaio、notizia など。
  • アクセントが語尾にある場合(parole tronche)はアクセント記号を付ける。città, caffè など。英語の -(i)ty に当たる接尾辞は -(i)tà となる。
  • 動詞の変化形の三人称複数では後ろから3番目がアクセントになる。amano, possono など。
  • アクセントが後ろから3番目に来る単語(parola sdrucciola)も多く、camera, facile, difficile, edicola, tavola などがある。人名、都市名ではこの例外が多い。Cesare は初めの e, Napoli は a, Genova は e。
  • -bile, -mere など語尾の前にアクセントがつくパターンがある。
  • イタリア語には弁別的な長母音は無いが、強勢の有る開音節は長音で発音されることが多いので、カタカナ表記で長音記号「ー」を入れることがある。例. carnevale [karneˈvale] カルネヴァーレ(謝肉祭
  • 例外的ではあるが、書籍などで日本人作家の名前に長音があるとラテン語の長音記号(マクロン)で表現することがある。この記号は小学校で習うローマ字の記号と同様である。

音韻対応

イタリア語にはラテン語と同様の二重子音があるが、他のロマンス語であるフランス語スペイン語のそれとは異なっている。この違いから、他のロマンス語と比べて特有のアクセントがある。

ラテン語で「子音 + l + 母音」であった音は、イタリア語では li に変化しているものが多い[注釈 1]。接頭辞 re- が ri- になっているものが見られる。破裂音 + s, または異なる破裂音が連続する場合は後ろの音に同化し、長子音となる(actumatto など)。また開音節で強勢を持つ短い o の多くが uo に変化している (bonusbuono)。


注釈

  1. ^ 最初の子音が c, g であった場合、正書法上は、音価を保つために "h" が挿入されている。 ex. claruschiaro

出典

  1. ^ Accademia della Crusca” (イタリア語/英語). 2007年9月29日閲覧。
  2. ^ G・ヴィーコ『新しい学(上)』中公文庫、2018年、369p頁。 
  3. ^ #berloco2018f
  4. ^ イタリア文化会館 イタリア語学校
  5. ^ ダンテ・アリギエーリ協会 東京支部






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