イタチ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/15 06:04 UTC 版)
日本に棲息するイタチ属
イタチ属 Mustela に属する動物は、日本には5種8亜種が棲息する。このうち、アメリカミンクは外来種であり、在来種に限れば4種7亜種となる。
比較的大型のイタチ類(ニホンイタチ、コイタチ、チョウセンイタチ)に対して、高山部にしか分布しないイイズナ(キタイイズナ、ニホンイイズナ)とオコジョ(エゾオコジョ、ホンドオコジョ)はずっと小型であり、特に、ユーラシア北部から北米まで広く分布するイイズナは、最小の食肉類でもある。
4種の在来種(ニホンイタチ、チョウセンイタチ(自然分布は対馬のみ)、イイズナ、オコジョ)のうち、ニホンイタチ(亜種コイタチを含む)は日本固有種であるが、前述のように(チョウセンイタチと同じく)大陸に分布するシベリアイタチの亜種とされることもある。また、亜種のレベルでは、本州高山部に分布するニホンイイズナとホンドオコジョが日本固有亜種であり、これにチョウセンイタチとエゾオコジョを加えた4亜種は、環境省のレッドリストでNT(準絶滅危惧)に指定されている。
外来種問題に関わるものとしては、西日本では国内移入亜種のチョウセンイタチが在来種のニホンイタチを、北海道では国内外来種のニホンイタチと外来種のアメリカミンクが在来亜種のエゾオコジョを、一部の島嶼部ではネズミ類などの駆除のために移入されたニホンイタチが在来動物を、それぞれ圧迫している。
日本のイタチ一覧
- ニホンイタチ(イタチ) Mustela itatsi
- 【北海道・本州・四国・九州・南西諸島/日本固有種】 シベリアイタチの亜種とされることもある。北海道・南西諸島などでは国内外来種。西日本ではチョウセンイタチに圧迫され、棲息域を山間部に限られつつある一方で、移入先の三宅島などでは、在来動物を圧迫している。屋久島・種子島の個体群は、亜種コイタチ M. i. shoとして区別される。
- シベリアイタチ(タイリクイタチ、チョウセンイタチ) M. sibirica, Kolinsky
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- シベリアイタチ(コリンスキー レッドセーブル、コリンスキーセーブル、レッドセーブル、シベリアン ファイアセーブル)
- 尾毛は、画筆や書筆の高級原毛として使われる。弾力がありしなやかで、揃いが良く、高価。
- チョウセンイタチ(亜種) M. s. coreana
- 【本州西部・四国・九州・対馬】 対馬には自然分布、それ以外では外来種。ニホンイタチより大型。西日本から分布を広げつつあり、ニホンイタチを圧迫している可能性がある。
- イイズナ M. nivalis
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- キタイイズナ(亜種、コエゾイタチ) M. n. nivalis
- 【北海道】 大陸に分布するものと同じ亜種。
- ニホンイイズナ(亜種) M. n. namiyei
- 【青森県・岩手県・山形県?/日本固有亜種】 キタイイズナより小型であり、日本最小の食肉類である。
- オコジョ M. erminea
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- エゾオコジョ(亜種、エゾイタチ) M. e. orientalis
- 【北海道】 日本以外では、千島・サハリン・ロシア沿海地域に分布。平地では国内外来種のニホンイタチ・外来種のミンクの圧迫により姿を消す。
- ホンドオコジョ(亜種、ヤマイタチ) M. e. nippon
- 【本州中部地方以北/日本固有亜種】
- アメリカミンク(ミンク) M. vison
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- 【北海道】北米原産の外来種。毛皮のために飼育されていたものが、1960年代から北海道で野生化した。平地でエゾオコジョ・ニホンイタチを圧迫している。養魚場等にも被害がある。
方言
「イタチ(以太知)」の呼称は遅くとも平安時代初期には存在したが、テンとイタチの呼称は平安時代初期から現代にかけて混称または混同される傾向があった[1]。
以下はニホンイタチ(対馬のみシベリアイタチ)に対する日本語方言である[1]。「イタチ」が転訛した呼称のほか、「キッキ」、「チーチ」「キチキチ」など鳴き声の擬音語、その他「トマ」、「ズット」、「オサコ」などがある。異名が多いのは、イタチは縁起の悪い動物と見做されていたため、忌言葉を用いたなごりとされる[2]。
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- ^ a b 大舘智志「ユーラシアの諸言語におけるクロテンおよび関連種の呼称リスト」『北海道立北方民族博物館研究紀要』第21巻、2012年、65-94頁。
- ^ "トマ(動物)". 世界大百科事典 第2版. コトバンクより2023年2月15日閲覧。
- ^ 和田干蔵「青森縣産哺乳類目録」『青森博物研究會會報』第5号、青森博物研究會、1937年4月、1-11頁、CRID 1050845761102627712、hdl:10129/2485、NAID 10013371159。
- ^ a b 村上健司編著 『妖怪事典』 毎日新聞社、2000年、36頁。ISBN 978-4-6203-1428-0。
- ^ 高田衛監修 稲田篤信・田中直日編 『鳥山石燕 画図百鬼夜行』 国書刊行会、1992年、50頁。ISBN 978-4-336-03386-4。
- ^ 少年社・中村友紀夫・武田えり子編 『妖怪の本 異界の闇に蠢く百鬼夜行の伝説』 学習研究社〈New sight mook〉、1999年、123頁。ISBN 978-4-05-602048-9。
- ^ 草野巧 『幻想動物事典』 新紀元社、1997年、30頁。ISBN 978-4-88317-283-2。
- ^ 『信州の民間薬』全212頁中79頁 医療タイムス社 昭和46年12月10日発行 信濃生薬研究会 林兼道 編集
- ^ オウィディウス『変身物語』9巻
- ^ 兵頭裕己編注『説教節 俊徳丸・小栗判官 他三篇』岩波文庫2023年(ISBN 978-4-00-302861-2)299-303頁。
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