イスラム国家 イスラーム国家の概要

イスラム国家

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/03/30 03:33 UTC 版)

イスラーム国家の概要

イスラーム国家は支配者の定義する『イスラーム的価値観』への絶対的服従を要求するイデオロギー国家である。この国家においては『イスラームの良き価値観』が国家の理想を示すプロパガンダである。よってイスラーム国家に於いてはシャリーアが国法でありクルアーンが憲法である。

国民の身分はムスリムか非ムスリムかで明確に分かれており、イスラーム法に基づき後者には厳しい差別が行われる。即ち税制上の差別(ジズヤを余計に払う)、政治的差別(イスラーム法ではズィンミーはムスリムに権力を及ぼす地位に着くことを厳しく制限される)、宗教上の差別(ムスリムに対し自分たちの宗教を勧めた場合死刑、またイスラームを批判した場合死刑)などが公的に定められている。これらの差別はイスラームの絶対的優越性というドグマと他宗教・無神論無宗教に対する軽蔑意識の外形的表れである[1]

そのためイスラーム国家は非ムスリムにとってはそれを目指すこと自体が一種のディストピアである。

一方、ムスリムにとっては、『イスラームの良き価値観』とそれに基づく規律によって社会が統制されるため、少なくとも目指すべき体制としてはユートピアとなる。現在イスラーム世界で原理主義が勃興しているのも、腐敗した王政独裁制にかわってこのようなイスラーム国家を樹立することが、ムスリムの幸福へとつながるという希望が一定程度存在しているためであるとされている。

しかし、仮にイスラーム国家が樹立されたとしても、他のユートピアを唱える政治思想同様、新生政府が現実の諸問題を解決できるとは限らず、ムスリムのイスラーム国家への期待(例えば貧富の格差の解消)はしばしば裏切られる。更には、支配者の定義する『イスラーム的価値観』に賛同できない場合、ムスリムでも容易に『背教者』、『カーフィル』として断罪されうる。背教であると認定された場合、当該人物はシャリーアの定めるところにより処刑される[2]同性愛者および婚外性交渉を行った人物に対しても、非ムスリム・ムスリムを問わずシャリーアの定めるところにより処刑が行われる[3]

また、『イスラーム的価値観』によって国家を運営することを建前としておきながら、実際には国家運営の都合によって『イスラーム的価値観』が体制側に都合の良いものに変貌していくことも起こりうる[4]


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  1. ^ イスラームにおける生き方・信仰の自由 Archived 2007年09月27日, at the Wayback Machine.
  2. ^ アフガニスタンでは女性権利に関する議論を喚起しようとした学生が、「冒涜」の罪に問われ死刑判決を受けたSentenced to death: Afghan who dared to read about women's rights 
  3. ^ ただし、性的な弱者に対してより過酷な方向に事実関係またはシャリーアが歪曲される場合もある。
  4. ^ イランでは当初は最高指導者は最高位のイスラム法学者でなければならないと憲法で定められていたが、ホメイニーの後継者を選ぶ過程で中位程度の法学者でも最高指導者になれるように変更された。また、イラン・イラク戦争時には、イランの掲げるシーア派の利益が実際にはイランの国益ではなかったのかとの疑念も持たれた。


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