アーケン石
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/31 09:59 UTC 版)
アーケン石に関する考察
アーケン石は、初期の原稿においては、「ギリオンの宝石」(the gem of Girion)となっていた[10]。
ダグラス・アンダーソンおよびジョン・ラトリフが指摘しているように[11] [12]、『ホビットの冒険』のアーケン石と『シルマリルの物語』の宝石シルマリルは、非常に似通った描写をされている。
地の底最も深く設けられた宝庫の闇の中にあってさえ、シルマリルはそれ自身の光で、あたかもヴァルダの星々の如く輝いたのである。しかもなおシルマリルは、まことに生けるものであるが故に、光を喜び、受けた光を照り返し、さらに陸離たる光彩を放つのであった[13]。
トールキンは、自らの神話作品The Earliest Annals of Valinorの古英語のヴァージョンを書いているが、この中で、アーケン石の語源であるeorclanstānasという単語を、シルマリルの宝石に用いている[14]。
ゴート語のaírkna-stáinsの「聖なる石」という概念は、シルマリルにも相当するものである。 また、シルマリルに対するフェアノールの激しい所有欲と、アーケン石に対するトーリンのそれとも共通し、両者の悲劇の元となっている。 『ホビットの冒険』の執筆時において、トールキンが自らの神話作品のシルマリルをアーケン石として「引用」したという解釈もある[15]。
またラトリフが指摘しているように、『ホビットの冒険』においてビルボがアーケン石を偶然発見し、ポケットに収めた行為は、ビルボの指輪発見の状況とも共通している。『ホビットの冒険』における指輪は、ゴクリの執着ぶりにその片鱗が認められるものの、『指輪物語』におけるような抗しがたい所有欲を引き起こし、影響力を振るうものではない。『ホビットの冒険』でアーケン石に与えられたその魔力が、『指輪物語』における指輪に引き継がれたと解釈することもできる[16]。
- ^ 瀬田 2000, p. 124
- ^ 瀬田 2000, p. 135
- ^ 瀬田 2000, p. 202
- ^ 瀬田 2000, p. 241
- ^ Anderson 2003, pp. 293-294
- ^ Rateliff 2007, p. 605
- ^ Grimm & Stallybrass 1883, p. 1217
- ^ Anderson 2003, pp. 77-78
- ^ Rateliff 2007, pp. 605-606
- ^ Rateliff 2007, p. 525, passim.
- ^ Anderson 2003, p. 294
- ^ Rateliff 2007, pp. 603-609
- ^ 田中 1982, p. 102
- ^ Tolkien n.d., p. 282
- ^ Rateliff 2007, pp. 603-609
- ^ Rateliff 2007, p. 373
- 1 アーケン石とは
- 2 アーケン石の概要
- 3 アーケン石に関する考察
- 4 参考文献
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