アンモニア アンモニウムイオン

アンモニア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/18 14:59 UTC 版)

アンモニウムイオン

アンモニウムイオン (: ammonium) はアンモニアに水素イオンが付加(配位結合)することにより生成し、アンモニア水の電離によっても一部生成する1価の陽イオンであり、オニウムイオンの一種である。正四面体型構造をとる。

アンモニウム塩

アンモニウムイオンを含むイオン結晶をアンモニウム塩(アンモニウムえん、: ammonium)と呼び、アンモニアと酸との中和反応によっても生成する。多くのものが水に可溶であるが、過塩素酸塩、ヘキサクロロ白金酸塩などは溶解度が低く、アンモニウム塩の溶解度はアンモニウムイオンとイオン半径の近い、カリウム塩およびルビジウム塩に類似する。加熱により分解し、過塩素酸アンモニウムなどは爆発する。

その他関連物質

合成

現在ではアンモニアの工業生産はハーバー・ボッシュ法によるものが一般的である。実際のプラントでは水素窒素触媒存在下 25 - 35 MPa、約500℃ で反応させると[13]

X-15のエンジンがアンモニアを燃料として使用していた

前述のようにアンモニアは条件次第で燃焼し、燃やしても代表的な温暖化ガスである二酸化炭素が生成されない。このためアンモニアを火力発電燃料として使う技術開発が行われている。微粉炭と混焼させたり[23]ガスタービン発電で燃料や空気の供給量・速度を調整したり[24]する方法等が研究されている。2020年現在、日本の火力発電所の燃料として利用する実証試験が行われている[25]。この試験では、産油国であるサウジアラビアの化学プラントで天然ガスからアンモニアを製造する際に、排出される二酸化炭素を分離回収して、EOR(石油増進回収)やCCS(二酸化炭素回収貯留)に利用する。こうしたことから、使用するアンモニアを、カーボンニュートラルな燃料として、「ブルーアンモニア」と呼称している。

グリッド・パリティ達成、再エネの価格低下により地域によってはブルーアンモニアより安く再生可能エネルギーによるグリーンアンモニアを製造可能になっている。経済産業省では3円/kWhでアンモニアを製造できると試算しているが、発電時の損失、火力発電所の改修コストを考えると最終的な発電コストは23.5円/kWhとしている。[26]

水素貯蔵

水素をそのままの状態で保存するよりアンモニアのほうが沸点、蒸気圧を下げ簡単に液化できるため水素貯蔵の一つとして研究されている。

アンモニアから水素の生成は吸熱反応で、400℃近い加熱された触媒によって生成される[27]

熱源はSOFCのような高温の燃料電池の廃熱を利用したり、アンモニアと空気の触媒燃焼によって賄うことができる。

脱硝

環境に有害な窒素酸化物の発生を抑制するために火力発電所ボイラーなどに設置される、選択触媒還元脱硝装置還元剤として使用される[28]ディーゼルエンジンを動力とするディーゼル自動車においても応用されている(尿素SCRシステム)が、アンモニアを直接搭載するのは危険であるため「AdBlue」と呼ばれる専用の尿素水を代わりに搭載し、これを排気中に噴射することにより高温下で加水分解させアンモニアガスを得る仕組みになっている。

その他の用途例

  • 推進剤 - 燃料電池XLR99のようなロケット燃料。
  • 19世紀末にはアメリカ合衆国で Emile Lamm が1870年と1872年にアンモニアを動力源として使用する機関車に関する特許を取得して[29][30]ニューオーリンズで1872年に作動流体として圧縮空気蒸気の代わりにアンモニアを使用する無火機関車が馬車鉄道の代わりに使用された[31]。費用は1日当たり$6.775で、動物による牽引では1日当たり$9.910だった。
  • 銀鏡反応を利用しためっき還元剤としても使用される。
  • 強烈な刺激臭のため、気絶した人に気付け薬として嗅がせることがある。また 9.5–10.5% のアンモニア水溶液は日本薬局方一部医薬品(日本薬局方アンモニア水)で虫刺され用の外用薬の成分として用いられることもある[32]。ただし、アンモニア自体はギ酸などには中和が期待されるものの、ヒスタミンなどに対する分解作用は無い。
  • ブルーアンモニアなど、船舶や自動車等のエンジン燃焼プロパティーで活用するとした実証実験が行われている。

  1. ^ NIST Chemistry WebBook (website page of the National Institute of Standards and Technology) URL last accessed 15 May 2007
  2. ^ a b c Ammonia”. NIST. 2021年3月8日閲覧。
  3. ^ a b c 厚生労働省モデルSDS
  4. ^ MSDS Sheet from W.D. Service Co.
  5. ^ シャロー 『溶液内の化学反応と平衡』 藤永太一郎、佐藤昌憲訳、丸善、1975年
  6. ^ 汗が臭くなる病気沢井製薬(2017年7月)2018年4月12日閲覧。
  7. ^ 山崎昶 『ミステリーの毒を科学する』講談社ブルーバックス〉、1992年。ISBN 4-06-132919-7ISBN 978-4-06-132919-5 
  8. ^ a b アンモニア (PDF) 化学物質安全シート 高千穂科学工業
  9. ^ MSDS 液体アンモニア (PDF)
  10. ^ a b D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982)
  11. ^ FA コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年、原書:F. ALBERT COTTON and GEOFFREY WILKINSON, Cotton and Wilkinson ADVANCED INORGANIC CHEMISTRY A COMPREHENSIVE TEXT Fourth Edition, INTERSCIENCE, 1980.
  12. ^ 田中元治 『基礎化学選書8 酸と塩基』 裳華房、1971年
  13. ^ a b c 江崎正直、アンモニア合成 (PDF)
  14. ^ 秋鹿研一、小山建次、山口寿太郎 ほか、「アンモニア合成用カリウム金属添加ルテニウムおよびオスミウム触媒の製法に関する研究」『日本化学会誌』 1976年 1976巻 3号 p.394-398, 日本化学会, doi:10.1246/nikkashi.1976.394, NAID 130004155575
  15. ^ 秋鹿研一『化学と教育』第10巻、1994年、 680 - 684頁。
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  18. ^ 世界最高の活性を示すアンモニア合成触媒の開発に成功 東京大学、九州大学、科学技術振興機構
  19. ^ 貴金属を使わない高性能アンモニア合成触媒を開発 東京工業大学、Yutong Gong, Jiazhen Wu, Masaaki Kitano, Junjie Wang, Tian-Nan Ye, Jiang Li, Yasukazu Kobayashi, Kazuhisa Kishida, Hitoshi Abe, Yasuhiro Niwa, Hongsheng Yang, Tomofumi Tada & Hideo Hosono., Ternary Intermetallic LaCoSi as a Catalyst for N2 Activation(日本語タイトル:窒素分子の活性化触媒としての3元系金属間化合物LaCoSi)., Nature Catalysis, doi:10.1038/s41929-017-0022-0
  20. ^ 経済産業省生産動態統計・生産・出荷・在庫統計 平成20年年計による
  21. ^ http://www.ueri.co.jp/jhif/12Conference090610/doshisyauniv.pdf [リンク切れ]
  22. ^ 「自然冷媒(アンモニア)高効率ヒートポンプチラー」の開発・販売について 〜地球環境にやさしいアンモニア冷媒を採用、4月より販売開始〜 2004年3月30日 東京電力
  23. ^ 石炭火力発電所向け 燃焼試験設備で世界最高水準のアンモニア混焼を実証~CO2排出量低減に寄与 アンモニアの燃料利用を可能にする燃焼技術を開発~ IHIプレスリリース(2018年3月28日)2018年4月12日閲覧。
  24. ^ アンモニアを直接燃焼させる 炭素を含まない燃料による火力発電 科学技術振興機構(2018年4月12日閲覧)。
  25. ^ 世界初,カーボンニュートラルな「ブルーアンモニア」を利用する混焼試験を実施 ~CO₂フリーアンモニアのバリューチェーン構築に向けて,燃料製造側と利用側をつなぐ~”. 株式会社IHI. 2021年3月15日閲覧。
  26. ^ 燃料アンモニアサプライチェーンの構築」 プロジェクトの 研究開発・社会実装の”. 経済産業省. 2021年6月30日閲覧。
  27. ^ 永岡 勝俊 (2016). “触媒の酸化熱を利用したアンモニアの酸化分解による水素製造プロセスのコールドスタート”. ENEOS Technical Review 58 (2). https://www.noe.jxtg-group.co.jp/company/rd/technical_review/pdf/vol58_no02_04.pdf. 
  28. ^ 排煙脱硝装置 (PDF) 」 『エネルギア総研レビュー』第33巻第3号、エネルギア総研、2013年、 23頁、2021年3月15日閲覧。
  29. ^ アメリカ合衆国特許第 125,577号
  30. ^ アメリカ合衆国特許第 105,581号
  31. ^ Louis C. Hennick; Elbridge Harper Charlton (1965). The Streetcars of New Orleans. Pelican Publishing. p. 14-16. ISBN 9781455612598 
  32. ^ キンカン」など。
  33. ^ 坂口力、「環境要因とアンモニア代謝 第1報: 各種環境要因における脳, 肝, 血液のアンモニア濃度変化」『日本衛生学雑誌』 1965年 19巻 6号 p.369-373, 日本衛生学会, doi:10.1265/jjh.19.369
  34. ^ 福嶋真理恵、古藤和浩、遠城寺宗近 ほか、「バルプロ酸ナトリウムにより高アンモニア血症をきたしたC型慢性肝炎の1例」『日本消化器病学会雑誌』 2005年 102巻 1号 p.42-47, 日本消化器病学会, doi:10.11405/nisshoshi.102.42
  35. ^ “新年企画 食べるって何だ? 郷土の味 知恵凝縮”. 朝日新聞栃木版 (朝日新聞社). (2009年1月1日). http://mytown.asahi.com/tochigi/news.php?k_id=09000360901010002 2009年8月10日閲覧。 
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