アンネの日記 日記のオリジナル性

アンネの日記

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/06 09:13 UTC 版)

日記のオリジナル性

作家志望だったアンネ・フランクは、手始めに自分の『日記』を出版することを考えており、書き溜めたものを推敲する作業を自ら進めていた。よって、日記にはオリジナル原稿と、彼女自身の清書による改訂稿の2つが存在する。これらはどちらも完全な形では残っておらず、アンネの死後、オットー・フランクによって、オリジナル原稿と改訂稿を相互補完する形で縮約編集された。いわば復元版である。

出版に当たっては、編集の過程で第三者によってさらに本文の削除や修正がほどこされた。削除箇所の多くは母親への辛辣な批判である。その他に第三者に関する批判(ファン・ペルス夫妻など)、若干の退屈なエピソード、性の目覚めに関する記述の削除、ならびに存命中の者のプライバシーを保護するための配慮があった。以上のような編集が加えられたため、書店に並んだ日記はアンネ・フランクが書いたものと一字一句おなじとはいえない。しかし、内容は概ねアンネ・フランク自身のものと一致しており、1960年および1981年の文書鑑定では、「これらの編集作業は日記のオリジナリティーを損なうものではない」と結論づけられた。オットー・フランクの死後、原本はオランダ国立戦時資料研究所に寄付され、そこで科学的調査が行われた。その結果、原本に使われている紙・インク・糊は当時のオランダで入手可能なものであり、原本自体はアンネ自身によって書かれたものであると最終報告された。また1990年、ハンブルク地方裁判所は原本の筆跡がアンネ本人のものであると結論づけた。

なお、削除箇所については後の版で増補されており、2010年現在、原テキストに近い形で刊行されている。また、原本を保管しているオランダ国立戦時資料研究所による「アンネの日記 研究版」では、3種のバージョンの比較、日記の信憑性に対する攻撃の経緯、筆跡鑑定、インクや紙に関する科学的調査などについて研究結果が詳述されている。


  1. ^ キャロル アン リー 著、橘高 弓枝 訳『アンネ・フランク: 「隠れ家」で日記を書き続けた少女』偕成社、2003年7月1日、18頁。 
  2. ^ 『アンネの日記』など、ユネスコの「世界の記憶」として新たに登録”. current.ndl.go.jp. 国立国会図書館 関西館. 2022年8月22日閲覧。
  3. ^ Bellis, Mary. “About ballpoint pens”. About.com. 2014年2月閲覧。
  4. ^ Netherlands Institute for War Document:The Diary of Anne Frank:The Revised Critical Edition. Doubleday, Amsterdam 2003, p. 167, ISBN 9780385508476
  5. ^ kurier.at:Anne Franks Tagebuch ist UNESCO-Welterbe (Kurier, 31. Juli 2009)
  6. ^ 「アンネの日記」、ユネスコが世界記憶遺産に登録 (AFPBB News, 2009年07月31日)
  7. ^ 「アンネの日記」オンライン公開、著作権で論争も”. AFPBB News (2016年1月2日). 2020年10月2日閲覧。
  8. ^ 「アンネの日記」が著作権切れで無料公開へ、アンネ・フランク財団は「法的措置を取る」と警告”. GIGAZINE (2016年1月4日). 2020年10月2日閲覧。
  9. ^ Wikimedia Foundation removes The Diary of Anne Frank due to copyright law requirements”. Diff Wikimedia Foundation (2016年2月10日). 2020年10月2日閲覧。
  10. ^ 著作権侵害申し立てを受け「アンネの日記」がWikisourceから削除される”. GIGAZINE (2016年2月16日). 2020年10月2日閲覧。
  11. ^ 名著36 「アンネの日記」 NHK






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