アンドロゲン不応症 アンドロゲン不応症の概要

アンドロゲン不応症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/10 22:11 UTC 版)

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アンドロゲン不応症
AIS results when the function of the androgen receptor (AR) is impaired. The AR protein (pictured) mediates the effects of androgens in the human body.(→ アンドロゲン受容体(AR)の機能低下を有するとき発症する。ARタンパク質(図)は、人体にアンドロゲン効果をもたらす。)
分類および外部参照情報
診療科・
学術分野
内分泌学
ICD-10 E34.5
ICD-9-CM 259.5
OMIM 312300 300068
DiseasesDB 29662 12975
MedlinePlus 001180
eMedicine ped/2222
MeSH D013734
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概要

男性仮性半陰陽に分類される[1]

男性ホルモンアンドロゲン)を分泌できるものの、アンドロゲン受容体が働いていないためアンドロゲンの全部または一部を感知できず、男性への性分化に障害が生じる。アンドロゲン作用不全の程度によって大きく3種の表現型に分類され、完全型(complete androgen insensitivity syndrome, CAIS)、不全型(partial androgen insensitivity syndrome, PAIS)、軽症型(mild androgen insensitivity syndrome, MAIS)がある[2]

文献によってはCAISと不全型の女性に近いタイプを「完全型」(不全型を特に区別する場合は「不完全型」)、不全型の残りと軽症型をまとめて「部分型」としているものもある[1]

原因

人間の生殖器は胎生6週頃までミュラー管とウォルフ管の両方があり、正常の男性では精巣[注釈 1]からミューラー管退縮物質(MIS)とアンドロゲンの仲間のジヒドロステロン(DHT)が分泌され、ミュラー管は退縮、ウォルフ管は逆に発達して精巣上体や精管になり、外性器も生殖結節や生殖隆起が陰茎や陰嚢に変化する[3]が、アンドロゲン不応症では通常、性染色体としてXY型(男性型)を持っており[注釈 2]、SRY遺伝子も保有するので精巣形成・MISとDHT分泌までは起こるが、アンドロゲン受容体に異常があるのでDHTの影響を受けるウォルフ管の分化障害や陰嚢や陰茎などの外性器の形成に異常が起きる。なお、全くアンドロゲンに反応していないCAISであってもMISの受容体は正常に機能しているのでミュラー管は退縮してしまい、これが起源の子宮・卵管・膣上部(約2/3)[注釈 3]は存在しない[4]

なお、アンドロゲン受容体をつかさどる遺伝子はX染色体上にある(Xq11-q12)のでこの異常は伴性遺伝するが、本症の発症者は不妊になる[5]ので、発症者は必ず「保因者である母からの遺伝」もしくは「新生突然変異」のどちらかになる[6]

検査

アンドロゲン不応症診断について[7]
アンドロゲン不応症の推定診断の根拠としては以下のような所見が含まれる。
  • 性器以外に異常がないこと。
  • 形成不全のない精巣。
  • ミュラー管由来器官の欠如もしくは形成不全(卵管、子宮、頚管の欠如)と短い膣の存在。
  • 出生時の外性器の不全男性化。
  • 思春期時の精子形成不全や身体の男性化不全。

確定的な診断には以下の検査所見が必要とされる。

  • 染色体検査で46,XYの核型。
  • 精巣による正常もしくは亢進したテストステロン合成、ならびに正常なテストステロンからジヒドロテストステロンへの変換。
    (ここでいう「正常」は「男性ホルモンが正常男性並みの濃度」の意味[8]。)
  • 下垂体による正常もしくは亢進した卵胞ホルモン合成。
    (エストラジオールが正常男性より高数値、性腺刺激ホルモン(LH、FSH双方)濃度も高い[8]。 )
  • 性器皮膚線維芽細胞でのアンドロゲン結合能の低下もしくは欠如。
  • CAISの場合には(PAISにはあてはまらない)、生後0-3か月の血中LHとテストステロンの一過性上昇。

男性に近い外見の場合は以下の所見も診断する。

  • 超音波や造影検査で確認された前立腺やウォルフ管由来器官の形成不全。
  • 蛋白同化ステロイド、スタノゾロールに対する性ホルモン結合グロブリン(SHBG)低下反応の不良。
  • 生後1年間や思春期発来後の抗ミュラー管因子の高値。

女性型の外見の場合は46,XYであることや子宮がなく精巣があるなどではっきり分かるが、男性よりの外見の場合、前述の特徴は当然なので当人だけ調べても分かりにくいことがあり、この場合罹患した家族[注釈 4]がいてX連鎖性遺伝に合致するか[注釈 5]という家族歴を調べる。


  1. ^ 精巣形成はこれらの機構と全く無関係にSRY遺伝子(通常Y染色体上にある)があれば未分化性腺が変化する。(この過程がない場合は自動的に卵巣になる)
  2. ^ XXの女性型であればアンドロゲン不応症であっても特に症状はなく、疾患として発見されない遺伝的保因者英語版となる。
    (厳密には保因者の10%に恥毛や腋毛の発生の遅れや左右非対称の分布といった所見を認める。(GRJ2007)「アンドロジェン不応症候群 家族歴」
  3. ^ 膣下部1/3は「尿生殖洞」という別の組織が起源なのでこの影響を受けない
  4. ^ 「罹患した家族」はAIS発症者以外に保因者(約10%の保因者女性は恥毛や腋毛の発生の遅れや左右非対称の分布といった所見があるので確認可能な場合もある)も含む。
  5. ^ 新生突然変異のケースもあるので絶対ではないが、基本的に「母が保因者であれば、子は50%の確率で変異遺伝子を受け継ぐ」、「受け継いだ子のうち46,XYの子は罹患、46,XXの子は保因者。」となる。((GRJ2007)「アンドロジェン不応症候群 家族のリスク」
  6. ^ 精巣上体や精管は存在することもしないこともある。
  7. ^ 原文は「精巣性女性化症候群」
  8. ^ 原文は「ライフェンスタイン症候群」
  9. ^ CAISの診断は通常臨床所見と検査所見のみで分かるが、PAISやMAISでは罹患者だけ調べても分からないケースがあり、特にMAISは問題が不妊のみの場合があるので、実際は特発性男性不妊の中の一部がMAISと考えられている((GRJ2007)「アンドロジェン不応症候群 家族歴・自然経過 」)。
  10. ^ 精巣が作ったテストステロンはある程度女性ホルモンのエストロゲンに代謝される。本症ではアンドロゲン受容体は反応しなくともエストロゲン受容体は正常のため、エストロゲンの影響で乳房の自然発達などが見られるが、第二次性徴発現時に精巣がないとこれが起きずに乳房の発達などが起きない。((医学情報研究所2018)p.68「補足事項」
  11. ^ CAISが2%、PAISだと陰嚢外精巣で50%・陰嚢内精巣はよくわかっていないが前者以下CAIS以上のリスクとされる。(緒方勤(2008)571-(151)「表4.胚細胞腫瘍の発症リスク」)、これ以外ではCAISとPAISの女性型を含む「精巣性女性化症候群」としてのデータだが「4~9%に精巣腫瘍の発生」という物がある。((中尾2009)p.374註釈★12
  1. ^ a b (中尾2009)p.374「性分化異常 男性仮性半陰陽」本文
  2. ^ (GRJ2007)「アンドロジェン不応症候群 疾患の特徴」
  3. ^ (医学情報研究所2018)p.62-63「性腺・性器の発達と分化」
  4. ^ a b (医学情報研究所2018)p.69「アンドロゲン不応症の病態」
  5. ^ a b (GRJ2007)「アンドロジェン不応症候群 疾患の特徴」
  6. ^ (GRJ2007)「アンドロジェン不応症候群 46,XY発端者の両親」
  7. ^ この節内部で特筆ない場合の出典は(GRJ2007)「アンドロジェン不応症候群 臨床診断・検査」
  8. ^ a b (医学情報研究所2018)p.68「MINIMAMUM ESSENCE」
  9. ^ この表内部で特筆ない場合の出典は(GRJ2007)「アンドロジェン不応症候群 臨床診断 表1 AIS表現型の分類」
  10. ^ a b c d (中尾2009)p.374註釈★12
  11. ^ a b c d e f g h i (GRJ2007)「アンドロジェン不応症候群 自然経過 」
  12. ^ (医学情報研究所2018)p.68「アンドロゲン不応症の身体初見」
  13. ^ a b (中尾2009)p.374★13
  14. ^ (GRJ2007)「アンドロジェン不応症候群 頻度」
  15. ^ (医学情報研究所2018)p.65「大切な両親の役割」(緒方勤)
  16. ^ (GRJ2007)「アンドロジェン不応症候群 遺伝カウンセリングに関連したその他の問題 診断の告知」
  17. ^ a b c d (GRJ2007)「アンドロジェン不応症候群 病変に対する治療 」
  18. ^ 緒方勤(2008)p.569-(149)「外科的管理」・571-(151)「表4.胚細胞腫瘍の発症リスク」
  19. ^ 緒方勤(2008)p.571-(151)「外科的アウトカム」
  20. ^ a b (GRJ2007)「アンドロジェン不応症候群 臨床的マネジメント」
  21. ^ a b (GRJ2007)「アンドロジェン不応症候群 定期検査 」
  22. ^ 緒方勤(2008)571-(151)「表4.胚細胞腫瘍の発症リスク」
  23. ^ (中尾2009)p.374
  24. ^ (GRJ2007)「アンドロジェン不応症候群 病名 」


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