アメリカ法 刑事法

アメリカ法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/24 02:36 UTC 版)

刑事法

連邦の刑事法は、州と比べるとはるかに統一化され合理化しているが、州の刑事法は、州憲法に基づき、州ごとに制定されており、地方色が強い。

連邦の刑事法の執行を職務とするのは、合衆国地区検事である。合衆国では、私人訴追主義をとる英国と異なり、フランス式の検察官制度をとっているが、英国と同様に法曹一元制をとっているため、検察官を弁護士と同じくアトーニー(attorney)と呼び、両者に本質的な差はないものと考えられている。検察官は、起訴不起訴の決定に極めて広い裁量を有し、日本と同じく起訴便宜主義がとられている。州の検察制度は、地方によって異なるが、大きく分けると、大都市型検察官と農村型検察官に分けることができるとされている。

警察官が被疑者を逮捕するのには令状を必要とするのは日本と同じであるが、逮捕後は被疑者を直ちに治安判事の面前に引致しなければならない。治安判事は、逮捕の要件を審査し、要件があれば勾留するが、多くはこの段階で保釈が認められる。裁判所には、保釈保証業者のパンフレットが置いてあることが通常であり、よく利用されている。保釈中に被告人が逃亡した場合、被告人を連れ戻す専門の業者がおり、バウンティ・ハンターと呼ばれている。

嫌疑の事実が重罪または軽罪に関する場合は、予備審問にかけられ後、大陪審に回され、被告人を公判廷に召還して罪状認否手続が行われる。この段階で、検察官の関与の下、いわゆる司法取引が行われる。

被告人が無罪と答弁した場合、事実審理前協議を経た上で、陪審による事実審理が行われる。被告人において陪審審理を拒否し、裁判官による事実審理を受けることも可能である。陪審で有罪となれば、裁判官が刑の量定をするが、プロベーションを付けるなどほぼ無制限の裁量が裁判官に与えられているのが特徴である。


注釈

  1. ^ ただし、 ルイジアナ州は、大陸法系のフランスの植民地であったので、フランス法を基礎としつつ、英米法の影響を強く受けた法制度となっている。また、ニューヨーク州法はオランダ法の、カリフォルニア州法はスペイン法の影響を受けている。
  2. ^ ただし、伝統的な慣習であればどのようなものでもいいというわけではなく、「法」といえるためには、将来の予測が可能で誰にでも等しく適用されうる強制力のあるものであることが必要とされている。
  3. ^ 米国では、民事法(civil code)の対象は主に契約法(contract law)、不法行為法(tort law)、財産法(property law)、相続法、家族法(family law)の五つに分かれるとされているが、日本と異なり、民法典と商法典の区別を明確に意識していない。むしろ商取引(契約)なのか、消費者契約なのかによって区別されている。
  4. ^ 日常的には巡回裁判所(Circuit Court)と呼ばれることが多いが、これは控訴審裁判所が管轄区域内を定期的に移動し、審理を行っていたからである。
  5. ^ 最高司法裁判所(supreme judicial court)、最高控訴裁判所(supreme court of appeals)と呼ぶ州もある。
  6. ^ 治安判事裁判所(justice of the peace court、magistrate court)、地区裁判所(district court)、郡裁判所(county court)、都市裁判所(municipal court)、市裁判所(city court)、首都圏裁判所(metropolitan court)等と様々な名称で呼ばれている。
  7. ^ 記録審裁判所(Recorder's Court)、郡裁判所(County Court)等と様々な名称で呼ばれているが、地区裁判所(District Court)、上級裁判所(Superior Court)と呼ばれるのが普通である。ただし、ニューヨーク州では、主要なものを最高裁判所(Supreme Court)と呼んでいる。

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