アスキーアート 歴史

アスキーアート

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/05 01:33 UTC 版)

歴史

起源

ギヨーム・アポリネール「カリグラム」、1918年

活字によるアート表現の起源は19世紀の古いタイプライター時代に遡る。現在知られている最も古い活字アートは、1898年(明治31年)にフローラ・ステイシー Flora Stacey という女性がを表現したものである[1][2]1918年(大正6年)にはキュビスム先導者の一人であるギヨーム・アポリネールが活字で絵を描いた『カリグラム』 Calligrammes を刊行し、1922年にはホバート・リース Hobart Reese が「活字だけで描いた人物画」を発表して注目された[3]

ASCII以前

入力環境として当初は大文字だけをサポートする3列キーボードが主流だったが、遠隔地への文字送信の研究が進むと改良が加えられた。1931年昭和6年)には5ビットの文字コードであるBaudot Codeボー符号)が国際テレグラフ・アルファベットNo.2として承認され用いられた(当時はビットと言わず、「5単位」と呼称した)。ボー符号はShiftキーでアルファベットモードと数字・記号モードを切り替える機能をもったが、通信回線の品質が不安定だったため切り替えがうまく行かずにしばしば「文字化け」が起きた。通信速度が非常に遅くまた高価であったこと、用途が限られていたこと(軍用や警察用、新聞社用)などのため、1960年代までテキストアートは用いられなかった。1960年代から70年代にかけてはアマチュア無線の遠隔文字送信手段であるラジオテレタイプ(RTTY)が隆盛し、文字でイメージを描いた文字絵が頻繁に用いられた[4][5]

ASCII登場以後

1963年頃に7ビットの文字コードASCIIを用いるページプリンターASR-33」がテレタイプ社から発売されると、5ビットのボー符号は種類の少なさから次第に使われなくなり、ASR-33が標準的なページプリンターとして定着するに伴ってASCIIコードが普及した。ASCIIコードによるテキストアート(狭義の「アスキーアート」)として最古の例は1966年、当時ベル研究所に勤務していたケン・ノウルトン英語版がレオン・ハーモンとの共著『Studies in Perception I』に掲載したもの(実物[リンク切れ][6])が知られている[7]

1974年マイクロプロセッサが登場すると、個人でも所有できる価格とコンパクトさをもったパーソナルコンピュータ(パソコン)の時代が到来した。1990年代初頭までほとんどのパソコンはネットワーク機能を標準搭載していなかったが、愛好家たちはネットワークを構築し、メッセージを電子掲示板(Bulletin Bourd System, BBS)やパソコン通信のコミュニティで交換していた。最初の電子掲示板は1978年2月16日イリノイ州シカゴウォード・クリステンセン英語版が開設したCBBS英語版である。BBSや電子コミュニティは単なる情報伝達だけでなく会話・コミュニケーションの場であったため、感情を表す顔文字が多く生み出された。顔文字の起源も19世紀に遡るが(→顔文字)、現在の顔文字の直接の起源としては1982年9月19日11時44分のタイムスタンプがあるIBM社のスコット・ファールマン英語版(Scott Fahlman)による顔文字『:-)』(笑い)と『:-(』(真剣な)の提案がある。

19-Sep-82 11:44 Scott E Fahlman :-)

From: Scott E Fahlman <Fahlman at Cmu-20c>
I propose that the following character sequence for joke markers:

 :-)

Read it sideways. Actually, it is probably more economical to mark
things that are NOT jokes, given current trends. For this, use

 :-( — Scott Fahlman、Original Bboard Thread in which :-) was proposed
ジョークのマーカーとして :-) を使うことを提案します。
横に読んでください。また、今の話でジョークでないことを示すためには :-( を使いましょう。

日本においては縦置きの顔文字が早くから考案され、1986年6月20日0時28分の若林泰志によるパソコン通信アスキーネット上の顔文字『(^_^)』が確認できる[8][9]。当時はカタカナ以外の日本語文字を表示できるパソコンがそもそも少なく、以下のログも半角カタカナで書かれたものである。若林によると、同じくアスキーネットで「binbou」と名乗っていた人が同時期に『(‾_‾)』を使用しており、どちらが先に使用し始めたかは分からないとしている[10]

Article 102 of 182, 20 Jun 86 00:28:26 JST

Subject: 7 color mask サン、100バンメ オメデトウ サン デス。
Path: asc10441
Newsgroups: bb.life.handic

ジツハ、100バンメノ アーティクルヲ ネラッテタ ノデスガ、ナナイロ カメン
サン ニ トラレテ シマイマシタ。
ホンニン モ ソレトハ キヅカナイ デ トッテ シマッタ ヨウデス ネ。

200 バンメ ヲ ネラウゾ!

  By ナゼカ サイキン カルク ナッタ ワカンasc10441   (^_^)

インターネット時代

1995年Windows95発売を境にインターネットを介した情報交換が社会に一般化し、「IT革命」「インターネット社会」と呼ばれる情報化社会が到来した。膨大な量の情報が従来よりもはるかに安価・容易に「伝達」「コピー」「移動」できるようになったことで、文字によるアート表現は大きく隆盛することになった。人々はウェブ上のフォーラムや掲示板、コメント欄等に「入力可能な文字によるアート」を盛んに投稿し、あるいはメールで顔文字を送りあった。顔文字と同様に感情を伝える手段として拡張フォントとしての「絵文字」も隆盛したが、機種やデバイス環境に依存しない(文字化けしない)プレーンテキストベースの顔文字はコミュニケーションの補完手段として現在も多く用いられている。

アスキーアートそのものを楽しむ文化もインターネット普及とともに大きく広がった。日本においては大型匿名掲示板2ちゃんねる」を中心にして「アスキーアート(AA)文化」とも呼べるものが隆盛した。「顔文字板」(1999年開設)、「モナー板」(2000年開設)、「AA長編板」(2002年開設)からは多くの「名作AA」「AAキャラ」が生み出され、ニュースや専門用語などを連続のAAで「解説」するといった新しい楽しみ方も現れた。これらは現在も2ちゃんねるの「AAカテゴリ」を中心に多くの閲覧・投稿がある。

インターネット以前の文字アートとの大きな違いとして、著作権の所在が不明確なことが挙げられる。2005年には、元々掲示板で生まれたとされる「のまネコ」というキャラクターに自社の著作権表記を付した商品を販売したとして音楽制作大手のエイベックス・グループが大きな批判にさらされる事件もあった(→「のまネコ問題」)。




  1. ^ Joan G. Stark, "The History of ASCII (Text) Art", 2001.
  2. ^ Paul Robert, "Typewriter Art", The Virtual Typewriter Museum, 2005.
  3. ^ The Original ASCII Art Was Just This Guy and His Typewriter, GIZMODO.COM, 2014年1月23日付
  4. ^ ジョアン・スターク英語版, DEVELOPMENT OF (ASCII) TEXT ART, 2000年.
  5. ^ RTTY art made easy, RTTY Journal 1970年11月号.
  6. ^ Wayne E. Carlson, "1966 Studies in Perception I by Ken Knowlton and Leon Harmon (Bell Labs)", 2003年.
  7. ^ Wayne E. Carlson, An Historical Timeline of Computer Graphics and Animation[リンク切れ], オハイオ州立大学デザイン学部, 2003年.
  8. ^ 顔文字の歴史(Web Archives), 針谷喜久雄(通商産業省電子技術総合研究所)
  9. ^ 顔文字の起源:若林泰志[リンク切れ]
  10. ^ 顔文字の歴史
  1. ^ たとえば2ちゃんねるでは、デバイスとしてウェブブラウザを使う関係上、大半のWindows用ブラウザのデフォルトであった「MS Pゴシック」がアスキーアート用フォントのデファクトスタンダードとなり、後年には「モナーフォント」を皮切りとして、MS Pゴシックと全く同じ文字幅で設計されたフォントが多数制作されている。






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