アジリジン アジリジンの概要

アジリジン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/21 06:22 UTC 版)

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アジリジン
識別情報
CAS登録番号 151-56-4 
ChemSpider 8682 
EC番号 205-793-9
KEGG C11687
特性
化学式 C2H5N
モル質量 43.07 g mol−1
外観 無色の粘性液体[1]
密度 0.8321 g/ml 20 °C[2]
融点

-77.9°C

沸点

56°C

への溶解度 混和性
危険性
引火点 -11°C
関連する物質
関連する複素環式化合物 ボリラン,
エチレンオキシド,
エチレンスルフィド
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

構造

アジリジンの原子上の結合角は約60度で、通常の炭化水素に見られる結合角109.5度よりもだいぶ小さい。そのため、シクロプロパンエチレンオキシドと同程度の角ひずみが生じている。この種の化合物の結合はバナナ型結合モデルを使って説明できる。アジリジンは直鎖状脂肪族アミンと比べて塩基性が弱く、酸解離定数は7.9である。またアジリジンの大きな結合角によって窒素原子の反転への障壁が高まっている。この障壁が十分高いため、N-クロロ-2-メチルアジリジンのシス体とトランス体は分離することができる。

合成

アジリジン環は何通りかの方法で合成することができる。これらをアジリジン化という。

ハロアミンとアミノアルコールの環化

分子間求核置換反応で、アミノ基が隣接するハロゲンと置換するとハロアミンからアジリジンを生成する。アミノアルコールでも同様の反応が起こるが、ヒドロキシ基を予め良い脱離基に変換しておく必要がある。アミノアルコールの環化反応はウェンケル合成と呼ばれ、ハロアミンからのものはガブリエルエチレンイミン法と呼ばれる[5]

ニトレン付加

アルケンへのニトレンの付加はアジリジン合成の優れた方法である。ニトレンはアジ化合物光分解または熱分解によって作られる[6]

トリアゾリンの分解

トリアゾリンを熱分解もしくは光分解すると窒素原子が外れ、アジリジンが残る。トリアゾリンはアジ化合物とアルケンの付加環化反応で作られる。

エポキシドから

アジ化ナトリウムの存在下でエポキシドを開環し、続いてトリフェニルホスフィンで還元して窒素原子を除くとアジリジンができる[7]

反応

求核的開環反応

アジリジン環は立体的ひずみが大きいため、多くの求核剤によって開環反応を起こす。アルコールやアミン、チオールなどが付加し、アミノエチル化生成物を与える。アルキルリチウムギルマン試薬も効果的な求核剤となる。

開環反応の応用として、トリメチルシリルアジドと非対称性を持つリガンドからオセルタミビル不斉合成する反応がある[8][9]


  1. ^ http://monographs.iarc.fr/ENG/Monographs/vol71/mono71-12.pdf
  2. ^ CRC Handbook of Chemistry and Physics, 59th ed, ISBN 0-8493-0459-8
  3. ^ Heterocyclic chemistry T.L. Gilchrist ISBN 0-582-01421-2
  4. ^ Epoxides and aziridines - A mini review Albert Padwaa and S. Shaun Murphreeb Arkivoc (JC-1522R) pp 6-33 Online article
  5. ^ Gabriel Ethylenimine Method
  6. ^ Addition reactions of ethoxycarbonylnitrene and ethoxycarbonylnitrenium ion to allylic ethers M. Antonietta Loreto, Lucio Pellacani, Paolo A. Tardella, and Elena Toniato Tetrahedron Letters, Volume 25, Issue 38, 1984, Pages 4271-4274 Abstract
  7. ^ Readily Available Unprotected Amino Aldehydes Ryan Hili and Andrei K. Yudin J. Am. Chem. Soc.; 2006; 128(46) pp 14772 - 14773; (Communication) doi:10.1021/ja065898s
  8. ^ De Novo Synthesis of Tamiflu via a Catalytic Asymmetric Ring-Opening of meso-Aziridines with TMSN3 Yuhei Fukuta, Tsuyoshi Mita, Nobuhisa Fukuda, Motomu Kanai, and Masakatsu Shibasaki J. Am. Chem. Soc.; 2006; 128(19) pp 6312 - 6313; Abstract
  9. ^ The catalyst is based on yttrium with three isopropyloxy substituents, the ligand is a phosphine oxide (Ph = phenyl). with 91% enantiomeric excess (ee)


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