アイルランド料理 アイルランド料理の概要

アイルランド料理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/28 01:25 UTC 版)

アイリッシュシチュー

概要

主食となるのはジャガイモパン。肉は豚肉を中心に羊肉牛肉が用いられる。また魚介類が豊富に採れるため、魚ではサケタラ、その他に甲殻類カキが利用される。野菜では前述のジャガイモのほか、キャベツタマネギなど寒冷に強い作物が使用される。

アイルランドは冷涼な気候ながら農業が盛んで食材は豊富である。水産業も盛んだったが、近年は乱獲により漁業資源の枯渇が問題になっている。

フル・ブレックファスト

特に伝統的な料理ではジャガイモと乳製品は欠かせない食材となっている。コルカノン:colcannon/:cál ceannann)はキャベツやケールを混ぜたマッシュポテトチャンプ(英:champ/愛:brúitín)は牛乳で煮たみじん切りの細ネギやパセリを加えたマッシュポテトである。ボクスティ(英:boxty/愛:bacstaí または arán bocht tí)はポテトパンケーキの一種で、焼くか茹でて調理される。

パンはイーストでは無く重曹を加えた無発酵パンが主で、ソーダブレッド(英:soda bread/愛:arán sóide)と呼ばれる。この生地を丸くのばしたのちに十字に四等分してから焼いたものは、ファール(英:farl)と呼ばれている。

アイルランドの一般的な朝食は、ベーコンの脂で焼くベーコンと卵ソーセージ。これにボクスティやスライスしたフライドポテトがつくことがある。

古くから海藻を食べる習慣があり、ダルス(英:dulse、学名Palmaria palmata)という紅藻の一種は水煮にしてゼリー状に固め、そのまま食べる他、チャンプや魚のスープシチューに混ぜたり、バターを塗ったパンにはさんでサンドイッチにもする。ヤハズツノマタ(英語)Chondrus crispus)からはプディングが作られる。

伝統料理

パン類

バームブラック2斤

豚肉料理

ベーコン・アンド・キャベツ

ジャガイモ料理

コルカノンはアイルランド特産品種のジャガイモ (Irish potato) とケールで作る料理

魚介類

海岸線が長いにもかかわらず、他の海洋国家と比べるとアイルランドの海産物の消費量は多くない[4]傾向があり、ヨーロッパの平均を大きく下回る[4]

過去には海産物をもっと食べていたとしても、ここ数世紀で摂取量が著しく減少しており、さまざまな原因が考えられる。ひとつには、16世紀後半から始まったイギリス統治下、アイルランド人の漁船所有が厳しく制限されたこと、アイルランド経済が伝統的に牛を基盤したことのほか、他のカトリック諸国と共通の特徴として、魚介類は伝統的に金曜日の断食に摂る宗教的な食べ物であった背景がある。また魚介類、特に貝には貧困と植民地化という負の記憶が結びつくようになった[5]

それでもゴールウェイダブリンなど海沿いの都市では、魚介類は依然として食生活の重要な役割を担っている。

魚の売り手を称える伝統的な民謡「モリー・マローン」はダブリン市民の愛唱歌で、ゴールウェイでは毎年9月にゴールウェイ国際オイスター・フェスティバルが催され海外から観光客を引きつけている[6]

現代のアイルランドの海鮮料理の一例に「ダブリン・ロウヤー (弁護士)」がある (ウィスキーと生クリームで調理したロブスター)[7]

食用魚でおそらくもっとも消費されるのはサケ類タラ類で、海草ヤハズツノマタ(英語)あるいはダルスがよく使われる[注釈 1]。魚介類とは対照的に、アイルランドの食卓には昔から海藻がしばしばのぼり、今日でも消費量は減っていない。一番好まれる種類は2つありいずれも紅藻で、「ディリスク」 (ダルス) とcarraigín(アイルランド語) (小さな岩 = ヤハズツノマタ) あるいはClúimhín Cait(アイルランド語) (猫のパフ = ツノマタの仲間) で、カリブ海諸国でも食用にされる。

その他

アイルランド伝統の黒ビール「ポーター」を砕いたチェダーチーズに練り込んだハードチーズ「ポーター」

伝統的な飲み物

アルコール飲料

アイリッシュ・ウイスキー

ソフトドリンク

アイリッシュ・ブレックファスト・ティー

注釈

  1. ^ 日本ではツノマタの用途は食用というよりも主に壁土の増粘材もしくは石けんの代用が広く知られ、コトジツノマタやツノマタを煮てゼリー状にしたものが千葉県銚子市や茨城県鹿嶋市などで食べられている[8][9]

出典

  1. ^ Forever Irish. “Don't Leave Ireland Without Trying Their Famous Soda Bread(アイルランドを訪問したらぜひ名物のソーダブレッドをお試しください)” (英語). 5amily. 2019年1月23日閲覧。
  2. ^ Dewdropdeb (2008年5月5日). “Traditional Irish Shepherd's Pie (昔ながらのシェパーズパイ)” (英語). Food.com. Recipes. 2012年5月13日閲覧。
  3. ^ Finn, Christina (2012年3月17日). “Top Ten Recipes for St Patrick's Day - A list of Irish Mammy dinners have been summed up by Irish Central listing corned beef and shepherd's pie among the staples of the Irish diet (聖パトリックの日の料理レシピ・トップ10 - コンビーフとシェパーズパイを含むアイルランド家庭料理から、アイルランドのおふくろ料理一覧、Irish Centralまとめ)” (英語). Ireland's best bits – stuff the world thinks we're great at (とっておきのアイルランド - 世界から得意だと認められたもの). http://thedailyedge.thejournal.ie/irelands-best-bits-stuff-the-world-thinks-were-great-at-384296-Mar2012/ 2012年5月13日閲覧。 
  4. ^ a b “Why do Irish people not eat more fish?(アイルランド国民の海産物消費量が少ない理由)” (英語). アイリッシュ・タイムズ. http://www.irishtimes.com/news/why-do-irish-people-not-eat-more-fish-1.1412255 2017年6月21日閲覧。 
  5. ^ Mac Con Iomaire, Mairtin (2006-01-01). “The History of Seafood in Irish Cuisine and Culture (アイルランド料理と文化におけるシーフードの歴史)” (英語). Conference papers (School of Culinary Arts and Food Technology, ダブリン工科大学(英語)). オリジナルの10 March 2016時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160310014024/http://arrow.dit.ie/cgi/viewcontent.cgi?article=1002&context=tfschcafcon 2017年6月21日閲覧。. 
  6. ^ Galway International Oyster & Seafood Festival (ゴールウェイ国際オイスター・フェスティバル)” (英語). Galwayoysterfest.com. 2017年12月12日閲覧。
  7. ^ Ireland: "Dublin Lawyer" and "Thackeray's Lobster" (アイルランド:「ダブリンの弁護士」と「サッカレイのロブスター」)” (英語). Irelandseye.com (2007年3月17日). 2017年12月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年2月15日閲覧。
  8. ^ ツノマタ (学名 Chondrus ocellatus Holmes)”. ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑. ぼうずコンニャク株式会社. 2019年2月15日閲覧。 協力/岩田豊紀(三重県鳥羽市水産研究所); 千葉県銚子市 山田海草店
  9. ^ 千原光雄 1970.
  10. ^ Today Show Irish Breakfast (アイリッシュ・ブレックファスト)” (英語). MSNBC (2009年3月17日). 2010年9月21日閲覧。
  11. ^ Traditional Irish Breakfast (伝統的なアイリッシュ・ブレックファストのレシピ)”. Foodireland.com. 2010年9月21日閲覧。


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