ほうとう ほうとうと山梨県

ほうとう

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/06 00:54 UTC 版)

ほうとうと山梨県

山梨県内では現在でも日常的な料理として認識されている[8]。後述するように、食生活の変化や若年夫婦の核家族化で、一般家庭で食卓に上る頻度は下がってきている。一般的に、料理店では1人分ずつ、鉄鍋で鍋料理鍋焼きうどんのような体裁で供される。よって、県外の人から「うどんの一種」または「鍋料理」と認識される場合がある。しかし、県内の家庭では1人分ずつ小鍋で作ることは希で、家族分を大鍋で作り、どんぶりか味噌汁椀に一食分が盛られ主食として供される。味噌汁のごとく、汁物としてに添えられることもある。よって、山梨県内ではあくまでも固有の料理、あるいは食事と捉えられている。

前述の通り、山梨県内では「ほうとう」はあくまで「ほうとう」であって、一般に言う「うどん」とは異なるものとして認識している。粉食文化の浸透から、山梨県ではほうとう以外にも、夏食べる冷麦を「おざら」、冬食べるうどんを「ゆもり」と呼びわけることがある。また、いわゆる「吉田のうどん」は、「ほうとう」とは全く異質の麺料理である。

山梨県内ではほうとうにカボチャを入れることが多い。冬至にはほうとうにカボチャを入れる。

かつては麺を打つところから家庭で行い、大鍋に大量に作れ、調理法が簡易であることから、大家族の食を賄うことができる日常食であった。麺の加減や煮込む具材など、家々毎に「おふくろの味」があった。食べきれず余って翌日に沸かし返した「ほうとう」は、とろみが出て味が熟れてくるので、作りたてよりそちらを好む人も多い。日常食としての「ほうとう」は麺よりも野菜の量が多く、対して小麦粉を消費する「ウドン」は特別な日(モノビ)や来客時に振舞われる贅沢な料理であると意識されており、両者の区別は明確であった。

戦後には高度経済成長に伴う産業構造の変化で農業が衰退し、米食が一般化すると、日常食としての地位は下がる。しかしながら、現在でも山梨県地方においては献立のひとつの選択肢である。スーパーマーケットにおいて固形出汁や既製品の味噌を始め、ほうとう向けの幅広麺が販売されていることから、自家用に麺を打つことも少なくなり、観光食ほうとうの影響も受け、製法や味も画一化される傾向にあり、日常食としての在り方は変化している。

現在では外食産業としてほうとうを扱う店が数多くある。一般的なほうとうのみを扱う店や、小豆ぼうとう(粉ぼうとう)や汁のベースにコチュジャンなどを使用したもの、麺に竹炭などを含めたもの、家庭では通例ほうとうの具材として使用しないカキスッポンカニを入れる店など多彩である。

ご当地グルメに応用する動きもある。山梨県笛吹市は料理研究家・西本淑子の助言を得て、ほうとう麺にラーメン風スープを組み合わせた「ラーほー」を考案[9]。鍋で煮込む本来のほうとうより早く調理でき、安価(1000円以下)な麺料理として市内飲食店で提供する[9]


注釈

  1. ^ なお、後述するようにほうとうと「うどん」は区別されるが、山梨県の民俗語彙においては小麦粉をふんだんに用いたハレの日の「ほうとう」を「ウドン」と呼称するため、民俗語彙の「ウドン」も今日的意味での「うどん」とは異なる。そのため、本項では民俗語彙としての「ウドン」はカタカナ表記で記す。
  2. ^ 「名産・特産・本場・名物」と表示する為には、山梨県内で製造された太さが1.5 mm前後の麺を使用するものと「公正競争規約施行規則」で定められている。

出典

  1. ^ 農山漁村の郷土料理百選”. j100s.com. 2021年4月12日閲覧。
  2. ^ 知らないと損? 山梨の味噌屋さんに「ほうとう」の作り方を聞いた”. マイナビニュース (2020年2月25日). 2021年4月12日閲覧。
  3. ^ 若神子のほうとう祭(文化遺産オンライン)
  4. ^ 『甲州食べもの紀行』、pp.68 - 69
  5. ^ a b 『甲州食べもの紀行』、p.70
  6. ^ 影山正美「ホウトウ」『山梨県史民俗編』(2003年)第二章「1日 1日のケの生活」第五節
  7. ^ 影山正美「観光食ホウトウの誕生」『山梨県史民俗編』第三章(2003年)「開発 観光開発と民俗」第三節
  8. ^ 石川尚子・北村由紀子・加藤征江 (2003) "郷土料理に対する富山大学学生の意識調査"日本調理科学会誌.36 (4) :421-430. doi:10.11402/cookeryscience1995.36.4_421
  9. ^ a b ほうとう×ラーメン=「ラーほー」新たなソウルフードに 山梨・笛吹産経新聞、2018年7月13日、2018年7月21日閲覧。
  10. ^ 高野悦子、「しなのの味」 『調理科学』 1971年 4巻 2号 p.101-105, doi:10.11402/cookeryscience1968.4.2_101
  11. ^ 煮ぼうとう 深谷市ホームページ 更新日:2016年12月8日
  12. ^ 『美味いぞ!セブン-イレブンの埼玉フェア』開催! - セブン-イレブン ジャパン・2010年10月27日
  13. ^ 「武州深谷煮ぼうとう」の商品化について 〜埼玉B級ご当地グルメ王決定戦とサークルKサンクスの連携事業〜 - 埼玉県・2012年1月17日


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