はがき はがきの概要

はがき

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/30 13:40 UTC 版)

形式

1895年のバイエルン王国のはがき(宛先の記名面、メッセージは裏面)

はがきは宛先と本文を一枚の厚めの紙に書いて、封筒に入れずにそのまま送付する形式の手紙である。日本では、はがきに63切手(往復はがきは126円)を貼って郵便局もしくはポストから投函するのが一般的である。なお官製はがきなどすでに切手が印刷されているはがきもある。(後述)

規格

日本アメリカ合衆国ドイツなどでは「はがき」に一定の規格・様式を設けており、郵便物の一つの区分になっている[2]。一方、イギリスフランスイタリアなどでは「はがき」は通常の書状(または小型書状)と同じ扱いであり、別の区分にはなっていない[2]

作成者

郵便事業は通常、国家事業や公社的事業であり、国家または公社(もしくは公社に準ずる事業体)が発行する郵便はがきと、民間の印刷業者などが発行する郵便はがきの2種類が存在することがある。前者は「官製はがき」、後者は「私製はがき」と通称される。これらの言葉は例えば1945年の第89回帝国議会における衆議院委員会の議事録にその使用例が見える(堀切善次郎内務大臣、田村秀吉衆院議員の発言にみられる)。2007年に民営化が行われた日本郵便は従来の官製はがきを「日本郵便株式会社製はがき」などと呼称する場面もみられる[3]が、一般的ではない。

郵便局やコンビニなどで購入できる場合「官製はがき」が多く、はがきの表面に切手と同等の効力を持つ額面が記載された「料額印面」が印刷されており、これが料金支払済みであることを示す。この場合、郵便切手を貼る必要はなくそのまま出すことができる。郵便料金改定前の古い官製はがきでも、差額分の切手を貼ることで使用することができる。なお、この料額印面を切り取って私製はがきに貼ることはできない。他方、「私製はがき」には、そのような印面は印刷されておらず、四角い枠で囲まれた切手貼り付けスペースに郵便事業体もしくはコンビニなどから料金分の切手を購入し、はがきに貼り付けなければならない。1895年バイエルン王国の郵便はがきである右の写真を一例に説明すると、右上の料額印面はニュルンベルク(NUERNBERG)の4月27日消印で抹消され、左下には、4月28日付けのミュンヘン(MUENCHEN)の到着印が押されている。

アメリカ英語では、官製はがきをpostal card、私製はがきをpost cardと呼ぶが、イギリス英語では両者共にpost cardと呼んでいる。

プライバシー

はがきは基本的には封書と異なり、カード状となっているので、通信内容が他人に読み取られ得る状態で配達される。企業が発送する請求書領収書など、プライバシー保護などの理由で内容を秘匿したいものは、従来は封書で発送されていたが、近年では郵送費の節減を目的として、はがきを利用するケースが増加している。この場合、記載事項が見えないようにするため、目隠しシールを貼ったはがきや薄く張り合わせた接着はがき(「圧着ハガキ」や「封緘葉書」(ふうかんはがき)[注 3]と通称される)を使用する。一般家庭や個人商店用に封緘葉書を作成できるキットもある。ただし、郵便局員には守秘義務があるので、業務上知り得た情報は在職中はもちろん、退職後も人に漏らすことは郵便法第8条で禁止されている。

往復はがき

往信用はがきと返信用はがきとの2枚をつなげた往復はがきがある。通常の郵便料金2枚分(63円×2)の126円で販売している。発信人は半分に折って往信用はがきに宛先を書いて投函し、受取人は中央で切り離して返信用はがきを送り返すことができる。

日本では、往信用はがきの宛名面の右側に返信用はがきの文面の左端がつながる[4]

折った内側となる返信用はがきの宛名面には返信先の住所氏名を記入しておくが、自分宛となるため宛名には「宛」または「行」と記載しておくのが一般的である。なお、受取人が返信する際は「宛」や「行」を取り消し線で消して横に「様」や「御中」と記載するのが一般的である。

返信を必要とする会合の通知などによく用いられる。また、ダイレクトメールなどを往復はがきの形式で送付する場合、返信用はがきを料金受取人払で送付することで返信がなかった分の郵送料金を負担しなくてもよい。

語源

「はがき」は「はしがき」、つまり「端・書き」から派生した言葉で「端書」・「羽書」とも書かれた。古文書学においては文書料紙の右端を「端」と称し、端部分には「端書」(はしがき)と呼ばれる覚え書き・メモ等が記されていることが多いことから、もともと「端書」は紙片等に書き付けた覚え書き、また覚え書き等を書き付けた当の紙片等をも意味した(紙片に記したメモを文書に貼り付けたものは、付箋や押紙などと呼ぶこともある)。江戸時代には、金銭関係の催促状や通知文書が、「端書」と呼ばれた。明治時代に郵便制度が出来てからは、もっぱら「郵便はがき」の意味で使われ始め「葉書」という表記が一般になったとされる。そのため、今日はがきといえば一般的に「郵便はがき」のことを指すが、「葉書」は当て字であり、「端」の代わりに「葉」を使う理由については、「タラヨウ(多羅葉)」の木から「葉書」の「葉」が来た、など諸説あり、確かなことは分かっていない。


注釈

  1. ^ 「葉書」は借字とされる。(『新明解国語辞典第四版』 三省堂、1996年)
  2. ^ 日本郵便では「はがき」・「葉書」双方を使用しているが、約款等の正式表記は漢字の「葉書」を使用する[1]
  3. ^ 現在の郵便書簡が終戦直後まで「封緘葉書」と呼ばれていたがそれとは別物。

出典

  1. ^ 内国郵便約款” (PDF). 日本郵便 (2019年9月9日). 2019年9月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月24日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h 総務省. “諸外国の郵便制度について”. 2019年1月27日閲覧。
  3. ^ 郵便番号・バーコードマニュアル 機械処理可能な郵便物”. 日本郵便. 2023年2月19日閲覧。
  4. ^ 往復はがきの書き方”. 年賀状・暑中見舞いドットコム (2003年). 2020年1月3日閲覧。
  5. ^ a b 石井寛治『情報・通信の社会史』1994
  6. ^ 田邊幹「メディアとしての絵葉書」『新潟県立歴史博物館研究紀要』第3集、2002
  7. ^ 山田俊幸 「日本絵葉書事始め」『アンティーク絵はがきの誘惑』 産経新聞社、2007年


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