たたら製鉄 たたら製鉄の炉内反応

たたら製鉄

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/24 09:34 UTC 版)

たたら製鉄の炉内反応

たたら製鉄における炉内の反応については諸説あるが、さまざまな化学反応が複雑にからみ合っていることは確かである[64]

まず、フイゴによって炉の中に空気が吹き込まれて木炭が燃焼すると、空気中の酸素(O2)と木炭の炭素(C)とが反応して二酸化炭素(CO2)を生成し、それがさらに炭素と反応して一酸化炭素(CO)が生じる[65]

雨上がりで湿度が高い時など、条件によっては炭素が空気中の水分(H2Oとも反応を見せる[66]

こうして出来た一酸化炭素は炉内を還元性雰囲気へと導き、砂鉄還元の主役を担う。砂鉄の主成分は四酸化三鉄(Fe3O4)だが、赤目砂鉄など、種類によっては酸化第二鉄(Fe2O3)も多少含まれる。砂鉄は炉の中を降下してゆく過程で一酸化炭素と反応して容易に酸化第一鉄(FeO)となり、より高温の領域ではその酸化第一鉄がさらに一酸化炭素と反応して鉄(Fe)が取り出される。[65]

また、炉の下部の高温域においては、砂鉄と木炭との間で直に還元反応がおこる。これを直接還元と呼ぶ[67]

これら還元された鉄の粒は、木炭に直接触れて炭素を吸収することで融点が下がり、溶融した銑鉄となって炉外へと流し出される他、ケラ押しでは炉底部において焼結して半溶融状のケラを形成する[35]

一方で、酸化第一鉄は粘土製の炉壁の主成分であるケイ酸(SiO2)とも反応してファイヤライトFe2SiO4)となり、比較的早期にノロを形成する[64]。炉底に溜まったノロは砂鉄中の二酸化チタンTiO2)などの不純物を溶融させることで砂鉄を製錬する他、生成したケラを包みこむ形で再び酸化するのを防ぐ役割も果たす[68]

他にも、たたら製鉄には近現代製鉄にくらべ炉内の酸素濃度が高いという特徴がある。 すなわち、砂鉄のみが還元されてケイ酸などの不純物は還元されないほどの、適度な酸素濃度を保つことで鉄の品質を高めているわけである。 また、砂鉄は粒が細かいため木炭との接触時間が長くなり、高い酸素濃度の中でも十分に炭素を吸収できるのも大きな長所と言える。[35]


  1. ^ 古事記」には神武天皇の后として「比売多多良伊須気余理比売(ひめたたらいすけよりひめ)」の名が記述されている[5]。また、「日本書紀」では「媛蹈鞴五十鈴媛命(ひめたたらいすずひめのみこと)」となっている[6]
  2. ^ 20世紀前半期の冶金学者である俵国一は「古来穏健なる発達を遂げて一種独特の点がある」と評している[8]
  3. ^ 江戸後期に公儀御用人を務めた山田浅右衛門吉睦の著書『古今鍛冶備考』(1819年頃)の記述による。一方、同じ江戸後期に活動した刀工、水心子正秀が著した『剣工秘伝誌』(1821年)では、ケラ押しの発生時期を千種鋼の登場より100年以上前の応永年間(1394 - 1427年)としている。[32]
  4. ^ 明治期以降にはその形から「包丁鉄(ほうちょうてつ)」とも呼ばれる[34]
  5. ^ 金偏に胴。
  6. ^ ただし玉鋼のみ。
  7. ^ a b ただしケラに含まれる分のみ。
  8. ^ ただしケラ塊。
  9. ^ ただし、日本刀のうち慶長年間より前に作られたもの、すなわち「古刀」にまで遡ると、その材料や製法は伝承されておらず、使われた鋼がたたら製鉄によるものなのか否かは判断できない[69]
  1. ^ 鈴木 2005, p. 97.
  2. ^ 俵 1953, p. 64.
  3. ^ a b c d e 清永 1994, p. 1453.
  4. ^ a b エンカルタ総合大百科』2003年版、マイクロソフト、見出し語「たたら」。
  5. ^ 次田真幸訳注 『古事記 全訳注』中巻、講談社〈講談社学術文庫〉、1980年、44頁。
  6. ^ 宇治谷孟訳 『全現代語訳 日本書紀』上巻、講談社〈講談社学術文庫〉、1988年、108頁。
  7. ^ a b 小塚 1966, p. 38.
  8. ^ a b 俵 1910, p. 103.
  9. ^ 俵 1933, 著書名副題.
  10. ^ 永田 1998, p. 27.
  11. ^ たたらの話”. 日立金属. 2016年12月5日閲覧。
  12. ^ 大槻文彦大言海』第3巻、冨山房、1934年、238頁。
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