たたら製鉄 たたら製鉄の歴史

たたら製鉄

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/15 18:38 UTC 版)

たたら製鉄(たたらせいてつ、:Tatara)とは、日本において古代から近世にかけて発展した製鉄法で、炉に空気を送り込むのに使われる(ふいご)が「たたら」と呼ばれていたために付けられた名称である。砂鉄鉄鉱石粘土製の炉で木炭を用いて比較的低温で還元し、純度の高いを生産できることを特徴とする[1][2]近代の初期まで日本の国内鉄生産のほぼすべてを担った[3]明治以降急激に衰退し、現在では、日本刀の原材料「玉鋼」の生産を目的として、島根県仁多郡奥出雲町にある「日刀保たたら」などが稼働している。


注釈

  1. ^ 古事記」には神武天皇の后として「比売多多良伊須気余理比売(ひめたたらいすけよりひめ)」の名が記述されている[5]。また、「日本書紀」では「媛蹈鞴五十鈴媛命(ひめたたらいすずひめのみこと)」となっている[6]
  2. ^ 20世紀前半期の冶金学者である俵国一は「古来穏健なる発達を遂げて一種独特の点がある」と評している[8]
  3. ^ 江戸後期に公儀御用人を務めた山田浅右衛門吉睦の著書『古今鍛冶備考』(1819年頃)の記述による。一方、同じ江戸後期に活動した刀工、水心子正秀が著した『剣工秘伝誌』(1821年)では、ケラ押しの発生時期を千種鋼の登場より100年以上前の応永年間(1394 - 1427年)としている。[33]
  4. ^ 明治期以降にはその形から「包丁鉄(ほうちょうてつ)」とも呼ばれる[35]
  5. ^ 金偏に胴。
  6. ^ ただし玉鋼のみ。
  7. ^ a b ただしケラに含まれる分のみ。
  8. ^ ただしケラ塊。
  9. ^ ただし、日本刀のうち慶長年間より前に作られたもの、すなわち「古刀」にまで遡ると、その材料や製法は伝承されておらず、使われた鋼がたたら製鉄によるものなのか否かは判断できない[70]

出典

  1. ^ 鈴木 2005, p. 97.
  2. ^ 俵 1953, p. 64.
  3. ^ a b c d e 清永 1994, p. 1453.
  4. ^ a b エンカルタ総合大百科』2003年版、マイクロソフト、見出し語「たたら」。
  5. ^ 次田真幸訳注 『古事記 全訳注』中巻、講談社〈講談社学術文庫〉、1980年、44頁。
  6. ^ 宇治谷孟訳 『全現代語訳 日本書紀』上巻、講談社〈講談社学術文庫〉、1988年、108頁。
  7. ^ a b 小塚 1966, p. 38.
  8. ^ a b 俵 1910, p. 103.
  9. ^ 俵 1933, 著書名副題.
  10. ^ 永田 1998, p. 27.
  11. ^ 佐藤健太郎『世界史を変えた新素材』新潮社刊、2018年10月25日。
  12. ^ たたらの話”. 日立金属. 2016年12月5日閲覧。
  13. ^ 大槻文彦大言海』第3巻、冨山房、1934年、238頁。
  14. ^ 齋藤・坂本・高塚 2012, p. 180.
  15. ^ 飯田 1980, p. 128.
  16. ^ 永田 1998, p. 32.
  17. ^ 久保善博, 佐藤豊, 村川義行, 久保田邦親「たたら製鉄の生産性と製品品質に及ぼす装荷比(砂鉄/木炭)の影響」『鉄と鋼』第91巻第1号、日本鉄鋼協会、2005年、83頁、doi:10.2355/tetsutohagane1955.91.1_83ISSN 00211575 
  18. ^ 河瀬 1997, p. 219.
  19. ^ a b 舘 2005, p. 7.
  20. ^ 小塚 1966, p. 40.
  21. ^ 小塚 1966, pp. 38–40.
  22. ^ 永田・羽二生・鈴木 2001, p. 46.
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  24. ^ 舘 2005, p. 2.
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  29. ^ たたらの話”. 日立金属. 2016年11月19日閲覧。
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  33. ^ a b 鈴木 2005, pp. 98–99.
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  37. ^ a b 片山・北村・高橋 2005, p. 125.
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  43. ^ 俵 1953, p. 45.
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  50. ^ 鉄をはぐくむーー出雲國たたら風土記(上)日本刀支える極上「玉鋼」日本古来の伝統・技術を継承『産経新聞』朝刊2017年7月9日
  51. ^ 永田・鈴木 2000, p. 71.
  52. ^ 出雲國たたら風土記~鉄づくり千年が生んだ物語~”. 文化庁「日本遺産」説明資料. 2017年7月15日閲覧。
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  58. ^ a b 鈴木 2001, p. 158.
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  62. ^ a b 鈴本禎一「たたら製鉄と和鋼記念館(<特集>化学と文化財)」『化学教育』第27巻第1号、日本化学会、1979年、27頁、doi:10.20665/kagakukyouiku.27.1_24ISSN 03862151NAID 110001822554 
  63. ^ 鈴木 2001, p. 156.
  64. ^ 鉄と生活研究会編 『鉄の本』 2008年2月25日初版1刷発行、ISBN 9784526060120
  65. ^ a b 清永 1994, p. 1456.
  66. ^ a b 小松芳成, 後藤正治, 麻生節夫「たたら製鉄に関する実験的検討 : 創造工房実習より得られた二三の知見」『秋田大学工学資源学部研究報告』第22巻、秋田大学工学資源学部、2001年10月、54頁、ISSN 1345-7241 
  67. ^ 丸本浩「「たたら製鉄法」の基礎研究と定量実験としての教材化<第2部 教科研究>」『中等教育研究紀要 /広島大学附属福山中・高等学校』第49巻、広島大学附属福山中・高等学校、2009年3月、259-264頁、doi:10.15027/32973ISSN 0916-7919NAID 120004161195 
  68. ^ 清永 1994, p. 1456–1457.
  69. ^ 永田 1998, p. 31.
  70. ^ 天田 2004, p. 12.
  71. ^ 『刀剣美術』 2017年7月号(726号)、日本美術刀剣保存協会、31–32頁。
  72. ^ 天田 2004, p. 182.
  73. ^ 渡邊玄 「『NPO ものづくり教育たたら』の活動事例」『まてりあ』第54巻第4号、日本金属学会、2015年、152–154頁。
  74. ^ 東田たたらプロジェクト2017”. 北九州イノベーションギャラリー. 2017年12月19日閲覧。
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  76. ^ 家畜取引の商いと近江牛” (PDF). 滋賀県配合飼料価格安定基金協会. 2017年8月9日閲覧。
  77. ^ 学長ブログ第4回「ブランドを産み出す力」”. 県立広島大学 (2014年2月14日). 2017年8月9日閲覧。
  78. ^ 奥出雲の和鉄 - たたらの歴史 -”. 鉄の道文化圏推進協議会. 2020年10月6日閲覧。
  79. ^ 有岡利幸 『里山Ⅰ』 法政大学出版局、2004年、231–261頁。
  80. ^ 北村・片山・高橋 1997, p. 295.
  81. ^ たたら侍”. 2017年6月6日閲覧。
  82. ^ 日本のものづくりの神髄に迫る群像ドキュメンタリー”. NHK (2022年6月22日). 2022年6月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月22日閲覧。





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