きずな (人工衛星)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/22 22:14 UTC 版)
超高速インターネット衛星「きずな(WINDS)」 | |
---|---|
所属 | 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) |
主製造業者 | NEC東芝スペースシステム |
公式ページ |
超高速インターネット衛星 「きずな(WINDS)」 |
国際標識番号 | 2008-007A |
カタログ番号 | 32500 |
状態 | 運用終了 |
目的 | 通信衛星 |
設計寿命 | 5年 |
打上げ機 | H-IIAロケット 14号機 |
打上げ日時 | 2008年2月23日17時55分 |
通信途絶日 | 2019年2月9日[1] |
運用終了日 | 2019年2月27日[2] |
物理的特長 | |
本体寸法 | 2m x 3m x 8m |
最大寸法 |
21.5 m (太陽電池パドル翼端間) |
質量 |
4,850 kg(打上げ時) 2,700 kg(静止軌道初期) 2,400 kg(乾燥質量) |
発生電力 |
約5.2 kW以上 (EOL夏至において) |
主な推進器 | BT-4 |
姿勢制御方式 | 3軸姿勢制御 |
軌道要素 | |
軌道 | 静止軌道 |
静止経度 | 東経143度 |
高度 (h) | 35,786 km |
通信機器 | |
MBA | マルチビームアンテナ |
MPA | マルチポートアンプ |
APAA | アクティブ・フェーズドアレイ・アンテナ |
ABS | 高速スイッチングルータ |
IFS | IFS交換部 |
NITR | 網情報送受信部 |
目的
政府が2001年(平成13年)に策定した「e-Japan重点計画」に基づき、無線による広範囲かつ超高速の固定用国際ネットワークを構築する技術を実証するために開発された。[3]
また、e-Japan戦略を受けてJAXAが提案している宇宙インフラ構想「i-Space」の一翼を担う衛星でもある。
アジア・太平洋の高速インターネットが行き届いていない地域(離島)、災害時など地上設備による通信が困難な環境での通信技術の獲得、地域間の情報格差を解消し、医療・教育・災害対策に寄与する事を目的としている。
通信速度
- 一般家庭用
- 直径45cm(一般的な衛星放送用アンテナと同じサイズ)のアンテナを設置した場合、下り(衛星から家庭へ)は約155Mbps、上り(家庭から衛星)は1.5 - 6Mbpsである。
- 企業用
- 直径5mの地上局を設置した場合、1.2Gbpsでの通信が可能である。
- 2010年に「きずな」搭載中継器の1.1GHz帯域幅を最大限使用して、単一搬送波による伝送速度1.2Gbpsに成功。2014年には、「きずな」搭載中継器の1.1GHz伝送帯域内に16波の16APSK多値変調信号を、周波数多重化 (16APSK-OFDM) することによって、打上げ当初の「きずな」の通信容量の約5倍となる世界最高速3.2Gbpsの衛星伝送を実現した[4]。
商用サービス化計画
きずなは技術実証を目的にしており、商用サービスには向いていない。マルチビームアンテナ (MBA) により日本を複数のビームでカバーしているが、衛星上でのスイッチング能力が不足しており、イントラネットサービスは同一ビーム内に限られる。また、MBAは日本の離島部をカバーしていない。
商用サービス用には、きずなの技術を利用した別の衛星が打ち上げられる予定であった。2003年(平成15年)、超高速衛星インターネットサービスの事業化を目指して、NEC、NEC東芝スペースシステム、JSAT(現・スカパーJSAT)の3者の出資により、株式会社超高速衛星インターネットサービス企画 (BBISS) が設立された。当初は、2005年(平成17年)度にきずなを、2007年(平成19年)度に商用のBBISS衛星を打ち上げてサービスを開始する予定だった。
BBISS衛星によって、e-Japan戦略で目指している2010年(平成22年)度までの地域間の情報格差の解消と、地上波デジタル放送を衛星経由で再送信してアナログ放送のデジタル化の遅れをバックアップすることが期待されていた。
NEC東芝スペースシステムの試算では、商用化の際の一般家庭での利用料は、設備費10万円、通信費月3000円を見込んでいた。(加入者が200人以上の場合)[5]
搭載機器
- MBA(マルチビームアンテナ)
- JAXA開発の、日本国内およびアジアの主要10都市の固定地域と通信を行うアンテナ。日本本土向けと東南アジア向けの2基を搭載する。
- ビームごとに電力分配を行うマルチポートアンプを有し、雨天地域へのビーム出力を上げる事で、雨天時でも安定して高速通信を行う事が可能である。
- APAA(アクティブ・フェーズドアレイ・アンテナ)
- JAXA開発の、アジア太平洋地域の広範囲をカバーするアンテナ。送受信ともに、2つのビームを電子的に高速走査し、MBAが対象とする固定地域以外の任意の地域との通信を行うことができる。
- ABS(高速スイッチングルータ)
- NICT開発の、ATM交換機ルータ。衛星上で155Mbps×3チャンネルの交換能力がある。
- ^ a b “ネット衛星「きずな」運用終了 震災など11年の活躍に幕”. ITmedia (2019年3月2日). 2019年3月2日閲覧。
- ^ a b “超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)の運用終了について”. JAXA (2019年3月1日). 2019年3月2日閲覧。
- ^ e-Japan重点計画 第2章 (3)項 - エ)- a) -i)
- ^ “「きずな」で世界最高速3.2Gbpsの衛星伝送に成功”. 情報通信研究機構 (NICT). (2014年5月12日) 2014年5月17日閲覧。
- ^ 超高速インターネット衛星の課題 (NTスペース) 18ページ [1]
- ^ 『H-IIAロケット14号機 による超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)の打上げ延期について』(プレスリリース)JAXA / MHI、2008年2月13日 。
- ^ 『超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)を利用した155MbpsでのIP通信確認結果について』(プレスリリース)JAXA / NICT、2008年4月8日 。
- ^ 『超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)による世界最高速1.2Gbpsの衛星データ通信の成功について』(プレスリリース)JAXA / NICT、2008年5月12日 。
- ^ 『超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)搭載通信機器の自動電源オフについて』(プレスリリース)JAXA / NICT、2008年5月12日 。
- ^ 『超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)広域電子走査アンテナによる622Mbps衛星データ通信に成功』(プレスリリース)JAXA / NICT、2008年5月16日 。
- ^ 『超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)の定常段階移行について』(プレスリリース)JAXA / NICT、2008年7月9日 。
- ^ “国立天文台・7.22皆既日食中継”. 国立天文台. 2009年7月23日閲覧。
- ^ 46年ぶりの皆既日食・硫黄島 - YouTube・NHKオンライン
- ^ 『超高速インターネット衛星 WINDS(ウィンズ)の愛称募集について』(プレスリリース)JAXA / NICT、2007年6月26日 。
- ^ 『かぐや(SELENE)の打上げ延期について』(プレスリリース)JAXA、2007年7月25日 。
- ^ “宇宙開発委員会 2007年度第24回 議事録”. 文部科学省. 2012年9月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年9月11日閲覧。
- ^ 読売新聞 2007年11月19日の報道
- ^ “Q43 宇宙機の開発段階で製作される一般的なモデルの種類を教えてください”. よくある質問&回答集. JAXA (2004年5月10日). 2007年9月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年12月20日閲覧。
- ^ “宇宙事業体制強化のお知らせ”. NEC (2007年4月1日). 2012年9月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年9月11日閲覧。
- 1 きずな (人工衛星)とは
- 2 きずな (人工衛星)の概要
- 3 予定・経過
- 4 愛称募集キャンペーン
- 5 脚注
- きずな (人工衛星)のページへのリンク