Ζガンダム Ζガンダムの概要

Ζガンダム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/24 09:27 UTC 版)

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作中の軍事勢力のひとつである反地球連邦軍政府組織「エゥーゴ」の試作型ガンダムタイプMSで同組織の象徴的存在とも呼べる[1]航空機であるウェイブライダー形態に変形する可変MS(TMS)。主人公カミーユ・ビダンガンダムMk-IIに次ぐ愛機として、劇中後半より登場する。続編の『機動戦士ガンダムΖΖ』では主人公ジュドー・アーシタの搭乗機となり、ジュドーが後継機であるΖΖガンダムに乗り換えてからは、「ガンダム・チーム」の一員であるルー・ルカがメインパイロットとなる。

本項目では、その他の映像作品やゲーム、雑誌企画などに登場する系列機、派生機についても記述する。

デザイン

メカニックデザインは、複数のアイディアを基に藤田一己が最終デザインを行っている。RX-78 ガンダムやガンダムMk-IIとも異なる独特のフェイスマスクが特徴で、以降の「ガンダムシリーズ」作品にも似たフェイス形状を持つガンダムタイプが複数誕生している。カラーリングについても白を基調としたトリコロールカラーではあるが、青の面積が多いなど、他のガンダムの名を持つ機体とは一線を画している。

Ζガンダムをはじめとし、変形というギミックを取り入れたMSが多数本編中に登場する背景としては、『超時空要塞マクロス』のバルキリーや『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』などに関連した変形ロボット玩具の商業的成功をうけてのもの。サンライズでも『聖戦士ダンバイン』でのビルバイン、『重戦機エルガイム』でのエルガイムMk-IIと、先行作で後半強化型主人公機に変形機構を持たせていた。スポンサーのバンダイはガンダムに変形メカを登場させることに反対だったが、総監督の富野の意向により実現した。またこの後のガンダムシリーズにおいても、Ζガンダム同様に航空機型に変形するガンダムタイプMSが登場している。

テレビシリーズ開始時はガンダムMk-IIが主役級MSとして登場し、番組名を冠した真の主役であるΖガンダムの本編登場は中盤以降となっている。本放送当時はそれまで正式なΖガンダムのデザインは公開が伏せられていた。

元々当番組のデザインについては大河原邦男永野護藤田一己といった複数のデザイナーが参加していた。番組名を冠する新型ガンダムのデザインにはプロデューサーによって数十名のデザイナーにオファーがなされ、頭部アンテナが畳まれるアイデアは漫画家の近藤和久、フライングアーマーが回転して胸の下に入り込むアイデアは大河原[注 1]、顔のデザインは永野が描いた没案の顔を採用して最終的にメインデザイナーである藤田によってクリンナップが行われた。

採用されなかったデザインも相当あり、それらは『機動戦士ガンダム MS大辞典』(バンダイ)などのムックに一部が掲載されている。採用されなかったデザインは百式やサイコガンダムなどに流用されている。

初期オープニング映像中で登場するΖガンダムのシルエットは永野護の準備稿を仮採用して描かれているため、実際のΖガンダムのように頭部に4本の角がない。この永野案のΖガンダムは百式の下地にもなったデザインと言うこともあり、どちらかといえばΖガンダムより百式の頭部に近いものとなっている。

Ζガンダムの決定稿デザインが伏せられていた段階でも、その名称と変形するという設定のみが事前情報として公開されており、関連雑誌である「コミックボンボン」、「模型情報」などでは、これに関連して読者が考案したオリジナルのΖガンダムデザインを公募するキャンペーンが実施された。後年の『機動戦士ガンダムSEED』のような本編での採用を前提としたデザインコンペではなく、あくまでもプロモーションの一環であり、優勝したデザインは本編には登場していない。なお、ボンボン掲載の漫画『プラモ狂四郎』には「オリジナルゼータガンダム」として登場を果たした。

設定解説

諸元
Ζガンダム
ZETA GUNDAM
型式番号 MSZ-006 / MSZ-006-1[3]
生産形態 試作機
全高 19.85m[4] / 18.7m[5]
頭頂高 19.8m[5] / 18.7m[6]
全長 24.32m(WR形態)[4]
翼幅 18.61m(WR形態)[4]
本体重量 28.7t[4]
全備重量 62.3t[4]
装甲材質 ガンダリウム合金[4]
出力 2,020kW[4]
推力 12,200kg×5(腰)[4]
10,600kg×2(脚)[4]
7,600kg×4(脚横)[4]
総推力:112,600kg[7]
センサー
有効半径
14,000m[4]
武装 60mm[5]バルカン砲×2
2連装グレネード・ランチャー×2
ビーム・ライフル
ビーム・サーベル×2
シールド
シールド裏グレネード・ランチャー(劇場版)
ハイパー・メガ・ランチャー
搭乗者 カミーユ・ビダン
ジュドー・アーシタ
ルー・ルカ
他(「劇中での活躍」を参照)
その他 姿勢制御用バーニア×8[4]

エゥーゴとアナハイム・エレクトロニクス社による共同開発計画「Ζ計画」で開発された機体の一つ[2][注 2]

宇宙世紀0086年初旬[10]、エゥーゴと協力関係にあったアナハイム社は、エゥーゴからの依頼を受け[10]、リック・ディアスの完成と同時に次世代の高性能MS開発計画「Ζ計画」を発動させる[2]

本機を開発するにあたり、開発チーフはカツミー設計技師[11]、総合技術オブザーバーは旧ジオン公国出身のアレクサンドロ・ピウスツキ博士が担当した[12]。先ず当時開発が進められていた機体をベースとした[13]、MSN-001 デルタガンダムを設計したものの、これはフレームの強度不足から採用が見送られた[14][注 3]。その後、アクシズからの技術交換によって得られたデータを元に[15]、より変形機構が簡易な実験機であるMSA-005 メタスを開発したが、これは難なく進捗し、データ収集も完了したものの、既存のMSからはスタイルが異なる試作機の域を出ないものであり[13]、白兵戦には適さない機体だった[15]。そこでさらに非変形型のMSZ-006X プロトΖガンダムが開発されたが、この機体はアナハイム社特有のブロックビルドアップ機構により生産・整備性を高める狙いがあったものの、制御系に課題を残した[16]。そして、このMSZ-006Xをベースに変形機構を盛り込む試みを行い[16]、変形機能こそ実証したものの、フレームの設計からMS形態時における金属疲労に耐えきれなかった事から実用化にはいたらなかった[13]

その後、ティターンズが開発したガンダムMk-IIが同社に持ち込まれたことで状況は一変[13]。ガンダムMk-IIに採用されたムーバブルフレームの設計思想は斬新であり[13]、可変MSに要求される機能を十分に備えたものであった[17]。アナハイム社は、この技術の取得後に大気圏突入能力の実証を目的としてフライングアーマーを開発[18]。ガンダムMk-IIのオプションとして用意し、データの収集を行った[18]

さらにカミーユ・ビダンによる変形MS案のプロットを採用[16][注 4]。ムーバブルフレームによる可変機構はアナハイム社所属のゲルハルト・グルック博士の手により実用化される[12]。こうして完成したΖガンダムは「ウェイブライダー」(以下WR)と呼ばれる巡航形態への変形能力を有し、大気圏突入をも可能とする破格の汎用性を実現した[16]。本機のムーバブルフレームの基本構造はコピーが容易であるうえに他の機体とは比較にならない強度を持っていたため[19]、以後に開発されたMSのほとんどがどこかにこの構造を取り入れている[19]。ジェネレーター出力も高く、高出力の超小型核融合炉を備え[20]、ΖガンダムはU.C.100年代の機体にも近似する仕様といえる[18]。便宜上、第三世代MSとも称される高性能MSとなった[21]

装甲材質
装甲材質はリック・ディアスや百式と同様にガンダリウムγを使用し、さらなる軽量化と高剛性を実現している。この素材の採用がなければ本機は自重によって機体各部の運動性を損ない、変形の所要時間を短縮することもできず、実用機としては完成しなかったといわれる。大気圏突入を行う機体の性質上、外装やシールドは入念な耐熱処理が施されており、ビームによる射撃・斬撃にも数回ながら耐えうる。ただし、シールドはWRの一部を構成するパーツでもあることからデリケートな構造であり、整備面で若干の問題があった。
各部機構
熱核ジェット / ロケットエンジンおよびメインジェネレーターは変形機構が集中する胴体部を避け、左右の脛部に搭載された[2]。これらのエンジンやジェネレーターの開発はアナハイム・エレクトロニクス所属のオスカー・ライエル博士によるもの[12]。構造にはGP01Fb脚部開発の折に培われたノウハウが生かされている[22]。結果的に分散配置となり片脚を喪失した場合でもある程度の出力が維持される。背部にはAMBACとスラスターとしての機能を併せ持つロングテール・バーニアスタビライザーを装備、大気圏内外において優れた加速性能を発揮する。また背部ムーバブルフレームに接続されるフライングアーマーには複数のモデルがあり換装が可能である(ウェイブライダーに後述)。
高性能な可変システム
本機は当時の可変MSとして傑出した完成度を誇り、緻密な変形機構によって高性能なMSとWRを両立した。MSとWRでは基本構造や必要とされる技術がまったく異なるが、それゆえに双方の機能を併せ持つ本機は戦術的に大きな意味を持つ。これは自身の兵器としての性格を任意に変更できるということであり、旧来のMSにおいては実現不可能な戦術であった。すなわち本機は「自らのMSとしての戦力を自力で戦線に空輸することが可能」である。
Ζガンダムはアナハイム・エレクトロニクス社内において第二のRX-78 ガンダムとして期待された[12]
多目的な兵装
兵装も機体に劣らぬ汎用性・合理性を有し、WR時にはビーム・ガンとなるビーム・サーベル、サーベル発生機能を持つ長銃身ビーム・ライフル、複数種の弾頭をあつかえるグレネード・ランチャーなど多目的に使用できるものが揃っている。オプションのハイパー・メガ・ランチャーに至っては固有のジェネレーターやスラスター、アポジモーターを備え、MS・WR双方での運用を可能としつつも独立した兵装として主機への負担を抑えている。
オーバースペック・ハイコスト
次世代機として開発された本機は、MSの開発史的な視点で見るとオーバースペックやコスト高騰の一端を担った機体といえる。しかしその特性はむしろパワーウェイトレシオが重視された宇宙世紀0100年代以降の機体に近いともされ、系列機の優秀さも相まって評価は高い。
このように優れたパフォーマンスを見せたΖガンダムだが、複雑な機体システムゆえの高コスト、劣悪な整備性といった問題も残されており、そのままの形で量産化に移行することは不可能であった。機体挙動自体も非常にピーキーで先鋭的な特性を示し、操作性が低下した点も理由の一つである。特に後者に関しては、後に簡易サイコミュであるバイオセンサーが搭載されるなど操縦系統に改良が施されているが、根本的に搭乗者を選ぶ傾向に変化はなく、宇宙世紀0091年に完成された系列機リ・ガズィにおいても同様の問題を抱えていたという。
バイオセンサー
アナハイム・エレクトロニクスによって、ニュータイプの素養がある人間の搭乗機に極秘裏に組み込まれたインターフェイス[21]。準サイコミュあるいは簡易サイコミュの一種で[21]、パイロットの脳波制御により機体のコントロールが補助され追従性が向上する[23]。詳細は「サイコミュ#バイオセンサー」を参照。

武装・装備

60ミリバルカン砲
連邦系MSの標準固定装備で、頭部に2門装備。装弾数は600発[24]
2連装グレネード・ランチャー
左右の前腕部に装備する榴弾砲。標準状態の装弾数は片側4発。名称や外形はグレネードであるが、簡易なロケットと追尾装置が組み込まれており、実質的には短距離誘導ミサイルである。的確な運用であれば敵機に致命的な損傷を与えることも可能。弾頭そのものはハンドグレネードとしての投擲も可能[20]。オプションの増加カートリッジによって装弾数の追加も可能(19発)。だが、カートリッジを装着したままWR形態に変形はできず[25]、取り外す必要がある[20]。他に、弾頭をアンカーワイヤー射出ユニット[10]に変更も可能で、奇襲攻撃などに有効。
ビーム・ライフル
ボウワ社製[26](型式番号:XBR-M-87A2[26])。長銃身・高威力の専用ライフルで、出力は5.7メガワット[24]。ガンダムMk-IIと共通のEパックを使用し、互換性が保たれている。不使用時には銃身を縮め、センサーとグリップを畳み、ロングテール・バーニアスタビライザー、または前腕外側にマウント可能。WR時もロングテール・バーニアスタビライザーに装着したまま射撃可能。銃口にビーム刃を形成してロング・ビーム・サーベルとしても使用可能。WR形態時には機体上部にマウントし、固定ビーム砲台としての運用も可能。
ビーム・サーベル
腰部スカートアーマーのホルダーに左右1基ずつ収納される。Zガンダム専用に開発されており[20]、出力は0.65メガワット[24]。瞬間最大出力は標準的なサーベルの数倍に達する[20]。WR形態ではホルダー口が機首方向に向くので、固定したままビームガン(出力1.3メガワット[24])として使用可能。ただしビーム射撃武器としては出力が低く、あくまで牽制用の武装と位置づけられている。
ハイパー・メガ・ランチャー
オプション装備の大型メガ粒子砲で、「メガ・ビーム・ランチャー」とも呼ばれる。Ζガンダム用に開発された対艦攻撃用兵装である。出力は8.3メガワット[24]
ジェネレーターを内蔵しており、外部からのエネルギー供給がなくとも発射できる。ただし、MS側からのエネルギーも併用することで、連射間隔を縮めることが可能。固有の推進機を備えており、移動時にデッド・ウェイト化することがないが、質量が大きく機動時に多大なモーメントを発生させるため、近接戦闘には適さない。ビームライフルと同様にロングビームサーベルとしても使用できる。折りたたみ機構によりWR形態でも装着携行が可能で、第47話ではWR時の下部(シールド外面)に装着している。百式が使用したメガ・バズーカ・ランチャーと比較すると一射あたりの威力は劣るものの、発射の回数と速射において上回る。
Ζガンダム開発計画の折には、百式によるメガ・バズーカ・ランチャーのテストがフィードバックされている[27]
なお、本兵装の名称はTV版『機動戦士Ζガンダム』の設定画決定稿に於いて「ハイパーメガランチャー(大砲)」と明記されているが[28]、アニメ本編を含め『機動戦士ガンダムΖΖ』の本放送中まで「メガビームランチャー」という呼称も使用されていた[27]。しかし、『ΖΖ』本放送終了後はアニメーション本編劇中以外のメディアでは全て「ハイパーメガランチャー」で統一されるようになった[2][29][17][18][30]
シールド
通常左腕のラッチに装着される(型式番号:FF-XV-SH-609Z[31])。フライング・サブ・ユニットとしての機能を有し、上部の赤い部分はWR形態では機首となる。耐熱性・耐弾性共に高く、シールドとしての性能も高い[20]。劇中では、グリプス戦役の最終決戦においてWR形態での体当たりにおいて、機首部分でジ・Oの正面装甲を突き破り、パイロットのパプテマス・シロッコを圧殺している。『機動戦士ガンダムΖΖ』では、格闘戦時の打突に使用され、先端部の突起でガザD の頭部を損壊させるシーンもある。劇場版『機動戦士Ζガンダム A New Translation』ではシールド裏側にグレネード・ランチャーを内臓している[20]。伸縮機能があり、『Ζガンダム』の2代目OPでは赤い部分が伸びる様子が描かれている。
シールド(ウェイブシューター用)
本機はWR用とウェイブシューター用とで二種類のシールドが用意されている[15]。こちらの形状はWR用のに比べ、側面部がやや大型となっている。シールド内にはスラスターを内蔵[32]
小型ロケット弾
『機動戦士Ζガンダム』第25話、劇場版『機動戦士Ζガンダム 恋人たち』で、ヤザン・ゲーブルギャプランに対してWR形態にて一斉発射した。
フライングアーマー
Ζガンダムの標準型フライングアーマー(型式番号:FXA-01[32])。MS形態では背部に装備する。切り離し可能な構造となっており、マウントラッチによって交換も可能[33]
フライングアーマー(ウェイブシューター用)
ウェイブシューター専用のフライングアーマー(型式番号:FXA-01K[32])。資料によってはプロペラントタンクのようなパーツを増設したデザインも存在する[32]。ウェイブシューター装備仕様には、プロペラントタンクを備えた大型フロントスカートもオプションとして用意されている[32]
増設エンジンユニット
ウェイブシューター時のリアスカート部に装着可能なオプション。熱核エンジンとプロペラントタンクが一体となっており、長距離飛行の際に用いられる。MS形態時は投棄される[34]

変形

ガンダムシリーズで主役機が変形するのはΖガンダムが最初である。人型のMS形態から戦闘機型のWR形態への変形行程をおおむねの順に列挙すると以下となる。

  1. まず背面のロングテール・スタビライザーの基部が変形する。それによりスタビライザーは下方(WR形態の後方)へ伸び、腰部後方のスカートアーマーと一体化。ビームライフルを携行している場合、MSの腕によってスタビライザー基部のラッチに装着される。
  2. 頭部はアンテナを畳んだ状態で機体中心方向に引き込まれる。同時にコクピットを含む胸のブロックが跳ね上がり、腹部パーツが収縮。股関節が伸長して両脚部の間隔が空き、そのスペースに両腕が収納される。
  3. 胴体、四肢の変形と同時に連動して、背部左右のフライングアーマーの基部であるムーバブルフレームが作動。それぞれのフライングアーマーが上下反転して正面側(WR形態の下面)へと移動する。顔を隠すように中心に装着された腕部シールドを左右から挟む形で合わさり、WRとしての機体下面パーツを構成。
  4. フライングアーマーが移動される間に、脚部は以下の様子で一斉に変形する。爪先と踵を閉束しながら、両下脚部は膝部の変形により背面(WR形態の上面)へと移動、足首後方のスラスターノズルが引き出される。脚部の変形とほぼ同じタイミングで腰部左右のスカートアーマーがそれぞれ上下反転して前方へと移動、機体の側面部を保護するパーツとなる。
  5. フライングアーマーから翼が引き出されてWRへの変形が完了。

非常に複雑なものであるが、設定では0.5秒ほどでMS形態からWR形態へ変形を完了する。アニメにおいても上記の行程が間断なく、多くが同時進行され瞬時に変形する様子が描かれており、後期オープニングのラストシーンでも本機はMS形態からWR形態へと一瞬で変形して飛び去る。しかしアーガマからの発進時など、変形シーンが見せ場となる場合はより時間を掛けて演出されており、初期はWRへの変形完了時に引き出される翼の表面にハイライトが走るなど作画も丁寧なものとなっている。

WR形態からMS形態への変形は先述とは逆の手順となり、同様に見せ場とされている。その際、変形を回転しながら行う演出がバンクシステムとして用いられた[35]。『機動戦士ガンダムΖΖ』第1話「プレリュードΖΖ」では、その映像をクワトロ・バジーナが本機の変形シーンとして説明しており、シンタクムがカミーユが目を回さないことに驚いている。

ウェイブライダー

ウェイブライダー」は、主としてリフティングボディ機の、超音速飛行の「衝撃波の上に乗る」ような飛行形態を指す。本機の巡航形態の名称もこれに由来するが、慣用的にあらゆる可変MSの変形状態を指すことも多いとされる[36]

WR形態へと変形することで本機はバリュートなどのオプションを装備することなく、単独で地球への大気圏突入が可能となる。MS形態では背部に配置されているフライングアーマーはWR形態では下面に配置され、機首部も構成するシールドと共に衝撃波を機体の下面に集中させる構造となる。機体は装甲素材の耐熱性だけでなく、その衝撃波に乗ることで大気圏突入時の熱からカバーされる仕組みとなっている。

本機の配備以前に、ガンダムMk-IIの大気圏突入用の装備として非変形のフライングアーマーが開発されている。それは「Ζ計画」の一環として行われており、ジャブロー侵攻戦で運用された同装備により、本機のWRの機能が検証されている[18]

WRは大気圏突入能力のみならず、宇宙戦闘機としても優秀な加速性能、および航続距離を備えている。MSからの機体形状の変更は、機体各部に分散配置されたスラスターのベクトルを後方に集中させ、全推力を加速のみに用いることを可能とさせる。しかし腕部や脚部などのモジュールは機体剛性の確保のため固定され、AMBAC機能は失われる。従って直線加速には優れるが、運動性はMS形態より低下する。その特性から、大気圏突入時以外での運用はおおむね高速移動を目的とされている。

サブフライトシステムとしての運用も可能である。WRの上面にMSを1機乗せたまま大気圏突入を行うことが可能で、テレビ版『機動戦士Ζガンダム』第35話では百式を、『機動戦士ガンダムΖΖ』第23話ではエルピー・プルキュベレイMk-IIを乗せて地球に降下している。また、ド・ダイ改のようにMSと連携した戦闘を行うことも可能で、キリマンジャロ襲撃戦では、クワトロが無人のWR形態の本機に百式を乗せて遠隔操作により飛行し、カミーユの元に機体を運ぶシーンがある。

WRは熱核ジェットエンジンによって大気圏内飛行も可能であるが、機体の翼面積が小さく、膨大な推力によって強引に機体を飛翔させているに過ぎない。そこで空戦能力付与のため、可変後退翼を備えるフライングアーマーも考案されている[37]。これを装備するΖガンダムの巡航形態は「ウェイブシューター (WAVE SHOOTER)」と称され、大気圏突入能力を省略して、大気圏内での低空飛行性能や離着陸距離、航続距離などの航空能力の向上が図られている[37]。MS形態時にはウイング・バインダーとしても機能するこのフライングアーマーの設計案は、後に量産機として開発されるΖプラスへと受け継がれている(#プラモデルも参照)。

本機の変形システムはVMsAWrs(ヴァモーズ、Variable Mobile-suit And Wave-rider system = モビルスーツとウェイブライダーに変形する機構)と呼称され、プラモデルでは機体胸部などにロゴがマーキングされている[注 5]




注釈

  1. ^ プラモデルキットの説明書には「カミーユ提案によるフライングアーマー分割案」という設定がある[2]
  2. ^ このZ計画においては、機体の開発コードをギリシャ文字で割り当てていた。リック・ディアス(γガンダム)から数えて4番目にあたる機体がδ(デルタ)ガンダム(後の百式を含む)である[8]。この機体(後のΖガンダム)は元々大気圏突入装備とMS形態とを独立したコンセプトで計画していたが、敵陣営が可変MSを導入したことを受け、仕様変更された。その際、Ζ計画に因みΖガンダムの型式番号と名が冠された[9]
  3. ^ このMSN-001の設計をベースとし、再び非変形仕様に差し戻した機体として後に百式は完成している[13]
  4. ^ 劇場版『機動戦士Ζガンダム A New Translation』ではカミーユが開発協力に携わった描写はない。
  5. ^ 月刊「モデルグラフィックス」別冊『GUNDAM WARS PROJECT Ζ』表紙のΖプラスが初出。同誌による設定ではウェイブライダーではない形態に変形するΖΖガンダムSガンダムにもこのマークが付けられており、「アナハイム・エレクトロニクス社製で変形するガンダムタイプMS」といった意味合いに変化している。
  6. ^ 平成からの各ゲーム作品ではWR形態での体当たり=ウェイブライダー突撃も再現されるようになった。
  7. ^ この名称は公式サイトでも使われているほか、「機動戦士ガンダム エクストリームバーサス フルブースト」では「ザク頭Ζガンダム」と表記されている。
  8. ^ ロンド・ベルはデルタプラスの配備申請も行ったが、これも同部隊の戦力増強を快く思わない軍上層部の意向から却下されている[40]
  9. ^ 本ムックは宇宙世紀0100年代にサイド6で出版されたΖガンダムに関する特集本という設定となっている。また『アナハイムジャーナル』『ガンダムMSグラフィカ』と異なり、公式設定でない旨の但し書きもある。
  10. ^ 特に肩が小さなボールジョイント接続だったために、ビームライフルを片手で持つ程度でも角度が保てなかった。
  11. ^ 本機はムーバブルフレームの実装が見送られてブロックビルドアップ方式が採用されており[53]、Ζガンダムではフレームの一部を残してほぼ新造パーツに換装されたとする資料もある[54]
  12. ^ 中断[63]、または試作機が1機のみ完成したとする資料もある[64]。また、競合機を百式とする資料もある[65]

出典

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  34. ^ 『マスターアーカイブ モビルスーツ MSZ-006 Ζガンダム』ソフトバンククリエイティブ、2012年12月、22頁。(ISBN 978-4797370959)
  35. ^ 以後のガンダムシリーズ作品でもこのシーンをオマージュした変形シーンが見られ、特に『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場するセイバーガンダムの変形シーンで顕著である。
  36. ^ 「機動知識 imidam」『ガンダム・センチネル』大日本絵画、1988年9月。
  37. ^ a b 『マスターアーカイブ モビルスーツ MSZ-006 Ζガンダム』ソフトバンククリエイティブ、2012年12月、110-111頁。(ISBN 978-4797370959)
  38. ^ 同じ方法は、小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(下)』136ページでも使われていた。Ξガンダムに搭乗したハサウェイ・ノアが、ペーネロペーのファンネルに狙われた際に、ビーム・ライフルを乱射して、ビーム・サーベルの一本ビームを拡散させてファンネルを阻止している。
  39. ^ 「HYAKUSHIKI」『ガンダムMSグラフィカ』ソフトバンククリエイティブ、2006年12月31日発行、P.18-19。(ISBN 978-4797331523)
  40. ^ 『機動戦士ガンダムUC テスタメント』角川書店、2012年3月、60-61頁。(ISBN 978-4041202111)
  41. ^ 小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 中編』54ページ。
  42. ^ 小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 中編』49ページ。
  43. ^ 兵庫のJA支店に高さ2メートルの手作り「Ζガンダム」模型 孫喜ばせようと8カ月……関心示さず(産経新聞) - ねとらぼ(ITmedia) 2014年3月10日。
  44. ^ 『ホビージャパン』2001年12月号。
  45. ^ a b c 「「ガンダムフロント東京」2機の新型ガンダムが登場するドームスクリーン新作映像、11月7日公開決定!」gundam.info、2015年9月28日。
  46. ^ ** 『ガンダムイボルブマテリアル』一迅社、2007年8月15日、57頁。ISBN 978-4-7580-1081-8
  47. ^ 『機動戦士ガンダム画報2』竹書房、2008年5月。(ISBN 978-4812434741)
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  49. ^ ムック『マスターピース ダブルゼータ・ガンダム』より。
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  56. ^ a b c 『B-CLUB SPECIAL 15 機動戦士ガンダム MS大全集』バンダイ、1988年2月、65頁。
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  58. ^ 『データコレクション5 機動戦士Ζガンダム 下巻』メディアワークス、1997年7月、38頁。
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  65. ^ 『ENTERTAINMENT BIBLE .52 機動戦士ガンダム MS大図鑑【PART.8 SPECIALガンダム大鑑】』バンダイ、1993年2月、69頁。
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  69. ^ 『データコレクション(6)機動戦士ガンダムΖΖ』メディアワークス、1997年11月、67頁。(ISBN 978-4073075721)
  70. ^ 『マスターグレード MSZ-010 ダブルゼータガンダム』付属説明書、バンダイ、1999年12月。
  71. ^ 『ガンダム・センチネル』大日本絵画、1989年9月、76頁。
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  73. ^ 『マスターグレード MSA-0011 Sガンダム』バンダイ、2002年10月、組立説明書。
  74. ^ 『機動戦士ガンダムMS大図鑑PART.3アクシズ戦争編』バンダイ、1989年6月、95頁。
  75. ^ 『機動戦士ガンダムMS大図鑑PART.3アクシズ戦争編』バンダイ、1989年6月、104頁。





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