※日経エンタテインメント! 2022年4月号の記事を再構成

SKY-HIが2月にリリースした配信シングル『JUST BREATHE feat.3RACHA of Stray Kids』は、iTunesソングランキング(すべてのジャンル・ヒップホップ/ラップ)において世界29カ国・地域で1位、音楽チャートサイト「kworb.net」におけるワールドワイドソングランキングで3位を獲得した。

SKY-HI自身のアーティストとしての能力の高さ、楽曲としてのクオリティの高さは当然あるにせよ、グローバルでここまで跳ねたのは、コラボレーション相手である韓国のボーイズグループStray Kidsのプロデュースチーム「3RACHA」が持っていた強さも大きかった。『JUST BREATHE』のリリース前後は、Stray Kidsのファンダム「STAY」がチャートアクションに対して団結して動く様子も見られた。

この経験を通してSKY-HIは何を感じたのか。

▼前回はこちら SKY-HI  求人エントリーから見えた「BMSGへの適性」

見えたK-POPの底力

 まずはStray Kidsのファンダム「STAY」のパワーを目の当たりにして、シンプルに「世界中に人はいっぱいいるんだな」って、本当に実感しました。たまに「この日本のアーティスト/楽曲が海外で人気です」とか「海外チャートに入りました」とかは耳にしますが、本当のワールドスターってこんなに力があるんだなって。

 力とは端的に言えば、「物量」と「熱量」です。僕もソロでアジアツアーやワールドツアーを経験していますし、YouTubeなどで海外の人からコメントをいただくことがあります。韓国やタイ、フィリピンなどの人気アーティストとコラボすれば、その都度、世界を垣間見たような気がしていたんです。でも、Stray Kidsは文字通りケタが違う。これは本当に、この経験をしなかったら実感できなかった貴重なものでした。

身をもって知ったK-POPの力

 僕自身、ずっとK-POPシーンを見てきましたし、ある程度の知見はあるとは思っていたんです。でも、当事者として関わってみたら、想像していた以上だったし、全然違っていました。ただの数字の大きさではないんですよ。

 例えて言うなら、武道館の最後列からライブを見るのと、実際に武道館のステージでライブをやるのは全然違うじゃないですか。僕は、ライブイベント「THE FIRST FINAL」で、(オーディション「THE FIRST」に直接関わらなかった)Novel Coreにもステージに上がってもらいました。これには様々な理由があるのですが、その1つが、彼に大きな舞台を知ってほしかったから。Novel Coreは武道館ライブを目標に掲げていますが、武道館ライブを目指す人に1番手っ取り早く必要なのは、まずその規模のライブのステージを実感する経験なんです。それによって意識や視座も大きく変わる。そうやって、これまで自分が経験として得て実践してきたことを、今回の『JUST BREATHE』の経験を通じて、改めてまた自分の身をもって知った感じがあります。つまり、目指している「世界」を知るために、「世界」を実感できた。自分の中でそれほど大きな転換がありました。

――これまでの経験を基盤にし、SKY-HIは今回得た経験をそこに加え、重ねることで、現在進行形で自身の感覚をさらに大きな確信へと変えている。

今進んでいる道への確信も

 率直に言えば、今のK-POPとの距離はすごく感じました。日本のアーティストの海外進出と、既に海外進出をしているK-POPアーティストって、こんなに距離があるんだなと。ただ、やっとその距離を実感として知ることができた思いもあって。

 僕自身がアイドルをやりながらラッパーとして活動するなかで、ライブなどの現場での周囲からのリアクションに対して、ラッパーの人から「(SKY-HIが)芸能人とは知ってたけど、やっぱり芸能人なんだって実感した」と言われた経験があったんです。僕は身1つで現場に行くし、自分ではあまり芸能人っぽくないと思ってるので、言われたほうとしては実感としてつかみづらいのですが、周りからの目線がそうさせてくれないこともある。今回はその拡大版みたいな感覚なのかもしれないなと思いました。その延長線上で僕は、「世界ではK-POPってこんなにも違うんだね」って思ったし、「STAYって数字以上にすごいんだな」を含めて実感できた感覚があります。

 K-POPやK-POPアーティストたちに対する認識もこれまで以上にすごく改まったし、同時に、改まったからこそ、あくまでそれは日本と韓国がリーチできている世界の差であって、やっているのは同じ人間だということも改めて感じました。今回であれば、3RACHAと個々の人間として向き合う経験ができたからこそ、僕らは僕らで、これからも1つひとつに対して心を尽くして進んでいくことが大切だなと。(次回に続く)

SKY-HI(日高光啓)
1986年12月12日生まれ、千葉県出身。ラッパー、トラックメイカー、プロデューサーなど、幅広く活動する。2005年AAAのメンバーとしてデビューし、同時期からSKY-HIとしてソロ活動を開始。20年にBMSGを設立し、代表取締役CEOに就任

(写真/上野裕二、ヘアメイク/椎津 恵)

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