北陸新幹線の金沢・敦賀間が開業 各地は観光客でにぎわう

北陸新幹線の金沢・敦賀間が16日開業し、東京と福井県の敦賀駅は乗り換えなしで3時間余りで結ばれました。

16日から「北陸応援割」も始まり、首都圏と新たにつながった福井県や石川県の各地は大勢の観光客でにぎわっています。

敦賀駅 午前6時11分「出発進行」

福井県側の始発駅となる敦賀駅の新幹線ホームで行われた出発式では、発車メロディーが流れたあと、午前6時11分に、敦賀駅の駅長とスペシャルゲストとして参加した俳優の中条あやみさんが「出発進行」と声を合わせました。

大勢の人が旗を振ったりカメラを向けたりする中、東京駅に向かう最初の列車「かがやき502号」がゆっくりと出発すると、集まった人たちから拍手が送られました。

敦賀駅の乗客「どきどきわくわく」

福井県側の始発駅、敦賀駅から東京に向けて出発する1番列車に乗るため、京都府から息子と訪れた女性は「試乗会の時に息子がすごく『かがやき』を好きになったので、絶対に乗せてあげたいと思ってきました。どきどきわくわくしています」と話していました。

岐阜県から訪れた男性は「3時間待ってやっと切符が手に入りました。きょうは終点の東京まで行くのが楽しみで旅館を早く出ました」と話していました。

午前9時34分 東京から1番列車到着

そし午前9時34分には、東京駅発の最初の列車「かがやき501号」が敦賀駅に到着し、東京・敦賀間が乗り換えなしで3時間余りで結ばれました。

東京駅から乗車したという30代の男性は「金沢開業の時も1番列車に乗ったので『ぜひ今回も』と思って乗りました。敦賀駅は高い場所にあって景色がきれいだなというのが実感です」と話していました。

また、夫婦で乗車した20代の男性は「これまで福井には何度も来たことがありますが、また違った景色が見られてすごくわくわくしました。敦賀の赤レンガ倉庫を楽しみにしているのでこれから行ってきます」と話していました。

金沢駅からも敦賀に向け出発

金沢駅のコンコースでは、敦賀駅に向かう最初の列車に乗車する人たちが朝早くから列をつくって改札が開くのを待っていました。

午前5時半に改札が開くと大勢の乗客が一斉にホームに上がり、新幹線の側面に表示された「敦賀」という行き先などを記念に撮影していました。

ホーム上では開業を祝う式典が行われ、石川県の馳知事など出席者がテープカットをしたあと、津幡町出身で東京オリンピックのレスリング女子で金メダルを獲得した金城梨紗子 選手と妹の恒村友香子 選手が列車の前に登場しました。

そして午前6時に駅長と並んで手を大きくあげ、発車の合図をすると、敦賀駅に向かう最初の列車「つるぎ1号」が出発していきました。

富山県から来た親子は「子どもと一緒に1番列車に乗りたくて、きっぷを1か月前の販売初日に窓口に並んで手に入れました。車内から白山が見られるのか楽しみにしています」と話していました。

小松駅でも出発式

北陸新幹線の駅として開業した石川県小松市の小松駅では、東京へ向かう1番列車にあわせて出発式が行われました。

小松から東京へ向かう1番列車になったのは、午前6時49分発の「かがやき」で、駅長の合図に合わせて東京へ向かって出発しました。

出発式のあと小松市の宮橋勝栄市長は「万感の思いとはこのことだと感じています。『100年に1度』と常に言ってきましたが、小松がさらに発展する歴史のスタートにしたいです」と話していました。

完成した展望デッキでは

小松市にある木場潟公園には、開業にあわせて今月8日に高さおよそ6メートルの展望デッキが完成しました。展望デッキからは、視界いっぱいに広がる水辺を横切るように走る北陸新幹線の姿を一望することができます。

さっそく訪れた人たちは、雄大な木場潟の景色の中を北陸新幹線が駆け抜けていく様子を楽しんでいました。

訪れた地元の人は「家から見るより、展望デッキから見る方が眺めがすごく良くて感動しました。開業してとてもうれしいです。ぜひ新幹線を利用したいと思います」と話していました。

展望デッキは常時開放されていて、花見の季節には桜並木を走る新幹線の姿を楽しめるということです。

【動画】「ブルーインパルス」がアクロバット飛行披露

※クリックすると動画が再生されます

小松市では、航空自衛隊の「ブルーインパルス」が開業を記念してアクロバット飛行を披露しました。

午後1時半ごろ、大きな音とともに飛行機の隊列が姿を現すと、青く晴れ渡った空に白いスモークで大きなハートのマークや桜の花をイメージした6つの輪などを次々に描きました。

集まった人たちは歓声を上げながら拍手をしたり写真を撮ったりしていました。

「観光業立て直すチャンス」加賀温泉駅では

北陸新幹線の加賀温泉駅で行われた出発式には、地元の温泉街から着物姿のおかみたちも参加しました。

敦賀から東京へ向かう「かがやき」が午前8時半すぎに到着すると、ホームには新幹線を一目見ようとおよそ200人が集まり、加賀市の観光大使を務めるグッチ裕三さんなどが「出発進行」とかけ声をかけて列車を見送りました。

加賀市の宮元陸市長は「長い景気の低迷とコロナ禍から回復しようとしたところで能登半島地震が起きた。観光業を立て直すにはこのチャンスしかない。新幹線をジャンプ台として観光地や地域の再生、新しい産業の誘致などに取り組みたい」と話していました。

展望施設で親子連れなどが歓声

今月13日にオープンしたばかりの「トレインパーク白山」は、新幹線の延伸に合わせて白山市が整備した観光施設です。

施設には新幹線を展望できるエリアが整備されていて、16日は午前中から親子連れなど50人以上が訪れ、新幹線が高速で通過すると歓声が上がっていました。

家族5人で訪れた40代の母親は「ちょうど通過するタイミングを狙って新幹線が入った家族写真を撮ることができました。地元に新幹線が通って感動です」と話していました。

6歳の男の子は「とにかく迫力がすごかった。飛行機も好きだけど、新幹線も大好きです」と話していました。

東京駅でも出発式

16日朝は、東京駅で出発式が行われ、JR東日本の深澤祐二社長が、「能登半島地震で被害に遭った皆様に心からお見舞い申し上げますとともに1日も早く日常に戻れるよう祈念を申し上げます。首都圏や信越地方から北陸地方への流動がさらに活発になり、北陸地方の間でも交流が深まることを期待しています」と述べたあと関係者がテープカットを行い、開業を祝いました。

そして、駅長が、石川県出身の俳優、浜辺美波さんとともに出発の合図を行うと、午前6時16分に下りの1番列車の「かがやき501号」が敦賀駅に向けて出発しました。

東京駅の乗客「福井を身近に」「励ましになれば」

夫とともに東京駅から敦賀駅まで向かう都内の38歳の女性は「新幹線が直通して福井県を身近に感じられるのでこれからもたくさん旅行に行きたいなと思います。新幹線では景色を楽しみたいです。地元のものを食べていろいろなところを観光することで地震からの復興の支援にもつながればと思います」と話していました。

福井県各地を観光で巡るという千葉県の50歳の男性は「開業にあわせて旅行を計画しました。福井は遠い印象があって行くのは初めてなので初心者です。東尋坊やあわら温泉など行きたかった場所が多く、きょうをずっと楽しみにしていたのでドキドキしています」と話していました。

夫婦で福井県を2泊3日で観光するという千葉県の57歳の女性は「現地の方の励ましになればという気持ちで旅行を計画しました」と話し、女性の夫は「福井県を旅行するのは初めてです。これまでは気軽に行くことができなかったので、直通ですぐに行けるのはうれしいです。温泉に入ったりかにをたくさん食べたりするのが楽しみです」と話していました。

福井と東京 最短で2時間51分に

北陸新幹線は、石川県の金沢駅と福井県の敦賀駅を結ぶおよそ125キロの区間が16日開業し、沿線の各駅では早朝から記念の式典が行われました。

福井県側の始発駅となる敦賀駅では、JR西日本の長谷川一明社長が、「本日の開業によって国内・国外からの多くの利用客の心を動かし、未来を動かすことにつながっていくことを期待している」とあいさつしました。

今回の延伸で、福井と東京の間は最短で2時間51分と30分程度、金沢と大阪の間は特急の乗り継ぎも含めて最短で2時間9分と20分程度、それぞれ短縮されます。

16日から「北陸応援割」も始まり、能登半島地震で予約のキャンセルが相次いだ福井県あわら市の温泉旅館では、新幹線を利用した宿泊客が次々と訪れていました。ただ、予算の不足から北陸応援割を見込んで事前に予約していた人が割引きの適用にならず、キャンセルするケースも出ているということです。

JR西日本の長谷川社長は福井市のホテルで開かれた記者会見で「金沢・敦賀間の開業で、北陸と各地域を結ぶ重要な社会インフラができた。これから本格化する能登半島地震の被災地域の復旧・復興の原動力になっていきたい」と話していました。

北陸新幹線は、2015年に金沢までの区間が開業しましたが、金沢・敦賀間は、工事の遅れなどで予定より1年遅れ、事業費は1兆6700億円余りに上っています。

一方、国の整備計画にもとづく敦賀から大阪までのさらなる延伸については、2兆円を超えるとされる費用や環境への影響評価の遅れなどから着工の見通しは立っていません。

今回の開業で、石川県の小松駅、加賀温泉駅、福井県の芦原温泉駅、福井駅、越前たけふ駅、敦賀駅の6つの駅が新設され、東京駅と敦賀駅の間を直通する「かがやき」と「はくたか」は1日にあわせて14往復、運行します。

東京・敦賀間の所要時間は最短で3時間8分で、これまでの金沢駅で在来線の特急に乗り継ぐ場合と比べて50分短縮されます。

一方、北陸新幹線は全線開業に向けて敦賀駅と新大阪駅の間でも延伸が計画されていますが、沿線の環境への影響を評価する手続きが遅れていて着工の見通しが立たない状況が続いています。

JR北陸本線は第三セクターに引き継ぎ

北陸新幹線の金沢・敦賀間の開業に伴って、この区間では、JR北陸本線の運行が終わって第三セクターに引き継がれ、このうち石川県加賀市の大聖寺駅から敦賀駅までは「ハピラインふくい」の運行となりました。

最終の「しらさぎ」出発 そのとき駅のアナウンスでは…

JR福井駅では、15日夜11時50分すぎに特急「しらさぎ」の最終列車が、金沢駅に向けて出発すると、集まった人たちは写真や動画を撮ったり、手を振ったりして見送っていました。

そして、16日午前0時すぎに最後の普通列車が到着し、それを迎えるセレモニーで、JR西日本金沢支社の岡久資副支社長が「多くの皆様に迎えていただけたことに驚いている。北陸本線の歴史の重さではないかと思う。これまでありがとうございました」とあいさつしました。

金沢・敦賀間のJR北陸本線は国鉄時代も含めて120年以上の歴史に幕を閉じました。

またJRが運行していた北陸本線の金沢駅から福井との県境の手前にある大聖寺駅までの区間は、県などが出資する第三セクターのIRいしかわ鉄道が運行を引き継ぐことになりました。

15日夜、北陸本線としての最終列車が金沢駅を出発したあとJR側からIRいしかわ鉄道の七野利明 社長に「北陸本線の歴史をあしたへつなぐ」と書かれた大きなきっぷが手渡されました。

そして16日朝、金沢駅のホームで出発式が行われ出席者がくす玉を割ると「祝県内全線開業」と書かれたマークを掲げた列車が出発していきました。

今回の引き継ぎによってIRいしかわ鉄道は津幡町の倶利伽羅駅と加賀市の大聖寺駅の間の60キロあまりの路線を担うことになります。