プロ野球2軍 2024年から14球団へ どんなチームが?

プロ野球の2軍の公式戦に、来年から新たに静岡、新潟の2つの球団の参加が内定しました。

「ハヤテ223(ふじさん)」と「新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ」。

なぜ静岡?新潟?どんなチーム?1軍球団も増える可能性は?

気になるギモンに答えます。

65年ぶり 新規参入が内定

プロ野球では、2軍の公式戦が、イースタン・リーグ7球団とウエスタン・リーグ5球団に分かれて行われていますが、野球のすそ野を広げることを目的に2軍の試合に参加する新たな球団を公募し、3つの企業などが申請していました。

NPB=日本野球機構と12球団による実行委員会は申請を元に経営計画やチーム編成の方針などのヒアリング、さらに本拠地となる球場などを視察して審査を進めてきました。

そして29日、都内で行われたオーナー会議で、静岡市を本拠地とする球団の創設を目指す「ハヤテ223」と、独立リーグ BCリーグの「新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ」の2つの球団が来年から2軍の試合に参加することが内定しました。

「ハヤテ223」がウエスタン・リーグに、「新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ」がイースタン・リーグに参加するということです。

参加が内定した2球団は今後、準備を進め、11月に行われるオーナー会議で進捗状況を報告し、問題がなければ正式に参加が決定するということです。

会議の後に行われた会見でオーナー会議の議長を務める西武の後藤高志オーナーは「内定という段階だがすそ野拡大と地域振興について大変期待している。ただ、一方で言えば解決するべき課題もあるので1つ1つ解決してよりよい形でやっていきたい」と話していました。

国内のプロ野球では65年にわたって12球団で行われてきましたが、今回、2軍ではあるものの来シーズンから14球団に拡大してリーグ戦が行われることになります。

「ハヤテ223」は、どんなチーム? 代表は?

「ハヤテ223(ふじさん)」は、東京で金融業やベンチャー企業への投資事業などを手がける「ハヤテグル-プ」を親会社とする新球団です。

ハヤテグループ 杉原行洋(すぎはら・ゆきひろ)代表
会社のホームページによりますと、杉原社長は東京大学を卒業後、ゴールドマン・サックス証券にてトレーディング業務に従事。その後、国内金融機関を経て、2005年に「ハヤテグループ」を創業しています。

会社のホームページでは「野球振興に加えて、地域振興、ひいては『このような挑戦が許されるのだ』と 日本社会の『温度』が上がることが我々の目指すところです」と参加の意図を説明しています。

一方で、チームに参加する選手や監督は決まっていません。

今後、プロ野球を戦力外となった選手を集めたり、トライアウトを行ったりして、具体的なチーム作りを進めることになります。

来年3月から始まるリーグ戦を前に十分な戦力を整えることができるのかが課題です。

なぜ静岡に?

今回、2軍の公式戦への参加を目指す企業などは収支計画などの経営面や球場の確保といった試合の運営面、選手や監督・コーチの確保などの編成や育成面について審査されました。

本拠地の球場は現在、12球団が拠点としている都道府県に置くことはできません。

山口には広島の2軍の拠点

「ハヤテグループ」が新球団の創設を目指す中で、経済規模が大きく、新幹線などのアクセスがいいことから静岡市に拠点を置くことを検討し、市側も球団の誘致活動を積極的に行っていたことなどから、ことし7月には県も交えた3者で新球団創設に向けて連携する協定を結んだ上で、参加球団の公募に申請しました。

ことし4月 静岡市と協定を締結

地元住民に親しんでもらいたいと静岡を代表する富士山を名称に取り入れたということで、静岡市清水区にある清水庵原球場を本拠地とする予定です。

清水庵原球場 およそ1万人を収容

“サッカーのまち” 地元の声は?

新球団の本拠地の連合自治会の山梨滋巳会長
「2軍だけのチームをどのように運営していくのかという関心はありますが、多くの人が訪れたりプロの選手たちがイベントに参加してくれたりすれば、地域の活性化につながると思います」

地元の62歳女性
「清水はサッカーのまちですが、私は野球が好きで春の甲子園にも母校の応援に行きました。試合を何回も見に行きたいしいまからシーズンの開幕が楽しみです」

地元の31歳女性
「子どもにとっては高いレベルのプレーが見られるのはいいと思います。正直に言えば関心は野球よりもサッカーですが、盛り上がりをみせれば見に行くかもしれません」

「新潟アルビレックスBC」は、どんなチーム?

「新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ」は、サッカーJ1「アルビレックス新潟」の経営者らが発起人となり2006年に設立した野球のクラブチームです。

本拠地は新潟市の「HARD OFF ECOスタジアム新潟」を予定 3万人を収容

独立リーグ・BCリーグに所属し、以前はヤクルトの高津臣吾監督も指揮を執ったことがあるほか、DeNAでプレーする知野直人選手など、プロ野球にこれまでに7人の選手を輩出しています。

2011年 入団会見の様子

池田拓史社長は、ことし6月、野球を通じた地域活性化のためイースタン・リーグに来年から参加することを目指し、2軍の参加球団の公募に申請する考えを明らかにしていました。

10年以上にわたり独立リーグの球団として運営してきた実績があり、1から選手やスタッフを集める必要がないことがメリットです。

その一方で、BCリーグのおよそ2倍にあたる年間140試合を運営する体制の整備や県外での試合も増えるため遠征費や宿泊費など資金の工面、それに戦力強化をどのように進めていくかなど課題が残っています。

1軍の球団も増える可能性は?

29日の会見で報道陣からの「将来的な1軍の球団数拡大を視野に入れているのか」という質問に対し、NPBの井原敦事務局長は「1軍の『エクスパンション』は考えていないし、議論にもなっていない」と述べ、明確に否定しました。

1軍エクスパンション 専門家の見立ては?

元プロ野球選手で、球団経営にも関わった経験のある桜美林大学の小林至教授は「NPBの12球団は1軍の球団拡張には一貫して消極的だったが、一方で新機軸を打ち出しマーケットを拡大したいという思いの中、ある種の折衷案として一歩を踏み出したことは評価したい」と話しています。

1軍の拡張については「NPBは保守的な世界なので、現時点でそこまでの夢は見られないかなというのが今の私の立ち位置だ。ただ、2軍での今回の動きは『実証実験』になると思っている。プロ野球もビジネスであり、静岡と新潟のチームの参加によって、今後、プロ野球の市場の拡大が確認できれば、将来的に1軍の拡大の議論につながることはファンにとってもいいことではないか」と話していました。

また、プロ野球の球団を経営したことがない企業などが参加することについては「運営費用はNPBの2軍で大体3億から4億円程度かかる。赤字はあると思うが、NPBに所属することによる認知度の向上や社会的信用を考えると、プロ野球の球団を持つことの意義は絶大で、運営側にとってもメリットがあるのではないか。地域から広くスポンサーも得られると思う」と話しています。

これまでの球団の変遷は?

プロ野球は戦後の1950年のシーズンから現在の2リーグ制に移行し、セ・リーグ8球団、パ・リーグ7球団の15球団でスタートしました。

2リーグ制移行後しばらくは球団数は増減を繰り返しましたが1958年のシーズンから現在と同じセ・パ6球団ずつの12球団になりました。

その後、60年以上にわたって、買収などにより親会社が変わることなどはあっても、今回のように外部から新たな球団が加わることはありませんでした。

大リーグが1960年代以降に当時の16球団から現在の30球団まで「エクスパンション」と呼ばれる球団数の拡大を続けてきたのとは一線を画しています。

2球団の選手は、どこから?

チームに加えられる選手の条件も定められています。

▽プロ野球のドラフト会議で指名されていない選手、▽プロ野球の12球団にこれまでに所属していた選手、▽外国人選手が対象で、プロ野球のドラフト会議で指名漏れとなった選手や12球団を戦力外となった選手などが想定されます。

新規に参加する球団の選手でこれまでプロ野球でプレーしたことがない選手が12球団に入団するためには、ドラフト会議で指名される必要があるということです。

それ以外の選手については、人数を制限した上で、シーズン中に12球団へ移籍することも可能になる見通しだということです。

来季 新球団の本拠地でリーグ超えて交流戦実施

今回、「ハヤテ223」がウエスタン・リーグに、「新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ」がイースタン・リーグに参加することが内定しましたが、新球団の地元で様々な球団との試合を見てもらおうと、来シーズン、2軍の公式戦で既存の12球団がリーグを超えて新球団の本拠地を訪れて試合を行う日程が組まれることになりました。

これまでもリーグを超えて戦う交流戦は行われていますが、1軍と異なりチームによって試合数にばらつきがあり、シーズンによっては組まれないカードもあるのが現状です。

NPBの井原敦事務局長は「静岡と新潟がせっかく手あげ、自治体も協力してくださったので、NPBの野球を地元の県民、市民の方に見てもらいたい」と説明しました。

また、新球団の戦力のレベルを保つため、既存の12球団に所属する育成選手から新球団が最大で5人の選手の派遣を受けることができるようにするということです。