国連総会の緊急特別会合 ロシアを非難する決議 賛成多数で採択

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐって開かれていた国連総会の緊急特別会合で、ロシアを非難し、軍の即時撤退などを求める決議案が賛成多数で採択されました。決議案には欧米や日本など合わせて141か国が賛成し、ウクライナ情勢をめぐるロシアの国際的な孤立がいっそう際立つ形となりました。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐる国連総会の緊急特別会合は2日午前、日本時間の3日午前0時すぎから3日目の日程がアメリカ ニューヨークの国連本部の総会議場で行われ、各国の代表などが演説しました。

先月28日からの3日間で、193の加盟国のうちおよそ120か国の代表が演説を行い、最後にアメリカなどが提出した決議案の採決が行われました。

決議案は、ロシアがウクライナで軍事作戦を行うと宣言したことや、核戦力の準備態勢を強化するとした決定を非難するとしています。

また、住宅や学校など民間施設への攻撃や民間人の犠牲者の報告に深い懸念を表明するとしたうえで、ロシアに対して完全かつ無条件での軍の即時撤退などを求めています。

採決は日本時間の3日午前2時前に行われ、賛成が欧米や日本など合わせて141か国、反対がロシアのほかベラルーシや北朝鮮など合わせて5か国で、3分の2以上の賛成を得て採択されました。

中国やインドなど合わせて35か国は棄権しました。

国連では安全保障理事会で先月25日、ロシア軍の即時撤退などを求める決議案がロシア自身の拒否権で否決されました。

国連総会での決議には法的な拘束力はありませんが、すべての国連加盟国が参加できる国連総会で非難決議が採択されたことで、ウクライナ情勢をめぐるロシアの国際的な孤立がいっそう際立つ形となりました。

決議案 反対5か国 棄権35か国

決議案に反対したのは、
▽ロシア、▽ベラルーシ、▽シリア、▽北朝鮮、▽エリトリア
の5か国です。

決議案に棄権した35か国は以下の通りです。
▽アルジェリア
▽アンゴラ
▽アルメニア
▽バングラデシュ
▽ボリビア
▽ブルンジ
▽中央アフリカ
▽中国
▽コンゴ共和国
▽キューバ
▽エルサルバドル
▽赤道ギニア
▽インド
▽イラン
▽イラク
▽カザフスタン
▽キルギス
▽ラオス
▽マダガスカル
▽マリ
▽モンゴル
▽モザンビーク
▽ナミビア
▽ニカラグア
▽パキスタン
▽セネガル
▽南アフリカ
▽南スーダン
▽スリランカ
▽スーダン
▽タジキスタン
▽ウガンダ
▽タンザニア
▽ベトナム
▽ジンバブエ

グテーレス事務総長「一刻の猶予も残されていない」

国連総会の緊急特別会合で、ロシアを非難し軍の即時撤退などを求める決議が賛成多数で採択された後、国連のグテーレス事務総長は記者団に対し「決議に寄り添いその目的を達成することが事務総長としての私の責務だ。ウクライナでの敵対的な行為を終わらせ、武器を置き、対話と外交への扉を開くよう求める総会のメッセージは明確だ」と述べました。

そのうえで「国連憲章に沿ってウクライナの領土と主権は尊重されなくてはいけない。もはや一刻の猶予も残されていない。平和に向けた交渉を直ちに始めるために力を尽くす」として、引き続き外交的な解決に向け全力を尽くす考えを示しました。

バイデン大統領 棄権した中国とインドを名指しで批判

アメリカのバイデン大統領は2日、決議案が賛成多数で採択されたことについて、中西部ウィスコンシン州で行った演説の中で「141か国がロシアを非難した。いくつかの国は棄権した。中国は棄権した。インドも棄権した。彼らは孤立している」と述べ棄権した35か国のうち中国とインドを名指しで批判しました。

そのうえで「彼らはNATO=北大西洋条約機構やヨーロッパ、そしてアメリカを分断することができると考えているのだろう。そんなことは誰にもできないと世界全体に示そう」と訴えました。

米国連大使 国際社会の結束を訴え

国連総会の緊急特別会合で、ロシアを非難し軍の即時撤退などを求める決議が賛成多数で採択された後、アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は記者団に対し「きょう世界の大多数がロシアによるいわれのない戦争を非難するという、明確で統一された声を発した。ロシアが孤立していることや、ロシアが断念するまでその代償は増え続けることを示した」と述べ、圧倒的多数の支持を得て決議が採択されたことの意義を強調しました。

そのうえで「ウクライナの状況は日々深刻さを増しており、ウクライナの人々を助け、ロシアの責任を追及するために私たちはできるかぎりのことをしなければならない。国連の真の力と真の目的をすべての人に示そう」と述べ、国際社会の結束を訴えました。

ウクライナ国連大使 “悪を止める壁作り若い世代守る”

採決にあたって、ウクライナのキスリツァ国連大使は演説で、ロシアの軍事侵攻を非難したうえで「ウクライナでの流血の事態を、自分の戦争ではないと考える人がいるかもしれないが、それは間違いだ。悪は決して止まらない。今回の決議は、それを止める壁を作るためのものだ。ウクライナで止め、それ以上進まないように。若い世代を守るために」と述べました。

そして最後に「すべての責任ある加盟国に決議案を支持するよう求める」と述べると、総会議場から大きな拍手が沸き起こりました。

ロシア国連大使 “軍事行動は終了せず”

決議の採決を前に演説したロシアのネベンジャ国連大使は「この決議案では、われわれの軍事行動の終了につながらない。それどころかウクライナの過激派を勢いづかせ、市民を人質にとる策を続けさせることにつながる」と述べ、決議案に賛成しないよう呼びかけました。

そのうえで「われわれの軍事作戦の目的は達成されるだろう。われわれは民間施設や市民を攻撃しない。インターネット上にある、多くの誤った情報を信じるべきではない」と述べ、ウクライナ東部のロシア系住民を守るために軍事作戦を続けるという、従来の主張を繰り返しました。

NYで軍事侵攻への抗議デモ ロシア出身者も

国連総会の緊急特別会合が開かれていたアメリカ ニューヨークでは、2日も、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に抗議するデモが行われました。

マンハッタンのタイムズスクエアには、ウクライナの国旗を持った人たちが多く集まり、国歌を歌うなどして連帯の気持ちを示していました。

ウクライナで生まれ、多くの親戚がウクライナにいるという54歳の男性は「21世紀にもなって、このようなことが起こるなんて信じられないが、どんな連帯感でも間違いなく助けになると思う。より多くの人や国、組織が連帯を示せば、明らかに違いが出てくる」と話していました。

ただ、国連総会での決議については「この1週間、このテーマでさまざまなことが決められてきたが、国連には、それを実現する力がないと思う。残念ながら何も変えられないのではないか」という諦めのような声も聞かれました。

また「ウクライナを愛している」というプラカードを持ってデモに参加したロシア出身の男性は「ロシアにはプーチン大統領に反対する人がたくさんいるし、私も反対してきたが、私たちは国家として負債を払うべきだと思う。国際社会の仲間がいなくなってしまったことは恥ずべきことだ」と話していました。

松野官房長官「採択されたことを歓迎」

松野官房長官は、記者会見で「ロシアによるウクライナへの侵略を最も強い言葉で遺憾とし、ロシア軍の即時、完全無条件の撤退を求めることなどを内容とする総会決議が採択されたことを歓迎する」と述べました。

そのうえで「141か国が賛成して採択されたことは、国際社会で幅広く共有されている強い意思が改めて確認されたものと受け止めている。わが国は総会決議案の共同提案国となり、賛成票を投じた。決議が着実に実施されることが重要だ」と述べました。

そして「政府としては引き続きG7=主要7か国をはじめとする国際社会と連携して、ロシアに対して即時に攻撃を停止し、部隊をロシア国内に撤収して国際法を順守するよう強く求めていく。国連でも、わが国の基本的立場を踏まえ積極的に貢献していきたい」と述べました。