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【Sing Like Talking】デビュー25年目の輝き 「大事にしたいのは現役感」

2013.03.07


バンド「シング・ライク・トーキング」 左から西村智彦、佐藤竹善、藤田千章【拡大】

 雪深い青森で、ビートルズやクイーンに“ドはまり”していた洋楽フリークの幼なじみ3人がバンドを結成、プロを目指して上京し1988年にデビューした。鳴かず飛ばずの数年間を乗り越えて成功。代表曲はゴスペル調の「Spirit of Love」。17年前にヒットしたこの曲を懐かしく思い出す人も多いだろう。

 AOR(大人向けロック)の代表格として評価は高く、デビュー25周年で全員が50歳となる今年は、多くのイベントを企画。第1弾が6日発売の新曲「89番目の星座」だ。

 星座は88個しかない。だから新しい自分だけの星座を探そう−というラブソング。6月に出す、通算13作目となるアルバムからのシングルカットで、ボーカルの佐藤竹善(ちくぜん、49)が作曲、キーボードの藤田千章(ちあき、49)が詞をつけ、ギターの西村智彦(49)とで仕上げた。制作手法は25年間ほぼ一貫している。

 「ぼくらが小学生のときの定年は55歳。同級生は弁護士とか(病院の)副院長とか、いつの間にか立派になっている。でも気持ちは相変わらず20代のつもりなんですけど」と佐藤は笑う。3人はいま、「飲みに行っても面倒くさい話をしなくなった」と肩の力が抜け、楽しんで音楽を作る余裕が持てるようになったという。

 「89番目の星座」のジャケットは藤田が描いた。もともとイラストに興味があり、「25周年だし、やっちゃえば」という佐藤の後押しもあって挑戦。「素人なんで『ダメ出しされても無理よ』と、あらかじめ言っておいた」という絵は、「称賛!」(西村)と即採用が決まる。

 新作はストレートなポップスからロックオペラまで、バラエティーに富んだ「開放的で明るい作品」と佐藤は言う。東北出身者として、東日本大震災に対する思いも込めた。「悲しみで下を向いている時間より、笑う時間の比率が1日の中で少しでも増えてほしい。そんな作品にしたいという思いがあった」

 ファン層の中核は30−40代女性。山下達郎や小田和正のバックでコーラスも務めた佐藤の「癒やしのハイトーンボイス」への評価は高い。一方でジャズやソウル、クラシックも融合した、通好みの音にひかれる男性層も、全体の3割ほどを占める。

 4月に東京と大阪で行う記念ライブはDVD化も予定。フルバンドによる本格的なステージは10年ぶりで、体力作りにも余念がない。佐藤は昨年春からウオーキングを始めて10キロの減量に成功し、腰痛も解消。西村も「週2回の水泳を始めた」という。

 この25年は「山あり谷あり」だった。88年12月のデビューライブは3人を高く評価した米ロックバンドTOTOのドラマー、故ジェフ・ポーカロと共演。ただし、「観客の99・9%がTOTOファンで完全アウェー」(佐藤)だった。

 地道にミニライブやラジオ出演を続けた結果、地方から人気に火がつく。93年に出した6作目「ENCOUNTER」がオリコン初登場1位を獲得し、96年には初の武道館公演が実現。“元祖ギター小僧”の西村は「気分は(クイーンのギタリストの)ブライアン・メイ。なんせ『聖地』だし」と振り返る。

 ところが2000年代以降に音楽性の転機を迎え、ロック色が強まった結果、ファンが離れていった。「やっと納得いく表現ができるようになっていた。でも飽和状態も感じて次に何を作れるのかが見えなくなった」(佐藤)。04年に活動を休止する。

 再会は5年後の09年、大阪のFM802のイベント。ギリギリまで出演を迷ったが「3人で久しぶりに音を出して、やっぱりこれだと」と藤田。このイベントのトリだった小田和正は、自らその立場を彼らに譲る。「3人でやることを喜んでくれた人がたくさんいて後押しされた」(佐藤)。そして活動再開を決めた。

 6月の新作は活動再開後の2作目。知名度は高いが、これまでに大きなシングルヒットのない特異なバンドでもある。「不器用だけど妥協せずにやってこれたことが誇り」と佐藤。そんな姿勢を、かつての音楽仲間でもある青森の同級生たちは温かく見守る。

 「僕らがプロとして続けられていることに、彼らは自分たちの夢も重ね合わせてくれている。大事にしたいのは現役感。若いときより今の方が楽しいという重厚感とチャレンジ感が同居するような…」

 佐藤の言葉は、そのまま中高年層へのエールでもある。(ペン・藤沢志穂子 カメラ・荻窪佳)

 ■シング・ライク・トーキング 佐藤竹善(ボーカル)、藤田千章(キーボード)、西村智彦(ギター)の幼なじみ3人で1982年に青森市で結成。オーディションでのグランプリ受賞などを経て88年9月デビュー。「語るように歌う」というバンド名で、CDの総売り上げ枚数は350万枚以上。佐藤は小田和正や元オルケスタ・デ・ラ・ルスの塩谷哲とユニットを組むなどメンバーのソロ活動も多数。デビュー25周年の記念ライブを4月13日にグランキューブ大阪、同27日に東京国際フォーラム ホールAで開催。6月には通算13作目となる新作(タイトル未定)を出す。

 

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