“昭和顔”が今年のキーワードになりつつある。その筆頭が黒木華(25)だ。
ドラマ「天皇の料理番」(TBS)で主人公の妻・俊子を演じる彼女が最初に注目を集めたのは、一昨年の映画「舟を編む」で、新人賞を総ナメにした。
昨年の映画「小さいおうち」では、昭和初期の女中を演じ、ベルリン国際映画祭女優賞(銀熊賞)、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞などを受賞。その演技力は世界的に高く評価された。
昭和顔とは、濃いメークよりノーメークに近い状態の方が“らしさ”を発揮できる控えめな顔で、目元がやや腫れぼったいのが特徴といわれる。昭和的イコール純日本的。その表情がどこかノスタルジーを感じさせ、周囲を包み込むようなやわらかさを持つなごみ系の顔である。
しかし、昭和顔で何よりも大事なのは、身を律する美しさを持つことである。激動の昭和を生き抜いた女性たちは、凛として身を律することで内面が磨かれ、品位を身につけた。夏目雅子や田中裕子の美しさは、品位からにじみ出る。
黒木からも、芯が強く意志を貫くまっすぐさと、かかわる全てを受け止めるような人間としての器量の大きさを感じる。CMで黒木の演出を手がけた岩井俊二監督が、「文学的な香りがする女優」と評したのもうなずける。
黒木は京都造形大学の映画学科俳優コース時代に林海象氏、東陽一氏らに学び、在学中に野田秀樹氏の演劇ワークショップに参加。オーディションでNODA・MAP公演「ザ・キャラクター」の出演を勝ち取り、舞台デビューした。
宮沢りえ、古田新太らと同じ舞台に立ち、「難しいこともあるはずなのに、プロってこんなにも楽しそうに舞台を作り上げることができる」と感激し、「自分もそこに行きたい」と強く思ったという。ワークショップやオーディションに参加することで、「自分自身で道を開くことができる」「自分の世界を変えることができる」と感じたようだ。