タイトル戦線へ、藤井聡太七段が突破すべき壁

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タイトル挑戦、獲得はいつ?

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 では、藤井がタイトルに挑戦、そして獲得するのはいつになるのか。いずれその時が来るにしても、屋敷伸之九段が持っている17歳10か月でのタイトル挑戦、18歳6か月の最年少でのタイトル獲得記録を破ることができるのか。

無冠の羽生、復活のヒントは過去の名棋士にあり

 現時点で16歳7か月の藤井七段にはまだまだチャンスがありそうだが、楽観できるかといえばそうではない。

 抜群の勝率から考えれば、これまで同様に予選を抜けて、挑戦者を決めるトーナメントやリーグに入ることは十分に可能だろう。しかし、そこで戦うことになるのは、シードの上位棋士や、藤井七段と同じように予選を勝ち上がってきた実力者たちであることを忘れてはならない。

 大半の棋士に対しては分がよくとも、こういった強豪を相手にしても抜きん出た力があるとは、現状ではさすがに言いがたい。白5黒1の鉛筆を永遠に転がし続けることはできないのである。

 現実的に最もタイトルに近いのは、前期ベスト4に進出し、今期は挑戦者決定トーナメントにシードされている王座戦だろう。ここから4連勝すれば挑戦者になることができ、五番勝負で先に3勝を挙げればタイトルを獲得できる。

 2期連続してランキング戦で優勝し、挑戦者決定トーナメントに進出している竜王戦も相性のよい棋戦といえる。ただ、1年目は佐々木勇気七段、2年目は増田康宏六段に敗れていることを見ても、有望な若手群を実力の面で大きく引き離しているとはいえない。藤井七段に刺激を受け、飛躍的に力を伸ばしている棋士も多いのである。

 ちなみに竜王戦、王座戦は持ち時間5時間の棋戦である。6時間の順位戦では18勝1敗、5時間でも上記のような好成績を収めている。もっとも時間を使い切ることはほとんどないので、持ち時間の長い対局でゆったりと余裕を持って指すのがよいようだ。

 もうひとつ、タイトル挑戦・獲得の壁になりそうなのは、特定の棋士との相性である。苦手な相手がいると、大事なところで何度も足止めを食らいかねない。

 その候補になりそうなのが、公式戦で2戦して2敗を喫している斎藤慎太郎王座と菅井竜也七段である。また、1戦1敗の豊島将之二冠も言うまでもなく強敵である。彼らは藤井七段と同じ関西所属であるため、今後も対戦が組まれる機会は多いだろう。

 目の上のこぶとも言える存在だが、タイトルを争うようなトップクラスの棋士とガツガツぶつかって力を伸ばし、乗り越えることができた時、藤井七段はおのずとタイトルを争う位置に立っていることだろう。

プロフィル
後藤 元気( ごとう・げんき
 1978年、千葉県生まれ。観戦記者。フリーライター。指導棋士三段。各棋戦の観戦記を執筆。将棋ペンクラブ大賞・観戦記部門大賞を過去2度受賞している。著書に『将棋エッセイコレクション』(ちくま文庫)、『将棋棋士の名言100:勝負師たちの覚悟・戦略・思考』(出版芸術社)、『心震わす将棋の名対局』(大和書房)などがある。

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