店頭流通

パソコンショップ “専門性”強化が急務

2004/11/01 18:45

週刊BCN 2004年11月01日vol.1062掲載

 パソコン専門店が、パソコン本体や関連機器に関する“専門性”を強化することが急務になってきた。パソコン市場の成熟とともに、単に商材を仕入れて販売するという〝箱売り〟のビジネスでは価格競争に巻き込まれ、専門店としての優位性が保てなくなっている。家電量販店はパソコンと家電製品の両方を武器に、トータルな販売で売上拡大を図っている。パソコン専門店は、家電量販店に対する優位性を明確にさせなければ、生き残れない構図が顕著になってきた。

量販店とのすみ分けで生き残りへ

 名古屋・大須地区を本拠地とするパソコン専門店、オーエー・システム・プラザ(大喜章徳社長)がピーシーデポコーポレーション(野島隆久社長)との資本提携で経営再建を図る。

 2004年5月時点では、今年度(04年9月期)通期の業績予想を売上高181億円(前年度比16.5%減)、経常損失6000万円(前年度は7700万円)、最終損失2億1000万円(同1億5400万円)と見込んでいたが、これを10月19日に下方修正。最終損失は5億3300万円に拡大する見通しだ。

 ピーシーデポコーポレーションとの提携により、店舗作りノウハウの取得やドミナント戦略による出店、完全リアルタイムPOSによる商品管理で、同業他社に対抗できる価格戦略・品揃えを目指す。一方で、既存の31店舗を15店舗まで縮小し、「05年3月期(決算期変更に伴う6か月の変則決算)までの半年間で膿をすべて出しきり、06年3月期に黒字転換させる」(大喜社長)方針だ。

 オーエー・システム・プラザが不振に陥ったのは、利益よりも売上拡大を重視する戦略に落とし穴があったことにほかならない。家電量販業界では、各社の過剰出店が進み、価格競争が一層激しさを増している。これに打ち勝つためには、低価格路線でも利益を確保できる体制を貫き通さなければならず、「これまでの店舗形態では勝ち残れない」(同)との理由から、方向転換に踏み切った。

 いち早く価格競争から免れたパソコン専門店もある。パソコンショップの「OAナガシマ」、「パソコンの館」、組立パソコン用パーツ専門店「ZOA」などを構えるZOA(旧ディーアイエスナガシマ、長嶋豊社長)では、「単に商品を仕入れて売るという薄利多売のビジネスでは利益を確保できない」(長嶋社長)と判断。パソコン購入後のサポートを手厚くすることで、価格競争とは一線を画したCS(顧客満足度)重視型のビジネスモデルで粗利率アップに力を注いでいる。

 一方、家電量販店ではパソコンと家電機器の両方を販売する強みを生かし、トータルな販売で業績アップを図ろうとしている。

 大手量販店のエディオンでは、子会社のエイデンが運営するパソコン専門店「コンプマート」を閉鎖し、家電量販店「エイデン」店舗のインショップとして再編。大型店舗の総合性と情報家電の専門性を生かす方針だ。薄型テレビやDVDレコーダーなどデジタルAV(音響・映像)機器の購入者をリピーターとして確保し、パソコンの買い替え時にも自店へと誘導しようという狙いだ。しかも、競合店との価格競争に真っ向から勝負を挑もうという意向も見え隠れする。

 パソコン市場は、すでに購入者の大半が買い替えユーザーで、成熟期に入っている段階。そうしたなか、専門店が生き残るためには、パソコン本体や関連機器に関する専門性をさらに高めていき、価格とは別の部分でショップの魅力を打ち出し、優位性を保っていくことが重要になりつつある。

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